「おめでとう」
お互い誕生日は、特別なことがなければ実家で家族と過ごすことにしている。----コンサートで海外、なんて時以外は。
だから今年も電話越しで『おめでとう』を言うのだと、思ってた。
午前0時ピッタリにおれが言うと、ドンヘは驚いたように顔を上げて、困ったように眉を下げた。
それから、何か言おうとして----、何も、言えなくて。
小さな前歯で下唇を噛んで、笑った----。
突然もたらされた報せは----、まるで黒い嵐のように。
おれたちはただ翻弄されて、そして迷子みたいに取り残されて。
実家に帰る足を留められたドンヘをおれの家に連れて帰ってきたのは----、迷子みたいなドンヘが可哀想だったからじゃ、なくて。
おれがひとりになりたくなかった、からだ----。
----あーぁ…
と、思う。
----こんなことなら…
こんなことなら、コンサートの時に全力で祝ってやればよかった。
おれも----、メンバーも。
コンサートして、それから打ち上げして、それからカムバして、それからまた誕生日を祝って、それから----、怒涛のスケジュールのついでのような気持ちでいたから。
まだまだ、お祭りが続くようなつもりで、いたから。
あんな、テキトーなお祝いしかできなくて…、
---- …ごめんな
インスタントのわかめスープを、ちょっと迷って、テーブルに置かずにドンヘの手に直接渡す。
掌で包むように、カップを受け取って----、
「…ありがとう」
ドンヘがやっとそう答えて、笑った----。
…どんへせんいるちゅっかへ
全然違うの用意してたんだけど…
それはまた今度(ΦωΦ)ニャー