ふーシクロクロスのブログ

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哲学を勉強して夢を見ながらフランス文学と自転車。

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大学の授業終わって試験がたくさん行われる時期、そしてやっと暖かくなって気持ちも高まってきた4月9日、「北の地獄 Enfer du nord」と称されるパリ〜ルーベ Paris-Roubaix 2017を現地で観戦してきました。

 

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一か月前にダーさん(仮名)からメッセンジャーでレース観戦のお誘いを受け、当日もレンタカーで300㎞程の旅に連れて行っていただいたことに感謝いたします!

 

自分としてはレースを走っている本気の世界チャンピオン、ピーター・サガンが見たいという気持ちでいっぱいで、ワクワクしながらスタート地点のコンピエーニュ Compiègneに向かいました。

 

パリの北駅 Gare du nord (北の地獄への入り口か?)から約一時間でコンピエーニュに着きます。

パリルーベは何といっても最高峰のレース! だからスタート地点に向かう観光客で駅はあふれかえっているのだろうか、と思っていました。


けれど電車はガラガラ、駅にはポスターやちょうちんも何もなく、ホントに今日レースがあるのだろうか?と思ってしまうほど日常通りな町の雰囲気でした。

 

コンピエーニュ駅にたどり着くと、前日入りしていたダーさんが待っていて、お迎えしていただきました。

周りではフランス人がハグしたりキスし合って熱烈に再会を喜びあっています。


そんな中、我々は日本人らしく、照れくさい感じの曖昧な挨拶をします。

さあ、車に乗り込んでスタート地点に向かいます。

 

 

自転車レースはフランスに根強い人気があります。というより、日本の野球文化のように人々に染みついているといったほうがいいかもしれません。


ある時は自転車がパンクして道端で修理していたところ、通りすがりの自称自転車歴50年のおじいさんが修理のアドバイスをしてくれたり、

スタート地点近くで自転車パーツの会社カンパニョーロで働いてるおじいさんが「もう年だけど昔は自転車レースでバリバリ走ってた」と話しかけてきたりしました。


50年! フランスには自転車名人がゴロゴロいるようです。

 

「ロードレースの人気は映像技術に支えられている」と言ったのはパリに住む師匠ローランおじいちゃんです。


「昔、とあるロードレースを見に行ったが、集団が一瞬で通り過ぎて行ってしまい、なんだかがっかりしてしまった」


「ロードレースを現地で見に行っても残念なことになるだろう。自転車レースはテレビやラジオのおかげで観客やファンを楽しませることができるからだ」


今年で115回目のパリルーベも、第一回大会は1896年。映画が初めて作られたのと同じ頃に始まっています。

自転車の歴史が、映像技術や通信技術とともに歩んできているというのは偶然なのでしょうか。

 

ともかく、「この目でレースを見なければ!」という一心でパリルーベのスタート地点に向かいます。


そこでは、城の前に大きな舞台や関係者が集まるホールが設置され、チームのバスもすでに何台か到着していました。


石畳対策でブロックタイヤを履いたマヴィックのサポートバイクも揃い、いよいよレースが始まるといった雰囲気です。


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レースが始まる2時間くらい前にスタートのすぐ脇のところを場所取りし、待機します。


開会式のような映像が流れた後、いよいよ選手が登場し、一人ずつ出走サインをしていきます。


目的はペーター・サガンを見ること、そして写真に収めること! ですがなかなか出てきません。

早くサインを終えた選手がどんどんスタートラインに並びます。


すると、今大会で引退するトム・ボーネン選手が登場(数年前、自転車競技部員だった頃に「ボーネン会」とか言っていたのが懐かしい)。


この後、待望のペーター・サガンが登場、変なサイン(?)を書いて、マイクに向かって巻き舌の訛った「ボンジューる」と言い、インタビューを少し受けていました。


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スタートラインのほうではボーネンが先頭に並び、ギリギリまで剃り込まれたスキンヘッドで、引退していく彼の気合いを窺い知ることができました。

 

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見てる側も大変で、カンパニョーロ関連で仕事をしていたというおじいさんと場所取り合戦。

彼のフィジカルは劣っておらず、見事に先頭に顔を出したのです。


先頭はダーさんに任せ、自分は後方から何とかピーター・サガンを映像で撮ろうと構えていましたが見つからず...。 目的のサガンはよく見えませんでしたが、いよいよレースがスタート!



スタートが終わるとすぐにその場にいた観客は散っていき、地元住民は帰宅してテレビでも見に行ったようです。

 

少しだけローランおじいちゃんの言葉が頭をよぎります。「がっかりするかもしれない」。あっという間に行ってしまった...。

 

ところで、なぜピーター・サガンにこだわるかというと、彼にはロードバイクの限界を超えるようなものを持っているという期待があるからです。


強さ、たくましさが自転車競技において一番大事かと思っていたら、彼にはエンターテインメント性があるのです。

ロードバイクで、まさかそんな動きを!?ということをしてしまうのがピーター・サガンであると。


数年前、宇都宮のロードレースを見に行ったとき、サガンが来日していました。

そのレース後、宿に帰るサガンが縁石をバニーホップで飛び越えていくところを見た時から、彼はなにかすごいものを持っているのではないかと思うようになったのです。


自転車は機材が重要であり、その性能や美に惚れ込んでしまうほどである。

機材スポーツである。


そういう意識を吹き飛ばしてしまうのがピーター・サガンの肉体的なセンスではないでしょうか。

 

ロードレースはいつもドーピングばっかりだと、とあるフランス人の友人は言っていました。

ロードレーサーの肉体というのは、偽りであるのではないか。


そういう疑いによって、多くのドーピング事件によって肉体性は神聖さを失い、

その代わりに機材へと希望のまなざしが向けられる。

 

そんな中、機材への関心を吹き飛ばしてしまうような存在が現れた。

これはもしかすると、ロードレーサーという肉体的なものへの回帰のきっかけになるのではないか?


