空から声が聞こえたような気がしてふと見上げると、女の子が傘を広げてふわふわと舞い降りてきた。
良く晴れた青い空から、黒い靴、白と黒のストライプで膝より少し眺めの靴下、黒のブリーツスカート、ここからでは見難いが白のワイシャツを着た女の子が降りてきたので、天使なのかと思った。

町の裏路地に一人で歩いていた為か、人が空から振ってきても誰も気づいてはいないようだ。
その天使は僕の目の前にすとんと着地すると、傘をたたむなり顔を見てきたので目が合った。
「やあ、アレン。勉強教えて」
にこにこと楽しそうに天使は話かけてきた。
一瞬呆気にとられて我に返る。
素早く左手の対AKUMA用武器を天使に向けた。
こいつは天使なんかじゃない、悪魔だ!!

「何の用で来たんですか?」
少し睨みを利かせて天使、もとい悪魔に言い放つ。
この前の一軒以来忘れた事はなかった。
ノアの末裔とかいう少女、ロード。

良い天気でも風は冷たく身体を撫でる。
目の前の悪魔は体温を感じるんだか感じないんだか、眉間一つ変えない。
「だから、勉強教わりにきたんだってばぁ」
相変わらずにこにことしたまま。ただ、両手を上げて降参という意思表示をしている。
その行為に少し信用しようと、左手を下ろす。同じ人間なんだし・・・・・・
「同じ人間でしょ~」
ビクッと顔を強張らせる。頭の中を読まれた?まさか。たまたま同じ事を思っただけですよね。
ぐるぐるとした意識の中で急に左手を摑まれた。呪われた赤い手。この手を好き好んで触ってくる人なんて殆どいなかったのに。

「キレイな手だねぇ」

愛おしむように触れて、見てくる。
今まで、こんな風に接してくれた人はいただろうか?見世物にして生きてきた手。
そのまま少しずつ手を引っ張られてロードの頬に当たる。
ゆっくり味わうかのように手の甲を優しく頬でさする。

「真っ赤で血みたいだ」

震えた。何故だか分からないけど急に身体中に振るえが走った。
これは血?今まで殺してきた者の血?いや、あれはAKUMAだ。千年伯爵が作り上げた・・・・・・
でもそのAKUMAの被ってる身体は?魂は!?
救済とはいえ血を浴びなかった事があるか?

がくんと膝に力が入らなくなり倒れこむ。それでも左手はロードが摑んだまま離してくれない。
先程とはうってかわってアレンの方が低い為ロードが見下ろす。
「泣いてるの?アレン」
心配そうに覗いてくる。
ロードの左手はアレンの左手を離さず頬にくっつけている為、右手の手でアレンの涙を拭ってやった。
そしてまた悪戯っぽい笑顔でにこりとするのだ。
ぼーっとする頭で再び考える。僕のしていた事はなんだったのかと。
目に力はなく、ロードを見上げていた。
ふわっと暖かい体温が伝わる。ロードに離された手は力なく急速に落ちる。

「可愛そうなアレン。僕が慰めてあげるぅ」

ぎゅっと力強く抱かれる。
力の入らない無心の状態でロードに寄り掛かった。
ドクン・ドクン・ドクン。血の通う音。暖かい温もり。
偽りの身体でも壊してきて良かったのだろうか?

今日は良く晴れた日。空は青くて清々しい。
風は冷たいが今のアレンには何も感じない。
感じるのはロードの温もりだけ。それだけが確かだ。
「さぁ、おいで。アレン・ウォーカー」

裏路地の為か、人は一人もいなかった。
暗闇の世界に白い雪。
雪は家々の屋根に降り積もり、道に、木々や花に降り積もる。
時刻は夜中の一時を回っている為か明かりの付いている家はない。僕達が借りている部屋以外は。

少し窓を開けてみるとひんやりとした風が吹き込んだ。やはり寒いなと思い再び窓を閉めて外を眺めた。
神田が出て行ってから二時間は経っている。些細な意見の食い違いから始まった喧嘩。それは日常茶飯事の言い合いとは違って、何か神田の感に触ったようだった。
結局神田がキレて出て行ってしまった。何処へ行ったのか皆目見当が付かない。なにせ、この町に足を踏み入れたのは今日の昼間なのだから。

部屋には窓が一つしかない。この窓から見える風景は、車が通れるほどの広い道が真っ直ぐに一本、それを境に家々が立ち並んでいる。極有り触れた風景。
この宿屋は一種の道の最終地点に見える。

神田が出て行った後、気になってこの窓から見ていた。
神田が一度も僕の方を振り向かず背だけを僕に見せて、どんどん小さくなる姿を見えなくなるまで見ていた。そして残るは足跡。
この町では夜中に人が徘徊する事もないらしく、雪だけが舞っていた。そのうち神田の足跡がなくなり、消えた。

消える!?

