天国にいるあなたへ
「高坂さん、送別会の花の手配お願いね。3000円で」
「分かりました。今日帰りに行ってきます」
お世話になった女性課長が今月いっぱいで退職することになった。
お舅さんが倒れられたとかで、いわゆる介護退職ってやつ。
とても優しくて、目標としていた方だっただけに、退職の話を聞かされたときは、ショックで寝込みたくなった。
帰り道のあそこの花屋でいいよね。花のアレンジなんてどこもそう大差ないでしょ。
あたしは仕事帰りに、職場から車で5分の" Florist Asakura" に寄った。
「あの…フラワーアレンジお願いしたいんですけど…3000円で…」
店内にいる男の人に声をかける。
「どんな人?」
「あ、40半ばくらいの女の方です。上司なんです。退職されるので…」
「色は?」
「はっ?」
「どういう色でまとめたいの?」
「えっ…と、ピンク…がいいかな。優しい雰囲気の方なので…」
「入れたい花は?」
「あ、じゃあバラ入れられますか?」
「バラね」
なんでこの人はこんな口調なの?
客商売でしょ。花屋でしょ。
もっとさー、愛想よく物腰柔らかく対応できないの?
ってか、こんなんで客来んの?
あたしの彼に対する第一印象は
『無愛想な人』
だった。
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