ドラマチックなストーリーと音楽で大人気のオペラの1つである「トスカ」。僕も大好きな作品ですが、実は劇中に登場する場所は、全てローマ市内に実在するものばかり。今回、各幕ごとの舞台を実際に巡ってきたので、写真とともにご紹介します。(こんな記事を上げて、誰が得するのかというツッコミは重々承知。)

 

第1幕:サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会

 

カラヴァドッシが「妙なる調和」を歌い、「テ・デウム」の大合唱が響き渡る第1幕の舞台となったのはサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会。ヴァチカンからエマヌエーレ2世橋を渡った先に真っ直ぐ延びるヴィットリオ・エマヌエーレ2世通り沿いにある教会です。

 

外観はこんな感じ。ファサードの後方には、巨大なドームがあり、比較的大規模な造りになっています。入場は無料。

正面から入るとこんな感じ。写真では分かりにくいですが、窓から眩いほどの黄金の光が差し込み、非常に荘厳な空間が作り出されています。

 

 

さて、「トスカ」ファンが気になるのは、アンジェロッティが身を潜めた礼拝堂はどこにあるのか、ということ。作中に登場する一族の礼拝堂は実在しませんが、教会内には鍵がかかる礼拝堂がいくつかあったので、その中の1つにもしかしたら…という想像が膨らみます。

 

美術・衣装制作にあたり、デザイナー自らが現地調査をしたというメトロポリタンオペラの最新版では、この部分のデザインも参考にされています。祭壇の真横には裏口があり、教会の正面に向かって右手の通りに出られるようになっています。この扉を通って、カラヴァドッシがアンジェロッティを逃がしたものと考えられます。ということは、カラヴァドッシの別荘もこの通りのどこかにあったのかも…。

トスカが花を供えたマリア様像でしょうか。

舞台の世界に迷い込んだかのよう。

 

第2幕:ファルネーゼ宮

劇中では、スカルピアの邸宅という設定で、カラヴァドッシが拷問され、トスカがスカルピアと対峙する重要なシーンです。現在はフランス大使館となっており、自由に内部見学ができないため、今回は外観のみ。先程の教会から徒歩5分程の距離ですから、本当に狭い範囲でわずか1日足らずの間に起こった出来事なのだと実感できます。

かなり立派な邸宅です。それにしても、この規模ならご主人様の部屋で殺人劇が繰り広げられたことくらいすぐに気づきそうなものですが…。部下たち、ちょっと無能すぎません?(笑)一応、殺される前にスカルピアが「カラヴァドッシの処刑まで1時間だ」と脅しており、宮殿から処刑の舞台となるサンタンジェロまでは徒歩でも10分(トスカはおそらく馬車?)だと考えると、追手が処刑直後に迫ってくるという設定にはリアリティがあります。

次回はぜひ内部見学もしてみたいものです。

 

第3幕:サンタンジェロ城

クライマックスの舞台となるのがサンタンジェロ城。ここでカラヴァドッシが処刑されてしまい、追い詰められたトスカが身を投げるという悲劇(実際に死んだとすぐに分からない点ではある意味喜劇?)が繰り広げられます。映画「ローマの休日」に登場したこともあって、3か所の中では1番有名な観光スポット。

 

サンタンジェロ橋手前から臨むサンタンジェロ城。あの天使像を見るとテンションが上がります。ほぼ全ての「トスカ」の舞台装置に登場する像の実物ですからね~。ちなみに橋の上には、怪しい物売りが一杯ですから、頭の中で「星は光りぬ」を流して気分に浸るのは控えましょう。(笑)

入場料はなんと15ユーロ程もしましたが、ここは「トスカ」ファンとしてスルーする訳にはいきません。「トスカ」に寄付したつもりで入場します。(笑)

ちなみに途中までは博物館になっていたりしますが、そんなに見どころはありません。決して営業妨害ではありませんのであしからず。

 

お目当てはもちろんここ!最上階のテラスです。天使像、近くて見ると迫力満点。

実際に来てみて分かったことは、テラスが意外と小さいこと。奥行きもそこまで広くありません。この距離なら処刑が本当に執行されたか演技かぐらいすぐに気が付きそうなものだけどな…。

また、気になるのは、「トスカはどこから飛び降りたのか」ということ。舞台ではよく、天使像の横辺りに階段があって、トスカはそこを駆け上がり、天使像の真横付近から飛び降りますが、実際にはその階段がありません。よってこの選択肢はなし。舞台では、その方が見映えがするからでしょうね。

となると残された選択肢は、テラスのいずれかの塀の上に立って、そこから身を投げたということになります。場所的に、テラスに通じる出入口(追手が迫ってくる場所)から一番離れているのは、テヴェレ川に面した部分で、天使像のちょうど反対側に位置します。サンタンジェロ城でロケが行われた映画版でも、トスカはここから身を投げています。

よく、あらすじで「トスカはサンタンジェロ城の屋上からテヴェレ川に身を投げた」と書かれていたりしますが、実際にはかなりの距離があるので川に落ちることは不可能です。また、眼下にはすぐ下に1フロア下のテラスがあるため、地上に到達することすら難しそう。これでは死に至るのかという疑問さえ残ります。

落下距離的には、天使像の左右に位置する塀から飛び降りた方が高さがありますので、ここから身投げした可能性も高そう。実際、METの最新版では、天使像に向かって左側の塀から落ちています。いずれにせよ、真下は石造りですから、かなり痛々しい最期…。

 

ちなみに、この屋上からはヴァチカンとサンピエトロ寺院を眺めることができます。トスカもおそらくこの景色を最後に一望したはず。というか、カトリック総本山の目の前で、「おお!スカルピア!神の御前で(対峙しましょう)!」と叫んで自殺するトスカ、かなり度胸がありますね…。半分呪いをかけてますやん。(笑) これも実際に訪問したからこその発見。

 

大好きな演目の舞台を巡ったことで、訪れなければ分からなかったことも沢山あり、次回「トスカ」を観る時にはまた違った視点で鑑賞できそうです。この3スポットは、ヴァチカンから徒歩で巡ることができるので、ヴァチカン観光の帰りに足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

 

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