迷信のはなし | カンボジアの物語

迷信のはなし

カンボジアの物語-迷信のはなし


私の名前はトロセークといいます。


トロセークは木に穴を開けられるほど

硬いくちばしを持つ鳥、

キツツキで、みなさんによい知らせを運びます。



私ははじめに、毎日の生活を左右していると

依然として信じられているさまざまな迷信について

お話ししようと思います。


急速な科学の発展によってありえないことだと断定されても、

私たちは迷信から離れることができないのです。


子どもの頃、髪の毛がすべて抜け落ちてしまうか、

病気になって死んでしまうまで人間を怖がらせるような

お化けの話を大人からよく聞かされたものです。


夜、モリフクロウが大声で鳴いたり、

屋根の上を飛んだりすると、身の毛がよだち鳥肌が立って、

1人きりでは家の外や裏に出られませんでした。


もしモリフクロウが屋根の上か家の近くを通ったら、

その家に必ず病人か死人が出ると言われています。


田舎では、モリフクロウが家の屋根か

その近くの木にとまったら、おどかして追い払うか、

大声で罵詈雑言をあびせます。


モリフクロウが不幸をもたらし、

死人を出す原因になる悪鳥だと知っているからです。



私の母は、幼い頃、

屋根の上をとぶ火の玉を見たことがあるそうです。

その時、祖父はフランス人と仕事をしていて、

その人がしばらくほかの州で仕事をする間

留守番を頼まれました。


母は伯父とその家の屋根に上って寝ころんで

星を見ていましたが、突然、上空をひと筋の光が

横切っていきました。

伯父は母に、2人で指きりして絶対に離さないように

といいました。


そのひと筋の光は飛び去らず、

ふわふわと行ったり来たりしました。


母は伯父に、すごく怖いから指を解いてしまいたい

と言いましたが、伯父は、「怖がるな、大丈夫だよ」

と言いました。


しばらくして祖父が2人を探しに来たとき、

その光がどこにも飛んでいけないのを見て、


「手を離しなさい。悪さをするのはやめなさい。

こんな夜には火の玉が自分の子どもを連れて

食べ物を探して飛び回っているんだよ」


と言いました。


手を離すや否や、その光はすごいスピードで

飛び去っていったそうです。


翌日、一緒に働いていた親戚の人が祖父に言いました。


「昨晩西の方の村で悪霊が人に憑りついたらしいですよ。

悪霊は、子どもを連れてお供え物を探そうと飛んでいたとき、

人間の子どもが指きりしたので動けなくなってしまい、

もう少しで自分の子どもを落っことして

死なせてしまうところだったんですって」


それはもうひどく怒っていて、おさまりがつかなかったそうです。



村人たちはこぞって頼み込んだらしいですよ、

「お供え物をするからその人の体から悪霊を出してくれ」って

祖父は答えました。

「子連れの火の玉を動けなくしたのはうちの子だよ」


それ以来、母はいくら伯父がまた同じところで遊ぼうと誘っても

2度と行かなかったそうです。


まだこれから引き続きお話ししたい物語がたくさん残っています。