アレンは寂しさと後悔と不安と・・・・・・いろいろな感情が溢れだし目から液体が頬をつたう。
「神田‐‐」
窓に両手を押し付け立ったままの姿勢で頭をうなだれる。床はフローリングで真新しい。そこに液体がぽたぽたと落ちる。
「マナ、あなたが僕の前から消えた時に誓ったのに。もう、大事な人を無くさないって。見失わないって」
あんなに、悔やんだのに。
静かな部屋に、押し殺して震えながら泣く声が響いた。それで余計自分は孤独なのだと感じた。

少しして、神田を探しに行こうと思い頬につたう液体を拭う。

探して見つけて、その後はどうすれば良いのか分からない。むしろ、探して探して探しても見つかるかも分からない。そりゃ、教団に戻れば見つかるのかもしれないけれど。今会って謝りたいのだ。
考えるより行動!!コートを羽織り出入り口へと足を進める。

廊下を階段を歩く早さが上がっていく。今にも駆け出したい心情なのだが、もし下の階の者がいて煩くて目が覚めてしまったらと思うとできなかった。
右手が戸に手をかける。こちら側からは扉は押すのだ。つまり、入ってくる場合は引く。
アレンが戸を押そうとした瞬間、扉が開いた。力強く開ける予定だったので、先に開いた扉に力は入らなく前のめりになる。

ぼすっ。

誰かにぶつかった。
「あっ、すみません」
咄嗟に離れようとしたしたら聴こえてきた声が懐かしくて、嬉しくて、恥ずかしくて目の前にいる人物に顔を上げることができなかった。
「何処か行くのか?」
「いいえ、あなたを探しに行こうと思って」
まだ顔は上げられない。けれど、この人物は確かに僕が先ほど探しに行こうと決した人物だとはっきり分かる。
「あっ、あぁ」
その曖昧な返事に反応して顔を上げた。すると、神田は眉根を寄せて恥ずかしそうに右手で顔を隠していた。
こんな反応もするのだと思うと嬉しくて、さっきまでの孤独感をすっかり忘れていた。

扉を開けてるせいか、団服を着ていても肌寒い。
「神田、部屋に入りませんか?寒かったでしょ」
にっこりと微笑む。
踵を返し部屋に戻ろうとしたら左手を捕まれた。少し痛いと思ったが、神田が左手を摑んでくれた事に吃驚して、そして嬉しかった。対AKUMA用の、呪いがかかった腕。最初は気味悪がっていたのに。
「モヤシ、さっきはすまなかった」
振り返ると、片手で支えるにはきついであろう大きな紙袋の中に食べ物が沢山入っていた。
アレンは可笑しくて笑ってしまった。一体、さっきまでのは何だったのか。
「てめ、何笑ってるんだよ」
「あはは、すみません」
恥ずかしそうに怒る神田。あっ、いつもの神田だ。
「とりあえず、部屋に戻りませんか?暖かい飲み物でも用意しますよ」
二人一緒に部屋の中に入って行く。まだ神田はアレンの左手を摑んだまま。むしろ、手を繋いでるなんて自覚なんてないのであろう。

この町を出て行く頃には雪は舞うのを止め、春を待つだろう。
溶け始めた雪からは草木が顔を覗かせる。
足跡は消えるけれど、それは失うことではない。終わりではないのだ。
さぁ、二人で思い出の足跡を残して行こう。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
走る、走る、走る。何かが追いかけてきている気がする。
暗い、暗い、道。これを道と呼べるのかは分からないが。
周りの景色も暗くて何も見えない。まるで、暗い闇が覆うトンネルの中みたいだ。
何も見えない真っ暗な闇を走る。自分が真っ直ぐ走っているのかも分からないのに不安はない。本能で理
解しているのかもしれない。それとも、何かに追われてる恐怖で他に考えられないだけなのか。

振り向くこともできず、止まることもできず。ひたすら走る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
どこまで逃げれば良いのか。
「ちっ」
逃げる?この俺が?何から。
俺は何から逃げてるっていうんだ?俺は何に追われているんだ?

徐々に徐々に走るスピードを下げる。そして止まった。
額から脂汗がつたう。びりびりとした衝動。
来る、来る、来る!!
ぶわっと暗闇が光に飲み込まれていく。
俺の頭上を過ぎ、前方の道も全て。覆い被さるように。
今まで暗闇で目が慣らされていたせいか、白い光が目に眩しい。
「くっ」
咄嗟に、掌で目を隠す。
何から逃げようとしていたのか要約分かったような気がする。
「あぁ、またお前か」
まだ眩しい目を細めて前方を見据えるとそこには一人の男性が立っていた。
こちら側からは逆行で顔は見えないけれど、教団の服を着ていた。白髪の髪が肩より少し短めの位置でなびいている。口元を見るとにっこりと笑っているように見える。

「神田」

その男は俺の名を呼ぶなり左手を差し出す。
始めっから、俺がお前に刃を向けた時から、お前は意図も容易く俺の心を洗い流す。

この手がもたらすは、天か魔か。
魔だったとしても、俺はーーー

はじめまして。管理人「浅葱とおる」のブログへようこそいらっしゃいました。


こちらでは、D・Gray-manのオリジナル小説を書かせていただきます。拙い文ではありますが、“喜怒哀楽”表現できればと思っています。

BLという言葉の意味が分からない方は申し訳ありませんが、見ない方が宜しいかと思います。

ちなみに、アレン×神田 神田×アレン ラビ×神田 ラビ×アレン ロード×アレン ティキ×ラビetc...なんでもアリです!!

更新は不定期ですが、なるべく多くの小説を書いて行きたいと思っております。

お付き合いの程、宜しくお願いいたします。


 


更新状況

 07/01/13 移転

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