生活の糧を得る為の営みを終え、もう一つの世界での現実に浸る。 風花の月ともなれば、いくら身体に火照りの名残があろうと、頰を撫ぜる風の冷たさは誤魔化せない。
白く染まった吐息の余韻を楽しみながら、両目の瞼を閉じる。
深い疲労の中、閃輝暗点と共に努めて忘れようとしていた、昨年の2月までの記憶が浮かんでくる。 一度蓋を開けてしまえば、何もかもが色褪せずに蘇る。
故障の上塗り、加齢、精神性…今の自身は、逢着した混迷の渦中にいながら葛藤している。
昨年末、元々慢性的な故障を抱える下背部を更に痛めるも、現実を直視し受け容れる事を頑なに拒絶し続けた結果、最終局面を超えたところで、ようやく全てが終わった事に気付く。
それはまるで、分不相応な矜持を振りかざす愚者への天罰とでも言うべき、予想された結果だった。
それでも。
眼前の可能性が、蜃気楼であると知りつつ、一縷の望みを捨てないのは、愚かな事なのだろうか。
多角的に突きつけられた事実が、強健だと信じて疑わなかった自らの心を蝕む様に追い詰めていく。
怖いのは。
本当に怖いのは、壊れて終わる事じゃない。
強者に敗れる事でもない。
ここまでと自らに見切りをつける事、そして強さへの執着が薄れ、いつしか忘れていく事。
仕事を中抜けさせてもらい、病院で受けた診断は当たり前の事ながら、ドクターストップ。 精密検査を突きつけられた。
でもね、年明け時点で99%無理だと思っていたけど、今は98%になっている。
痛いし、思うような練習もトレーニングも出来ない。
それでも、ジムに行くと楽しいんだよ。
やっぱ、阿呆なんやなあ…