Giacomo Puccini "Tosca" (July 18, 2019) @ Wiener Staatsoper

Floria Tosca: Nina Stemme

Mario Caravadossi: Piotr Beczela

Baron Scarpia: Carlos Alvarez

 

シェーンブルン宮殿サマーコンサートを目当てに決定した今回のウィーン旅行でしたが、せっかくの「音楽の都」ですから一流のオペラも堪能することに。まずはピョートル・ベチャワ主演の「トスカ」。一般発売日(原則公演2カ月前)の2週間前に、公式サイトから事前リクエストをしてみたところ、舞台真横の2階ボックス席1列目が割り当てられました。一般発売時には定価チケットは完売!になっていたので、リクエストを出しておいて正解。場所さえこだわらなければ、事前リクエストさえ出しておけば、かなりの確率でとれますから、特に定番の人気演目やスター歌手出演日は、予め申し込むのがおすすめ。希望の座席範囲は広くした方が入手しやすいのは確かですが、ボックス席2列目以降に当たると舞台はほぼ見えないので、それを避けるためには「Seats with restricted views may be allocated(視界が制限される席が割り当てられてもよい)」の項目のチェックを外しておくとよいと思います。事前リクエストは、ウィーン国立オペラ座の公式ウェブサイトの「Season and Tickets」をクリックし、カレンダーから希望の演目を選択、「Order Tickets」をクリックすれば行えます。その際、クレジットカード情報の登録が必要で、チケットが割り当てられた時点で自動的に決済されるので、その点はご理解の上申し込んでくださいね。

座席からの眺め。もっと見切れることを覚悟していましたが、舞台の8割くらいはちゃんと見えました。トスカがスカルピアを刺す場面や、ラストのサンタンジェロ城からの飛び降りシーンもバッチリ。

ボックス席の入り口から。コート掛けもあるので、ボックス席の場合は、クロークに預ける必要がありません。特に冬場は手間が省けるので、その点でもおすすめかも。

開演直前の場内。満席です。ちなみに1階席後方の柵で仕切られた部分に人が密集している場所が「バルテッレ(平土間)」の立見席になります。3種類ある立見席の中で、一番視界はいいのですが、客層が観光客だらけであまりマナーがよろしくない雰囲気なので、個人的にはおすすめしません。別の記事にしたいと思いますが、音楽の都ウィーンを本当にお手頃に楽しめるのは「ガレリー(4階の天井桟敷)」の立見席です。

ウィーン国立オペラ座の演奏は、あのウィーンフィル。今回、オーケストラボックスの真上の席だったこともあり、音の響きが大迫力でした。下手側なので、音響に偏りはあるのでしょうが、それが気にならないくらい(または音楽的知識がなくて分からないだけ)スケールの大きな演奏でした。ただ、1つ思ったのは、あくまでも「オペラの伴奏」ではなくて、完全に「ウィーンフィルの演奏会」になっていない?ということ。それくらいオーケストラの主張が激しいです。第一幕終盤の「テデウム」のシーンでは、オーケストラが張り切りすぎて、肝心のスカルピアの声がかき消され、それに対抗しようとしたスカルピアの顔がめっちゃ苦しそうでした。(笑) 

 

今回、素晴らしかったのは何といっても、カラヴァドッシを演じたピョートル・ベチャワ。最初の「妙なる調和」から聴き惚れてしまいました。そして圧巻は、見せ場の「星は光りぬ」。拍手が約3分間鳴りやまず、なんとアンコール!特に天井桟敷からの「ブラボー!」の嵐とアンコールを求める歓声がすさまじくて、やはり音楽好きは、天井桟敷に多いんだなと実感。最後には、足を踏み鳴らす人まで続出し、劇場は大盛況。拍手がある程度続くと、「これアンコールあるかも?」みたいな雰囲気が流れ出し、そこで最後の一押しと言わんばかりにまた盛り上がりました。アンコールの後も大喝采で、結局1曲歌うシーンで10分以上を要しました。(笑) 物語が途切れてしまうので、ドラマ性には欠けてしまいますが、めったにないであろう本場でのアンコールに立ち会えて感激でした。また、拍手が鳴りやまなかった時に、オーケストラ団員たちが「え、アンコールやるの?やらないの?どっち?」みたいな感じでざわざわしていたのも面白かったです。あと、この席からは、舞台上に設置された歌手と指揮者のコミュニケーション用のカメラまで見えました。あんなものがあるなんて初めて知った。

