Francesco Cilea "Adriana Lecouvreur" (August 3, 2019) @Grosess Festpielhaus
Adriana Lecouvreur: Anna Netrebko
Maurizo: Yusif Eyvazov
La Principessa di Bouillon: Anita Rachvelishvili
キャンセル魔のネトレプコにハラハラさせられた経緯は前回の記事でお話しましたが、今回はパフォーマンスの感想を。
数日前のドタキャンを経て、無事にネトレプコが出演してくれた最終公演。これがすごかった!コンサート形式とはいえ、今まで観たオペラで、ここまで興奮させられたのは初めてかも。(あれ、この前のヴェローナはどこにいったの?というツッコミは重々承知。)
この祝祭大劇場、どこか見覚えがあると思ったら、大阪のフェスティバルホールに似ている気が。客層が全然違いましたが。(大阪のおばちゃん、ごめんなさい。)
まず何と言ってもネトレプコ!!!キャンセルしまくって、周りに多大な迷惑をかけようが、出るとなれば文句は言わせないネトレプコ!!!特に、この日は先日のキャンセルを多少は反省したのか、いつもよりも全身全霊で、一瞬たりとも隙を見せないパフォーマンスを見せてくれました。
登場しただけでオーラがすごくて、会場の空気がガラっと変わったのを感じます。2300人を超える観客全員が、息をひそめて彼女に注目していました。そして、登場わずか5分で、目玉となる最初のアリア「私は創造の神の卑しい僕です」を歌い上げるネトレプコ。もう言葉がありません。技術的に素晴らしいのは当然ですが、本当にすごいのは、一瞬でその役になりきること。いや、役を「演じている」というよりも、役の方からネトレプコに「降りてきた」、と言った方が正しいかもしれません。それくらい、この日の彼女のパフォーマンスでは、彼女に「芸術」が乗り移ったのではないか、と思わせるほど神懸かっていました。ネトレプコの舞台はテレビで何度も観て、その都度感動していましたが、彼女の創り出すあの世界観は、やはり生で観ないと分かりません。もちろん観客も大興奮。開演10分にもかかわらず、暫し拍手が鳴りやみませんでした。
また、アドリアーナは実在した女優なので、朗読を披露する場面があるのですが、それが特に素晴らしかった!彼女が発する一言一言に感情が込められていて、それが会場全体を包んでいくかのようでした。この朗読を通して、アドリアーナは恋敵である公爵夫人の不実を暴露するのですが、この第2幕ラストは圧巻!思わず鳥肌が立ちました。
そして、公爵夫人の罠によって毒殺されるクライマックスでも大熱演。苦しみながらも、幸せだった日々を思い出しながら死にゆく姿は、本当に何かが乗り移ったようでした。観客も終演後もしばらく放心状態で、拍手すら出来ないほどでした。
これだけでは、ネトレプコのワンマンショーになってしまいますが、それに待ったをかけたのが、恋敵を演じたアニタ・ラチヴェリシュヴィリ。彼女は、ミラノスカラ座の「カルメン」に登場した時から知っていて、いつか生で観たいと思っていたので、ネトレプコに次いで今回のお目当てでした。彼女も、登場しただけで気迫がすごい!その直後のアリアも、大ホールに響き渡る声量と、1つ1つの言葉に込められた恐ろしいばかりの感情が伝わってきてドラマチックでした。女の嫉妬心が見事に表現されていて、思わず呪われるかと思いました。(別にやましいことは何もございませんが。)現代最高峰のソプラノとメゾソプラノが恋の火花を散らすシーンは、今まで観たオペラの中でも、最もゾクゾクするものでした。
大迫力の女性2人に対して、影が薄かったのがマウリツィオ役のユシフ・エイヴァゾフ。声量も技術も何の問題もないけれど、「教科書通りきちんと歌いました」という感じで、それ以上に感じるものがないというか…。別にちゃんと歌ってくれたら文句は言えないし、特に深みのある役柄でもない(オペラの男って大体そうだけど 笑)のですが、女性陣がすごかっただけにやや押され気味。いつまでも「ネトレプコの旦那さん」という認識で、いまだにフルネームを覚えていないし。(笑) ずっとヨシフだと思っていたら、ユシフだったし。(自爆)
このオペラは初見でしたか、曲も美しいメロディーとドラマチックに盛り上がるところもあって、気に入りました。
2階席からのズーム撮影のため相変わらずぶれっぶれですが、折角のネトレプコとアニタなので、カーテンコール写真を。ファッションショーさながらのドレスたちも豪華でした。ちなみに本公演のスポンサーは、かのオーストリアブランド、スワロフスキーだそうです。
第2幕終了後のカーテンコール。
終演後。
ロシアの至宝ネトレプコをようやく生で観られて大満足の午後でした。
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