Geroges Bizet ”Carmen” (July 10 and 13, 2019) @ Arena di Verona

Carmen:Ksenia Dudnikova

Don Jose: Martin Muehle

Escamilio: Alberto Gazale (July 10) Erwin Schrott (July 13)

Micaela:Ruth Iniesta (July 10), Lana Kos (July 13)

 

 

長年テレビ放送を観て、憧れを抱いていたヴェローナ音楽祭ですが、ヨーロッパ留学中の今年、思い切って訪問を決定。とはいえ、実は留学開始3週間目、極寒の2月26日、「夏休みに旅行先で舞台鑑賞したいけど、劇場はどこもシーズンオフだしな…」と思いながら調べているとこれに行き当たり、軽い気持ちでフランス留学中の同期を誘ってみると、一気に盛り上がり、その日のうちにチケット×3公演+アパートメントホテル4泊を予約購入してしまったという、かなりのノリと勢いで決行。しかも野外ということで、天候不良によるキャンセルに備えて、3公演を予約していましたが、快晴のヴェローナ到着日早々、学生当日券を10ユーロで購入し、「カルメン」を鑑賞したので、結果的には4公演。また、お天気のお話を先にしてしまうと、4公演中3公演は無事最後まで終了(そのうち最終日の「カルメン」は強風でした)、「アイーダ」は雷雨の為凱旋行進までに2回中断しつつ4幕冒頭まで上演されましたから、4分の3以上観られました。最近のヴェローナ音楽祭は雨天中断が多いそうなので、今回はかなりラッキーだったかも。

 

さて初日と最終日に鑑賞した「カルメン」の感想から。初日は石段の上の自由席、最終日は下から2番目のカテゴリーの上手側の席でした。

座席からの眺めはそれぞれこんな感じ。テレビでは何度も観てはいたものの、やはり会場に来るとその壮大なスケールに圧倒されます。

 

今回の演出は、時代設定が戦時中のスペインになっていましたが、ヘンテコなアレンジではなく、むしろちょっと現代的な衣装の方がカルメンの雰囲気には合っていたりもするので伝統的なものより良かったかも。幕開けからいきなりドン・ホセの処刑シーンだったり(ドン・ホセは最低男だけど、いざ目の前で処刑シーンが繰り広げられるとショッキング)、ラストでカルメンが殺される場面がかなりリアルだったりはしましたが、その他はオーソドックスでした。ヴェローナ音楽祭の醍醐味であるスケールの大きさはもちろん健在で、密輸団の人数が半端じゃなかったり、闘牛場のシーンで踊る馬や大量の紙吹雪が登場したりしましたよ。観客も大盛り上がりで、序曲では手拍子、「闘牛士の歌」ではまさかの一緒に口ずさむ人が続出でした。写真は第2幕ラスト後。密輸団の数が半端じゃない。

カルメン役はウズベキスタン出身ロシア育ちのKsenia Dudnikova。スラブ系なのでいわゆる「ラテンの燃え盛るような情熱のカルメン」とは違い、どこかクールな面もありましたが、これはこれであり。歌声もどちらかと言うと「綺麗め路線」だったため、野太いカルメンが好きな人には物足りなかったかもしれませんが、低音があのアレーナできちんと響いていたのは◎。あと、ダンスシーンで魅せてくれたのも加点対象でした。そこまで難しいステップを踏むわけではありませんが、スカートの裾使いが上手く、足先もきちんとアンデオールになっていましたし、身体の内側から踊っている感じがあって良かったです。このあたりはさすがロシア。

 

オペラ史上最悪最低男のドン・ホセはMartin Muehle 。もはや外見がおっさんですから、そんな彼がマザコンというのはかなり笑えましたが、声も良かったし、かなり自己中で短気なホセのキャラクターにはよく合っていましたよ。今回のペアの役作りなのか演出自体の解釈なのかは分かりませんが、「男を破滅させる魔性の女カルメンの物語」というよりは「嫉妬深い男を誘惑してしまった女カルメンの悲劇」という感じでした。

 

エスカミーリョは、歌は良かったけど、花形闘牛士のわりには、小柄なおじさん。(笑)そこはもうちょっと長身のイケメンを配役してほしかったわ~。

 

一方、かなり良かったのがミカエラ。10日はRuth Iniesta、13日はLana Kosで、どちらも非常にハイレベル。ミカエラのアリアって綺麗な反面、個人的にはわりと退屈なイメージがありましたが(すみません笑)、今回はドラマチックに歌い上げてくれて聴き入りました。

 

カーテンコール写真たち。ちなみに雨による中断無しでも終演は0時45分。歌手とオケの皆様、お疲れ様です。深夜に吹きっさらしのアレーナで歌う(しかも雨が降らない限り基本どんなコンディションでも上演)って歌手泣かせだと思うのだけど、ギャラはよいのでしょうか?そうでもないと出演を決断しにくい気がしますし、あまりにもお気の毒…。

 

今回のとは異なる演出ですが、ヴェローナ音楽祭の「カルメン」の映像も出ています。

 

 

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