新しい鋼材を試しました。
14C28NとSPG STRIX
VG XEOSの継続テストも
3月初めに神戸でナイフショーがあり、その会場でナイフ用の鋼材が買えるのです
ヨットの上でも使うナイフの鋼材として、これまでのお気に入りはマグナカットと10c28mo2
耐摩耗性も重視するなら粉末鋼のmagnacutが別格。
刃先の鋭さに特化し、コスパも考えると10c28mo2
10c28mo2から僅かに高い硬度を求めるとVG XEOSや14C28Nかな
10c28mo2はこれまで試したステンレスの中でも飛び抜けて組織が細かく、炭素鋼の様な切れ味の鋭い刃先が作れます。
10c28mo2の顕微鏡写真

https://www.eurotechni.com/fr/index.php?controller=attachment&id_attachment=10
殆どの炭化物が0.1μm位。
ただし、焼き入れ後の硬度が僅かに低く(HRC 59〜60)刃先を鋭利にするとエッジローリングが起きる。
そこで試したかったのが14C28N
10c28mo2より炭素が多いので、やや硬度が上がるが僅かに錆びやすいとの位置付け
炭化物のサイズは0.2μm位の感じ
靱性が非常に高く、マグナカットの発明者ラリントーマス博士がコスパ最高の鋼材と絶賛してます
2日間の海上での比較テスト後
上が14C28N 下がVG XEOS

錆はどちらも同じ位、表面上の錆で擦れば落ちます。孔食も見当たらない。
14C28Nは食い付き感がある切れ味ではないけど、エッジローリングやチッピングは無い。
ステンレスにありがちな、粗大な一次炭化物がなく、滑らか切れ味
耐摩耗性は比較的弱いけど、チッピングが無いので、ストロッピングだけで良い刃先に戻り、いつまでも使えそう。
仕上げ砥石を使えば、細かい砥粒に相応して、簡単にカミソリのような滑らかで鋭利な刃先が作れます。
VG XEOSは、食い付き感もある切断力の高い切れ味。
成分分析を見ると、ほんの僅かなV、W、Nbが検出されている。
こんな少ない添加物で切断力に影響する程、硬質炭化物が出来るか信じられないが、耐摩耗性も感じる。
使い込んでみると良い点と、期待程でもない点も見えてきた。
誤ってステンレスのシンクに刃先をぶつけた際はマイクロチップが見られた。
作成中のペティナイフは、焼き入れに出したらとんでもなく焼き曲がりしてしまった。
刃先を布で濡らしながらガスコンロで炙り、曲がった柄の部分を曲げようとしたけど最後は折れてしまった。
最初は10c28mo2や14C28Nのような鋼材かと思ったが、VG−10の一次炭化物を減らした改良版のようだ
SPG STRIXは包丁を作って評価中

硬質炭化物を多く含ませる事が可能な粉末鋼なので、耐摩耗性故の研ぎにくさや、炭化物の大きさ故の鋭利な刃先が作れない事を予想していたけど、拍子抜けするくらい研ぎやすい。
仕上げ砥石だけでなく天然砥石もかかる。
組織の写真をみると炭化物の直径は1μm弱のようだ。
炭化物体積も少ない。
粉末鋼なのに耐摩耗性を求めるのではなく、研ぎ易さや刃先の鋭さを求めてチューニングしたみたい。
複数の炭化物があるようだし、小さな炭化物なのでマグナカットのようにニオブが含まれているのだろうか?
この鋼材も成分非公開なので性能がわからない。
砥石はよく掛かるけど刃先の処理が難しい。
バリがよく残るし、マイクロチップもおきる。
刃先の電子顕微鏡画像と研ぎに関する凄いサイトを見つけた。
エッジ先行では刃先角度が鈍化しエッジ後行ではバリが発生する。
どちらも塑性変化を起こすので刃持ちに悪影響を及ぼすと思う。
キング6000番の仕上げ砥石よりキング1000番中砥の方が鋭い刃先となっている
これはキング6000番が柔らかい仕上げ砥石だからだと思う
今まで研ぎの仕上げでは、バリの処理と刃先の炭化物脱落を心配して、エッジ先行で終わらせていたけど、炭化物は簡単に脱落しない。海外のサイトなのに日本の天然砥石(浅葱)で刃先を仕上げた写真も載っていて面白い。
液体ピカールでのストロッピングや、砥ぎ汁を利用した天然砥石の仕上げで下記の状態になる事をイメージしていた。
この状態になると炭化物が刃先に浮き出て、飛躍的に切れ味が上がったように感じる。
人造砥石の成分は酸化アルミニウムで天然砥石の成分は海洋プランクトン由来のシリカや石英。
炭素鋼を研ぐと、天然砥石のシリカの硬度は基質のマルテンサイトと同じ位で、鉄炭化物より低い。研ぎ泥を上手く使えば、僅かな差で鉄炭化物だけが刃先に残り絶妙に鋭利な刃先が作れる
合金鋼は人造砥石のアルミナ系研磨材より炭化バナジウムの方が圧倒的に硬度が高いので、硬質炭化物が刃先に残る。
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[1] Theisen, W. “Hartphasen in Hartlegierungen und Hartverbundstoffe.” (1998).
故に炭化物の直径≒刃先直径
慎重にダイヤモンド砥石で硬質炭化物を削って鋭い刃先を作っても炭化物に亀裂が入り平らに摩耗してしまう。