Kirscheのブログ





とある会場。ステージには既にオケの団員たちが着席している。客席の照明が少しずつ落ち、ステージがパッと明るくなる。


頃合いを見計らってコンマス(コンサートマスターの略)が颯爽と登場し、オーボエ奏者に合図する。それを見てオーボエ奏者は、チューニングの音となるラ(A)の音を出す。


ある意味、ドソロである。シーンと静まり返った中で、たった一人の音を出す。オーボエの人はこの瞬間、緊張しないのかな、といつも思うのであった。いつか聞いてみたい。


オケのチューニング係であるオーボエ。こう書くとオーボエって一体どんな音色なんだ、と期待感が高まる((o(^∇^)o))


簡単に言うと、「チャルメラ」であるΣ( ̄ロ ̄|||)


某インスタントラーメン(カップではない)の袋に描かれている、ラーメン屋の屋台のおやじが持っているあれ、である。見たことがある人、いると思います。


こんなこと書くと、全国のオーボエ奏者から抗議のコメントが殺到しそうです。でも、うまくない人が吹くと、チャルメラにしか聞こえないんだもん( ̄^ ̄)(←精一杯の抵抗)。


でも、これは事実である。プロはもちろんのこと、アマチュアでもうまいオーボエ吹きはたくさんいる。彼らの音は決してチャルメラではなく、とても味わい深い音色がするのである。ビブラートを効かして歌いこんだりすると、
惚れる♪(* ̄ー ̄)。茂木氏の本によると

音色はきわめて情熱的であり、たいへん鮮やかな印象をあたえる
のである。聞いた途端速攻でFall in Love も強ち嘘ではない。この音色から奏者は

「おのずから感情過多で、個性的な性格になってゆく」

はずだとか。高音楽器の位置づけであり、メロディ楽器であるにもかかわらず、実際に奇麗に響く音域は意外と狭く一オクターブ強しかないらしい。こういうことから

鷹揚さや余裕を奪い、常に緊迫したぎりぎりの場所で生きているかのような、切羽つまった雰囲気をあたえる

のだとか。低音域は独特の雑音を伴い、からみのある音色になる。オーボエは、演奏の難しい楽器としてギネスブックに載っていたそうだ。全て楽器の構造のせいで、発音、ダイナミクス、音程、運指のどれにも多くの障害があるという。

オーボエは管楽器だが意外と息は使わない。なので体内に余分な空気が溜まる。2枚のリードを使うために調整が難しく、些細なことで大失敗への道が開けることになる。そういうことから


「大失敗を繰り返すうちには・・・神経質な人間とならざるをえない」

楽器の構造上運指は不合理、しかも不自然に指の間隔をあける箇所があることから、テクニカル面よりメロディ表現をより求める傾向にあるらしい。このように、表現したいが演奏するには困難が伴うことからジレンマが生まれ、それは強いストレスとなる、と。その結果、

環境の変化に敏感で怒りっぽく、細かいことに病的なまでにうるさい性格

になりやすいんだそうだ。じゃあ何でオーボエ吹いてるの?という話になる。オーボエという楽器は、ブラスバンドの中では目立たない存在らしいが、これがオケになるといきなり花形楽器に変身する。つまり、やりがいがあるということ。

やりがいがある、ということはその分失敗するとダメージは計り知れないものがある、ということである。オケでの役割はバイオリンとほぼ同じだが、団体VS個人という大きな違いがある。なのでストレス度は比較にならない。そういう要素が


奏者の性格に反映し、躁鬱的な気分のムラを奏者にもたらす

のだとか。最後に茂木氏はこう述べている。

「メロディばかりを演奏し、つねに主役であるという状態は、社会人としては『自分中心のひとりよがり』という側面を生むことも忘れてはいけない」

と。因に、茂木氏はこのオーボエ奏者である。本人が言っているので、間違いはないだろう。

大学生だった頃、どこかのヨーグルトのCMにオーボエの素敵な曲が使われていた。オーボエに縁もゆかりもなかった私、後輩のオーボエ君に訊いてみた。

奏者にとってはかなり有名な曲らしく、すぐに教えてくれた。私はお礼として、彼にこの曲を吹くことを
強要しお願いした(←お礼って何?)。

とても奇麗な曲だった( ̄ー ̄)。今でも忘れない、そして大好きな曲の一つ、アルビノーニのオーボエ協奏曲第9番ニ短調の2楽章、アダージォ(adagio) をお聴きください。