Giuseppe Verdi "Aida" (July 12, 2019) @Arena di Verona

Aida: Anna Pilozzi

Radames: Murat Karahan

Amneris: Anna Maria Chiuri

 

ヴェローナ音楽祭を象徴する演目ともいえる「アイーダ」。古代エジプトが舞台ということで、ローマ時代のアレーナとは遺跡つながりで、作品と会場の雰囲気が見事にマッチしますし、舞台のスケールの大きさを活用できる作品と言えるでしょう。

 

「アイーダ」の代名詞とも言える凱旋行進を堪能すべく、ちょっと奮発して平土間後列の席を取ってしまいました。ただ、特に小柄な方には平土間はおすすめしません。というのも、古代ローマの遺跡の1階部分(映画「グラディエーター」で剣闘士がドンパチやっている所)がそのまま客席になるので、全く高低差がないんです。そのため、前に背の高い外国人に来られると視界が大幅に遮られます。友人が見事にその被害に遭い、僕と席を変わったのですが、さすがに長身の僕でも前に座高が高い人に来られると無理。(笑)しかし、1万円以上もするチケット代を払ってまで見切れて終わるのは悔しいので、思いっきり背筋を伸ばして、座席には持参していたレインコートを畳んで敷いて上げ底。(笑)これでオペラグラスをのぞき込めば、全く問題なしで鑑賞できました。あと女性でたまに盛り髪スタイルで来る方がいますが、あれも視界を遮る原因になるので控えましょうね。

 

この日は、全上演時間を通しての降水確率が70パーセント前後。空も徐々に曇ってきて、怪しい風も吹き始めていました。この時点で、全幕観るのは内心諦めムードで「せめて凱旋行進まではもってほしい」と願っていました。ところが、開演するやいなや、遠くで雷まで鳴り出す始末。観客もざわざわしながら、空を見上げていましたが、この音楽祭のすごいところは「雨が一粒でも降ってくるまでは決行する」ということ。風が吹き荒れようが、雷鳴が轟こうが、いたって落ち着いて続行する出演者&スタッフたちにプロの意地を見た気がしました。

そんな感じで第1幕終盤までは進みましたが、神殿のシーンでついに雨が降り出して中断。オーケストラの逃げ足が速く、舞台上に歌手やダンサーたちが全員置いてきぼりになったのには笑ってしまいました。僕も、自分のレインコートを友達と2人でシェアして頭からかぶりながら通路に避難。レインコート、大活躍したので、皆さんも必ず持参してください。会場にも売っていますが、ゴミ袋に穴開けたのか?みたいなクオリティーで、みんなのネタになっていましたから、日本の100均レベルのものでも持参しておくと安心です。そして、雨粒を肌に感じて、演奏がストップしたら即座に逃げましょう。もたもたしていると、屋根のある場所に入るまでに大渋滞に巻き込まれます。

 

無事通路に避難したものの、雨足は強まるばかり。まさかの凱旋行進も観られずに中止?との不安も過りましたが、この場は再開を信じてとにかく待ちます。そして待つこと20分程で「再開されます」のアナウンスが!客席に戻ってみると、澄んだ空に月まで出て非常に美しい光景が広がっていました。その後10分程で再開され、観客も大喜び。

ところが、開始10分程で再び天候が崩れて中断。でも、雨はたいして降ってこなかったので、5分後には続行することが決まったようでした。

二度の中断を経て、ようやく深夜0時前、遂に凱旋行進シーンにたどり着きました!まだストーリーの中盤にも差し掛かってないのに、間もなく日付が変わるという過酷な公演です。(笑)

それでも、凱旋行進の場面は圧巻でした。ようやくたどり着いたという意味でも正に「勝利」だったわけで、感動もひとしお。過去の演出では象が出てきたこともあったそうですが、さすがに今回はありません。その代わりクライマックスでは馬が6頭ほど登場(何頭かは全く言うことを聞いていなかったけど笑)。中盤にはけっこう本格的なバレエもありました。ダンサーだけでザッと30人以上は出演していた気がします(「白鳥の湖」の群舞より多い)。そして、何よりも圧倒的なスケールの大きさで、これでもか!というくらい行進する人々が続々と出てきますから圧巻です。世界中どこを探してもこれに勝る「アイーダ」はないのではないでしょうか。

 

 

全体像がカメラに入りきらない。(笑)ちなみに、最上段に見える灯りも全て生身の人間達が持っています。

この後、第4幕序盤で再び小雨が降り始めたため、そこで終演となりましたが、この時点で午前1時半とかでしたから、ここまで上演してくれただけで感謝。唯一可哀そうだったのは、アムネリス王女で、見せ場のモノローグの途中で打ち切りになった上、舞台上に1人ぽつんと取り残されてしまいました。よりによって雨が降ってきたのが、無伴奏のパートだったため、王女が熱唱している間にオーケストラが撤収してしまい、気が付いたら音が鳴らない、という展開に。しかも、雨自体は降っているかどうか微妙な程度だったので、本人は明らかにふてくされていました。「え?あなた達なんでいないのよ?このくらいの雨よ?えー、ここで止めるのだるい~」というような彼女の心の声が聞こえてきそうで、友人と2人で爆笑。つい数秒前までエジプト王女を熱演していたのに、一瞬で素に戻っていたもので。(笑)

 

たしかに、この野外オペラ、雨が降るまではどんなコンディションであれ続行、雨が降っても即中止ではなく、天候回復まで待機なので、本当に歌手の皆さんは大変。それでも、熱演する舞台人のプロ根性に心を打たれました。

という訳で、あいにくラスト30分程は見届けることが叶わなかったけれど、何よりあの雨を乗り越えての凱旋行進が目と心に焼き付いているので、この「アイーダ」が今回僕のヴェローナ音楽祭デビュー4公演中のベストでした。

いつになるかはわかりませんが、いつの日か必ずこのヴェローナ音楽祭に戻って来たい、と思わせてくれるオペラ鑑賞を感慨深く満喫できた4日間でした。

 

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