 

このカラヴァドッシに負けず劣らず素晴らしかったのが、ニーナ・シュテンメ演じるトスカ。初めて聞く名前でしたが、かなりのベテランのようで、顔はおばちゃんだったものの、ドラマチックなトスカでした。歌ももちろん素晴らしいのですが、特筆すべきは演技力。第1幕の登場シーンから、女性の嫉妬心や揺れ動く女心をしっかりと表現してくれました。カラヴァドッシに、「マリア様の目だけは黒く塗って頂戴ね」といじらしくお願いする場面では、観客爆笑。悲劇のはずの「トスカ」でしたが、情熱的なカップルのおかげで、第1幕中盤まではラブコメ状態。(笑) 第2幕のアリアもしっかり聴かせてくれて、見せ場のスカルピアをぶっ刺す場面「これがトスカのキスよ!」と吐き捨てるあたりはかなりの迫力でした。ラスト、サンタンジェロ城からの身投げシーンも、わりと綺麗に飛び降りて、ドラマチックな幕切れ。重量級の歌手にとっては、命がけのダイブだそうですが、「ボテッ」とはならずにちゃんと飛び降りたように見えたのはさすが。

 

スカルピア役も嫌な男っぷりが最高でしたが、意外とあっさり死んでしまったのが残念。もうちょっともだえ苦しんでくれた方が盛り上がったかと。この場面は、完全にトスカの迫力勝ち。女って怖い。(笑)毎回疑問に思うのが、食卓の肉用ナイフくらいでわりとおデブなスカルピアがあっさり死んでしまうことと、ご主人様の部屋が修羅場になっているにもかかわらず、誰一人として気付かない無能な部下たち。まあ、オペラのストーリーには突っ込まないことに致しましょう。

 

ウィーン国立オペラ座では、各幕ごとにカーテンコールがあります。ついさっき殺されたばかりのスカルピアが仲良くトスカと手をつないでいるのがかなりウケる。

オペラ座から徒歩2分圏内のホテルに泊まっていたので、出待ちをしてみました。楽屋口は、ケルントナー通り側にあり、「Stage Door」と書いてあるのと、終演後は大勢のファンが群がっているのですぐに分かります。それにしてもすごい人。しかも、平均年齢高すぎ。かなりお年を召された老婦人たちがプログラムとペンを片手に待っている光景にウケました。(笑)

スターが出てきた途端現場は大混乱になり、順番も何もありません。遠慮しているとサインももらえませんから、そこは頑張って輪の中に入って、声をかけましょう。こういうのは関西人の得意技。(笑)

ピョートル・ベチャワに大接近。

ニーナ・シュテンメさん。さっきまでの迫力ぶりからは想像もできない穏やかそうな方でした。

無事に主演2人のサインをゲットして帰路へ。スカルピア役も出てきていたけれど、主役2人の争奪戦でくたびれたので、ここで退散。

 

連日過去最高レベルの猛暑が続いているヨーロッパ。ブルノは、気温は高いものの、風があるので体感温度は低く感じます。ここ最近は湿度が低いのも◎。明日から、クロアチア・イタリア24日間の旅に行ってきます。どちらも初めての国なのでドッキドキ。ヴェローナでは、現在フランス留学中の同期と待ち合わせて、野外音楽祭でオペラ鑑賞をします。

 

よろしければワンクリックお願いします。


観劇ランキング