『恋愛小説』【キュへ】 | SuperJuniorウネ小説さくやのブログ

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ウネ多め
傷んだお魚が大好物です( ´艸`)




僕はその時、新作のミステリ小説を読んでいた----。




『恋愛小説』 



リビングの一面に配された窓は外の白い風景を映して、空調の効いたはずの部屋の体感温度を一段低くする。

「…寒くないの?」

薄っぺらい七分袖のTシャツ姿に眉を顰めながらソファに近付くと、彼はんー…とかなんとか口の中で小さく返事をして、寝そべるように伸ばしていた体を縮めて、僕の座れる分だけスペースを空ける。

「…また読んでるの?」

その狭い隙間に窮屈に収まって彼の手元を覗き込むと、もう見慣れた、しっとりと手に馴染むように癖が付いた本のカバーが見えた。

「んー…」

彼はまた上の空で返事を返す。

好んで読むのがミステリ小説だからか、僕はあまり小説を読み返すことはない。
筋書きがわかった物語は安心感はあるけれど、目新しいトリックがあるわけでもなく、どうしても色褪せて見えてしまうから。

恋愛小説は、違うのだろうか。

僕はちゃんと読んだことはないけど、誰でもストーリーを知っているその古典の主人公たちは今まさに終盤のようで。
彼の漆黒の宝石のような瞳が水分を湛えて、窓から入る西日をキラキラと反射している。

思わず----、

「…美しいね」

それは、形式のような古典の物語か。
それは、夕暮れに染まった彼の横顔か。
どちらか----、または両方か。

とにかく僕は、そう声に出して言ってしまっていた。





何をするでもない----、些細な一日。
もう隣に訪れた、少しずつ冷えていく夜に。

「寒い…」

最後のページにたどり着いた彼が、思い出したように体を入れ替えて、僕の体に寄り添ってきた----。