なんでこんなことになってんだろ…
あのころに戻りたい…
助けて。
Ⅰ
「天気良すぎ…
溶けてしまいそうだわぁ」
夏の暑い日、なぜかよく焼けたアスファルトの上を歩いている私は、出雲 夜(いずも よる)。
大学二年生。
ただ今図書館への道を蛇行しております。
なぜ、図書館に向かっているのかというと……
「夜?
早く~!!
席なくなっちゃうよー。」
この元気な娘は、鳴無 奏(おとなし かなで)。
私と同じ大学の同級生。
この暑いのに相変わらず、元気だなぁ。
「なかったら、大丈夫でしょ~
きっと先発班がグループ室抑えてるって。
第一、万年ひきこもりの私に、外出自体が冒険なんですけど……」
「そんなことばっか言ってると、そのうちキノコが生えちゃうよ~」
「人間にキノコは生えないと思うが…」
「もう!!!
何でもいいから急いで行って、チャッチャと課題片づけちゃおうよ」
「…わかったよ」
そう。
万年引きこもりの私は、なかなか講義に出ないおかげで、夏休みに課題がたんまりと出てしまったわけで……
今日は、その課題を消化しようと図書館にむかっているのです、はい。
「夜ってさぁ、主席入学なんでしょ?
なんで講義でないのさ
もったいないなぁ」
はい、確かに主席で入学しましたとも。
でも…
「だって、講義つまんないんだもん…」
私は昔からなぜか呑み込みが異常に早いらしく、たいていのことは一回聞けば理解してしまうという、まるでアニメの主人公が持っていそうな才能が備わってしまった。
さらに本が好きだから、ジャンルを問わず読み漁る。
その結果、指定教科書も一週間以内に読み終わってしまったため、講義に出る意味がなくなってしまったのである。
まぁなんというか、損な性格なのです…
「あぁ、もったいない
私だったらその才能を、サイバーテロとか♪」
「奏。
それ犯罪だから。
ってか、早くいこ、ホントに溶けちゃう…」
奏ってたまに危ないわ……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「えっと、あいつらどこに居るんだろう?
ケータイ、ケータイっと」
私たちはやっとの思いで図書館に着いた。
ロビーに入っただけで、クーラーの恩恵を受けた。
「はぁ…死ぬかと思った……
涼しー!」
「あ、メール来てた
グループ室Cに居るってよ」
「了解
ここってエレベーターあったよね?」
「あるけど、3階なんだし階段でよくない??」
「…ムリ」
「はいはい
さ!行くよ~!!」
「うぅぅ…」
ここは県立図書館。
県下1の貯蔵量を誇っていて、地下1階から地上5階まであり、地上1階には休憩ができるカフェがある。
その中でも、3階と4階には学習スペースが設けられており、中には完全防音のグループ室がある。
「ちわーっす!!
おっ待たせ、夜連れてきたよ♪」
「おぉ、待ってたぜ夜!!!」
「ちょっとぉ、待ってたのは夜だけ?」
「奏good job!!!」
「はいはい」
「奏、迎えに行かなくてよかったの?」
「うん。
メールありがとね♪」
先発隊として送り込んでいたのは、吉川 慶吾(よしかわ けいご)と花吹 依功(はなぶき いさお)。
テンション高いほうが慶吾で、後から声をかけてきたのが依功。
「なぁ、夜。
ここがさぁ…」
「来て早々、私に頭脳労働を強いるとは!!
ってか、そのために呼んだな?」
「あは♪
バレた?」
「全然かわいくないよ、慶」
「まぁまぁ、夜の課題も一緒に手伝うからさ。」
「うるさい、やさお」
「うわぁ、夜ちゃんがひどいよぉ」
慶吾は慶、依功はやさお、というニックネームが定着。
なぜ、やさおかというと、名前は「いさお」だが、見た目と中身は正反対の「優男」なので、掛けてみた。
それがなぜかとても気に入ったらしくて、定着してしまったのだ。
すまん、依功…。
「ほらほら、早くはじめようよ~」
「慶、授業料として今日の昼飯おごりな」
「えぇ!!
まじで!?今月厳しいのですが…」
「じゃあ、教えない」
「そ、それだけは…
よし!!わかった!!!」
「みんなよかったな、今日は慶のおごりだと」
「やったぁ♪
慶、ありがとう!!」
「ちょ、そんなこと言ってないぞ!?」
「誰も、私の分だけとは言っていないけど??」
「慶、あきらめなさい」
「やさおまで~」
「よし!!
なんかやる気出てきた!!!!」
「ほら慶、早くやってしまうぞ」
「くっそ~
こうなったら、何でも来い!!
夜、とりあえず課題は手伝ってくれるんだよな?」
「当り前さ」
「ちゃんと自分もやんなきゃだめだよ、慶。
夜には夜の課題があるんだから」
「わかってるよ、やさお君♪」
「…いい加減その呼び方、どうにかなんないかなぁ」
「いいじゃない。
似合ってるわよ♪」
「はぁ…」
私たちはこんな感じでいつも4人でつるんでいる。
4人が仲良くなった経緯を話すと、私と奏が幼馴染だというところから話さなければいけないから、また今度にしよう。
とにかく、はたから見てもとても仲のいい4人組だった。
…だったはずなのに。
いつから、私たちは……いや、私だけが離れちゃったんだろうか。
いつまでも仲良くいられると思っていたのは、私だけだったみたい。
知らない間に、私はピエロを演じていたようだ。
そう、一人になった今でも、演じている。
悲しい顔をしたピエロの仮面が、私の顔に馴染むくらいに…
助けて。
第1話 END