その5  最近、加速力とは無縁の日々をすごしています | あなたのとなりにいる 中年男子の本棚

その5  最近、加速力とは無縁の日々をすごしています

「加速力」で成功をつかめ!  齋藤 孝  草思社 1365円

著者は明治大学文学部の教授。教育学が専門とのことですが、ホームページで確認すると幅広い分野で、いっぱい本を書いています。私の本棚の中にも、まだ読んでいない「読書入門」という著者の本がありました。「声に出して読みたい日本語」はタイトルを知っている人も多いと思います。

その中でも、異色のタイトルの「加速力で~」。3か月前に読んで、ほぼ内容を忘れていましたが、読み返してみると、なかなか良いことが書いてあるような気がします。

著者曰く、「成功の感覚には共通する原理がある。それが「加速度感覚」だ。・・・およそ成功の条件として挙げられるのは、「努力」ないしは「運」だろう。・・・しかし、努力と運の二つだけで成功を語っているのでは思考が止まってしまう。・・・運と努力の間を結びつけるものは存在しないのか。そのポイントとなるのが、加速度感覚であると私は気がついたのである。」

また、加速力の例えとして、著者は受験勉強を挙げている。「成功している人というのは、・・・努力の速度にメリハリをつけている。・・・人生を区切り、ステージを変える際には加速力が必要である。」

つまり、加速のタイミングが合わない人が受験に失敗している。この例えは中年世代にとって、誰もが受験勉強を経験しているので分かりやすい例えですね。

しかし著者がこの本で説きたいのは、「社会的な地位向上や成功のノウハウではなく、そこに至るまでの過程として、加速して仕事をすること自体が快感である・・・そういう時間を持つことが(人生のゴールデンタイム)」と述べています。「成功をつかめ!」というタイトルと矛盾しますが、そこはまぁヨシとしましょう。

そして、「本書の目的は加速力の原体験をしていない人に向けて、加速力を身につけるにはどうすればよいかを述べている」とも。つまり加速力を身につけるためのノウハウ本なのです。

再度通読した感想。読む人によっては加速力というキーワードが大きな価値を感じる本かもしれません。


ここからは、私がえらんだこの本の「ここ大事!」ってところです。

元気に回転しているような感覚を人に与えることができれば、人はついてくるし、引き上げてくれる。「こいつはまだまだ伸びるな」という感触を相手に与えることが重要なのだ。

どんな仕事でも大切なのは慣れである。任されれば伸びるし、任されなければいつまでも出来ない。だから、人に引き上げてもらうことがポイントになる。


日本という国はどちらかといえば実力よりポジションを重視する社会である。だから、同じステージにずっととどまると、仕事の展開もないし、自分自身の気持ちも刷新されない。

加速すべき時には加速して、次のステージに上がったら等速運動に移り、また次の加速の機会をうかがう。そういうアクセルの踏み時ブレーキのかけ時を意識することが大事なのである。

ポジションに似合わないという感じを他の人に与えること自体が、その人の魅力になる。周囲の人がそこに置いておくのは惜しい、そこで働かせるのは惜しいという気持ちになれば、抜擢ということも起り得る。

考えても仕方がないことを考えないというのは、現在を生きる上で重要な技である。(考える)無駄を省きエネルギーの消費を防ぎいざという時に一気に投資する。

一時期に一点に集中する。一つのことに集中するだけで誰でも爆発的なエネルギーを発揮することができる。金もエネルギーもすべてそこに注ぎ込めば、何をしていても意識がそこから離れず、入り込み方が非常に深くなる。それが加速になっていくのである。

加速度を増していく過程において、最大の障害は不安や怯えである。何かを始めるとき、できると確信をもって臨むのと、できるか否か不安を抱いて臨むのとでは、結果がまるで違ってくる。リーダーの資質とは突き詰めれば「何としてでもやる」という覚悟を見せることだけだ。

感情的かつ誹謗中傷を目的とした多くのマイナス情報は有害である。マイナス情報と察知した時点で聞く耳を持たないことだ。聞いても不愉快な思いをしてエネルギーを削がれるだけで何らメリットはない。



最後に中年男子感銘度は★×3.5でした。



「加速力」で成功をつかめ!/齋藤 孝
¥1,365
Amazon.co.jp