Giuseppe Verdi "La Traviata"(July 11, 2019)@Arena di Verona

Violetta: Irina Lungu

Alfredo Germon:Pavel Petrov

Giorgio Germon: Simone Piazzola

 

かのフランコ・ゼフィレッリ監督が演出を手掛けた新作の「椿姫」。残念ながら彼は6月末のプレミエを目前に15日に亡くなってしまったので、これが遺作となりました。

そんな監督の最新作かつ遺作、これまでの全ての作品同様とにかく豪華です。開演前のセットはまるで19世紀の歌劇場。

この幕が開くと、ヴィオレッタの屋敷が現れます。しかも2階建て!

 

また第3幕のフローラの夜会の場面では、暗転後パッと照明がともった瞬間、思わず拍手が湧き起こりました。客人たちも大人数で、あの広いアレーナを埋め尽くさんばかり。

オペラ初心者の方にもおすすめできるオーソドックスなプロダクションですが、問題点は最初にこれを観て体感してしまうと他のバージョンでは物足りなく、満足できなくなってしまうことでしょうか。それくらいヴェローナ音楽祭のオペラは豪華ですし、病みつきになります。しかも、平土間以外の席はけっこうお手頃ですしね。同行した友人と「老後ヴェローナに住んで毎晩オペラ観たい~」なんて話していました。

 

さてキャスト陣で一番良かったのはヴィオレッタ役のIrina Lungu。元々当たり役だそうですが、正にヴィオレッタそのものでした。まず何といっても美形!太めのおばはん(失礼)が多いオペラ界ではビジュアルが良いとかなりの加点対象となりますが、彼女はスタイル良し、顔良しの美人さんで、佇まいも品があって美しかったです。他の役はビジュアル二の次でも許せるのですが、ヴィオレッタに限っては、結核で死ぬという設定故に、ここで元気いっぱいのふくよかな歌手に出てこられると、どうも説得力に欠けてしまいます。死因は結核ではなく、むしろ生活習慣病!?とツッコミたくなりそう。これで歌が下手だとただの見かけ倒しで終わってしまいますが、彼女の場合、歌声も素晴らしかった!「乾杯の歌」の時には声量がイマイチかなとも思いましたが、第1幕終わりのアリアではしっかりと聴かせてくれました。驚いたのは、最後の高音を1オクターブ上げてきて、しかもパーフェクトな出来栄えだったこと。広大かつ吹きっさらしのアレーナでまさか音を上げてくるとは思っていませんでしたから、これにはびっくり。観客も満場の拍手でした。初日の歌手も1オクターブ上げたようですが、なんだか中途半端な出来で観客も盛り上がらず仕舞いだったので今回はすごかったです。決して大げさに演技をするタイプではなく、全体的に控えめなヴィオレッタでしたが、外見の良さも相まって、内からにじみでる悲哀が感じられて良かったです。

 

対するアルフレード役は、歌もけっこう上手かったし、若いお坊ちゃま感があったので役の雰囲気に合っていました。

 

父ジェルモン役は、地元出身らしく、ひときわ歓声を浴びていました。よく考えたら、この人、先月ウィーンで観た「アイーダ」のアモナズロ役、しかも出待ちでサインまでもらっていました。(笑)ちゃんと調べていたら、その時にひと言「今度ヴェローナ行くよ!」ってお伝え出来たのに、リサーチ不足でした。

それにしても、何回観てもこの父親ばかりはいい人なんか悪い人なんか理解不能やわ~。結局誰の味方か分からない迷惑なオヤジ。(笑)

 

カーテンコール写真。まずは第2幕終了後。

そして終演後。あ、そういえば指揮は、特別ゲストでアンドレア・バッティストーニでした。彼もヴェローナ出身だそう。毎回登場するたびに「ブラボー、マエストロ!」の歓声が上がっていました。

 

大好きな「椿姫」をこのような豪華なプロダクションで観られて大満足でした~。来年の同音楽祭でも上演予定なので、夏にイタリアに行かれる方はぜひご覧になってくださいね!

翌日の「アイーダ」は更に色々な意味ですごかったのですが、そのお話はまた今度。


観劇ランキング