旅人がなかよしX‐Mk.Ⅱと戦闘していた頃
『ハート(心臓)!』
『バーニング(爆炎)!』
『Best Much!Are you ready?』
「変身!」
『ダレカタスケテー!チョー燃エル!ハートバーニンッ!』
凍りついたセントエルモ女学院の前でニットは燃え盛る炎のように血のような真紅の姿、仮面ライダービルド・ハートバーニングフォームに変身した。そして構え、女学院を覆う氷に火を放つ。
「FIRE!」
凄まじい炎だ。
だが氷は一向に熔ける気配をみせない。
「火でも熔けない氷なんてあるのね。どうするの魔法使いさん?」
ちとせの問いにニットは応える。
「都合の良い魔法が使えれば即解決なんだが……んなもん無ぇしなぁ……そらまぁ簡単に熔けたら苦労しねぇ………でも必殺技なら……
シアーハートアタック!」
ドカン
大爆発が起きた。だがニットが爆風で倒れた以外に景色は変わっていなかった。
「………大丈夫?」
「………………大丈夫じゃないかも……」
「まったく…何をやっているんですか?」
呆れた声がした。声のする方を見ると背の高いスーツを着た眼鏡の男立っていた。その男の横に眼鏡をかけ長い黒髪をツインテールにしたスレンダーな少女がいた。
その二人に気付いたニットは変身を解除する。
「あ、キルドさん……久しぶりで悪いけど起こすのに手を貸して。」
「仕方ありませんね………。」
そういってキルドと呼ばれた男はニットに手を伸ばす。その手を取りニットは起き上がった。
「あんがと。」
「どういたしまして。」
「知り合い?」
ちとせに尋ねられ、ニットは今さっき自分に手を貸した男に親しげな様子を見せる。
「おう。こいつは283プロダクションでアイドルプロデューサーやってるキルドくんで~す♪」
ニットの陽気な調子な反しキルドは淡白な反応だ。
「別に構いませんが紹介するなら正確に……私はキルドLV1です。初めまして。貴女は……「黒埼ちとせさんですよね?」
キルドと一緒にいたツインテールの少女が乗り出して来た。
「そうよ。ええと……」
「あ!283プロでお世話になることになりました!
三峰結華(みつみねゆいか)で~す!よっろしく~♪あ、ちとせさんのソロ曲『Beat of the night』 楽しみにしてますよ。」
「ありがとう。ふふ……。」
「キルドさん担当アイドル持つようになったの?」
「ええ。先日スカウトしました。」
「ふふ~ん♪Pたんは三峰の魅力に気付いちゃったワケですよ~♪」
なかなかノリの良い性格のようだ。
「まだ正式デビューしていないでしょうが。とはいえ三峰さん、貴女もアイドルなのですから自覚を持ってください。」
「あの人硬いでしょ?」
「硬いねー」
「あなた方が軟らか過ぎるだけです。」
キルドはニットと結華の軽口に冷やかに応える。
「でも、どうして同業他社のプロデューサーがここに?」
ちとせの疑問にキルドは答える。
「先日、この学院に在籍されている生徒の方をスカウトしましてね。返事が保留だったので答えをいただこうと脚を運んだというワケです。」
「で、三峰はP殿スカウトしたさくやんとやらがどんな娘なのか気になったのでPくんについてきちゃいました~!」
「同じユニットを組んでいただく予定である三峰さんも同席された方が後々好都合でしょうから許可しました。できれば田中さんも御一緒して戴きたかったのですが…。」
「あはは……まみみん、めんどくさがりだからねぇ~…まぁ、やる時はやる娘だから大目に見てあげてよP殿♪」
「咎めるつもりはありませんので御心配なく。それにしても…………」
キルドの視線の先には凍りついたセントエルモ女学院がそびえ立つ。
「まさかこのような事態になっていたとは……闇の世界で生きてくしかありません。なので引き返します。」
「いや、そこは手伝ってけや…!俺が氷溶かそうとしてるの見たよね!?」
ニットはわざとらしくキルドを引き留めるがキルドはやはり冷やかに返す。
「お断りします。」
「キルドさん…ひょっとしてプロデューサーと仲悪い?」
「んな事ぁ無い!なぁ?」
「まぁ、不仲ということはありませんね。それに私はこれでも同業他社の敏腕プロデューサーであるニットさんに一目置いてますしその手腕を信用しています。」
確かに、ちとせをデビューから僅か一年近くでAランク……トップアイドルに近い人気を博するアイドルにプロデュースした実績があるのでキルドのニットに対する評価は事実だろう。そんな称賛にニットは得意げな表情を浮かべる。
「(すんごいどや顔……)」
「(喜んでる……可愛い)」
しかしニットのどや顔はキルドの次の発言で崩壊する。
「
」
「ちょっとぉ!?(ショック)」
「っていうかダメな大人の手本だと思ってます。」
「そこまでいう!?(泣)……てか、283の社長が言いそうな台詞かますなや……。」
「まぁ、ダメな大人の手本というのは半分冗談ですが……」
「(尊敬できないのと半分は本気なんだ……)」
「(ダメなところが可愛いけど…)」
「実際のところ、協力するにしても私はここに残るより別のアプローチを模索する方がニットさんの助けになるでしょう。私としても折角見つけた逸材を助けないワケにはいきませんので。と、いうワケで私は一旦戻ります。」
「じゃあ、セントエルモ女学院の資料と……ここが女子校になる前…共学だった頃の情報頼むわ。」
ニットの頼みは相変わらず軽い調子だったがキルドはこれをあしらうべきでない、重要な依頼だと判断したのか無言で頷く。
「調べておきましょう。三峰さん、行きますよ。」
「ん、分かった。じゃあ、346のプロデューサーさん、ちとっぴまったね~♪」
「(ちとっぴって私のこと?)またね~。」
「おう、うちのバカ共のついでにお前がいってた白瀬咲耶って娘も助けるよう頑張るわ~。」
「頼みました。」
続く……?