パンパンに膨らんだゆうパックが届きました。
差出人の名を見るとCちゃんからです。
彼女とは久しく会っていません。
品名は衣類と書いてあります。
何事だろうと思いながら包みを開けてみました。
袋にはたっくさんの物がつまっていました。
上の方にあったのは、幼児用のラグビージャージなど。
そうか、昔、Cちゃんの息子であるRのために買って使わなかったものをくれたのかな。
そのRは、もう34歳くらいになっているはずです。
つまり、彼のオヤジの年齢を超えているということです。
そのRが、生まれて半年くらいで、私たちと一緒にラグビーをやっていたベンは異動先の仙台で急死してしまいました。
今回、ゆうパックを送ってくれたCちゃんは、乳飲児を抱えて号泣していました。
号泣などと言う生易しい言葉では表現出来ないくらいの状況でした。
あんな辛い葬式は、後にも先にも経験したことがありません。
包みの中央部辺りには、革製のコンバートのラグビーボールが。
これ傷がついていません。
新品のようです。
きっとベンの写真と共に飾られていたのかもしれません。
その綺麗なボールが、ベンを失って時計が止まったままになっていたであろう家族の悲しみをそのまま留めているようでもありました。
その下には、ワラビーズのジャージなどが収められていました。
封筒にはCちゃんからの手紙と共に、クラブの名簿やステッカーが。
『Rugby is thinking Game』
これは、ベンと一緒に行ったシンガポール遠征の時に、ホストチームであったシンガポールクリケットクラブで買い求めたステッカーです。
カッコいいキャッチフレーズに痺れたものでした。
よく取ってあったなあ。
Cちゃんにお礼のLINEをしました。
「こんばんは。
本日、懐かしくて懐かしいプレゼントをいただきました。
嬉しいし、ちょっとしんみりもします。
ベビー用品関係は娘のところに持っていきます。
ボールはクラシカルでいいねー
そして、クラブの名簿や一緒に行ったシンガポールクリケットクラブのステッカーなんか貴重品だよ!
唯一残念なのは、ワラビーズのジャージがぴちぴちなこと。(笑)
あれを着られるようにダイエットしなくちゃ!
俺に送ろうと思ってくれたことに感謝します。
本当にありがとう!」
直ぐに返信がきました。
「こちらこそです☺️
ありがとうございます👍
俺に送らないで誰に送るの😆(笑)」
俺に送らないで誰に送るの。(涙)
ベンが亡くなって33年。
こんなに時間が経って送られてきた思いもしなかったプレゼント。
これを眺めたり触ったりしているだけで、いくらでも酒が飲めそうです。
学生最後の年、最後の2週間、わたしはベンたちと一緒に、当時津久井湖にあったクラブの寮に合宿していました。
週中の水曜だったかなあ。
授業のなかったベンと私は、買い出しの仕事を請け負うことに。
クラブのバンで、八王子の市場まで行き、大量の肉や野菜などを仕入れて帰路につきました。
途中、津久井湖辺りでは珍しかったオシャレな喫茶店『マロン』に入りケーキとコーヒーをいただきました。
その日、なぜかベンが奢ってやるよと言ってくれました。
その週末、我々のチームは宿敵の朝鮮大学に17-0で勝ちました。
いいゲームでした。
翌週も同じように2人で買い出しに行き、同じようにマロンに寄りました。
「先週ゴチになったから、今日は俺が払うよ」
「いや、俺に出させてくれよ」
「いや、悪いから今週は俺が」
財布に手を伸ばそうとする私の手を押さえて、
「先週、俺が払っていいゲームが出来たから、今週もそうしたいんだよ」
週末、我々Bチームは、学生最後の試合を7-0で勝利しました。
2週続けての完封勝ちで学生ラグビーを終えることが出来ました。
ノーサイド直後、そのチームのキャプテンだった私の背中に、いつもおちゃらけてばかりいたベンが、知らぬ間に飛びついていました。
あの写真、探せばどこかにあるかなあ。