そういった思想めいた期待があるからこそ、それを再び証明してもらい、実感したかったのです。

 

 

車に戻って100㎞ほど先にある石畳の観戦ポイントに向かいます。


途中でカーラジオでレースの中継がされていないか探してみるが見つからず。

英語のテキストライブを見つけてそれで少しだけ状況を確認。

ここは準備不足で、レースの状況を全然追うことができていませんでした...。

 

高速道路を走っていると、たくさんのチームバスやチームのサポートカーに遭遇します。


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(既視感あるカラーリング)

レースはそこから離れたところで行われていましたが、裏ではこうしてたくさんのスタッフが働いていて、かなり大掛かりにレースをしているんだと気付かされます。

 

最初に集団が走る石畳区間を目指していると、観戦ツアーらしきバスも同じ方向を目指していました。

テキストライブを見ると時間が間に合うかどうか...。


ポイントに近づいていくと違う方向からチームのサポートカーが大急ぎで車やバスを追い越してコースへ向かっていくのが見えました。


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石畳区間のところに到着すると、もう観客たちは退散していくところでした。

すでに集団や関係車両が通り過ぎ、石畳を歩いて車に戻っていく観客しかいません。

念のため選手たちが通り過ぎてしまったか尋ねると、「そうだ」と。

間に合わなかった。


想像以上に集団は速く行ってしまったようです。

 

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さあどうするか、別のポイントへ向かおう、前にいた車も同じ境遇だったのか、勢いよく左に曲がって走り去って行きました。追いかけるしかない!

そのまえにはどこかのチームカーもいます。付いていこう!


すると到着したのは少し離れた別の場所。たくさん車が駐車していて、そろそろ集団が来そうだという雰囲気です。

すぐに駐車し、熱くなった日差しで上着を脱ぎながら走ってコースのほうへ。


そこでは地元の音楽サークルの人たちが自作の打楽器のようなものを演奏し、顔を真っ赤にした(たぶんお酒で)おじさんたちがいました。

間に合った!


そこは少し上り基調の石畳で、何人かチームのサポート員が待機しています。

少し離れたところにレーサーの影とヘリコプターが見え、いよいよ来るという雰囲気が漂います。

良いタイミングで到着できた!

 

先導車が通り、前に飛び出てる2人が通過、

そのあとを集団が通っていく。

かなりの砂煙があたりを舞い、見てるだけで口の中に砂が入ってきました。

選手たちの顔はもう砂だらけになっています。


晴れだと砂だらけ、雨なら泥だらけでどちらにしても地獄なのだということが垣間見えました。

 

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ピーター・サガンは前方に発見!

ボーネンはサガンの後ろに!

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後続の選手もまだまだ続きます。

落者があったようで、ジャージが破けた選手もちらほらと。

 

それにしても、石畳区間を見れてよかった。

レースがそこで行われているんだという実感と、間に合うか間に合わないか、時間が迫ってくる緊張感で見ているほうもレースを追体験しているかのようでした。

 

この後はもうゴール地点に向かおうということに決め、再び高速道路で移動します。

道路からはレースを先導するキャラバン隊が近くの道を走っているのが見えたり、サポートカーがやはり大急ぎでルーベに向かっていくのが見えます。

 

ルーベに着いてやっと一息。

あとは待つだけだということでゆっくり歩きながら観戦ポイントを探します。


最後の石畳のストレートを通ってヴェロドロームに行くと、スタンドには溢れるほどの観客!


どうにかして選手が見える場所でを探そうとしていると、物置の屋根に座ったり、窓のふちによじ登って座っている少年たちがいました。

結局見つけたのは端っこのフェンス沿いの縁石。

何とかバックストレートと大型スクリーンが見える場所。

 

残り10㎞くらいの映像が流れていて、ボーネンが登場したり、スティバルがアタックするたびに観客は大いに沸きます。


ここにはボーネンのファン、多くのベルギー人が集まっているのです。

ベルギーの国境に近いフランスの町なのでアクセスも良いのでしょう。

フランドルの旗がいたるところで見られました。

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レースは3人が最後の直線に来て、この中から優勝が決まるだろうと思われました。

先頭グループがヴェロドロームに入ってくるとボルテージは最高潮!

トラック競技のスプリントのように牽制が始まります。


スティバルが外側からスプリントのタイミングを狙っています。

すると後ろから2人グループが接近!

なんと追いついて、5人でのスプリントに!

自分たちが見ていたところからは直接見ることができませんでしたが、スクリーンで一部始終を観戦、

青いジャージ、クイックステップのスティバルが先行していたところを、赤のジャージ、BMCのグレッグ・ヴァンアーベルマートが捲ってゴール!


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続いて後続の大集団が、30人くらいか?と思うくらいの大人数で、ヴェロドロームに入ってきてつ再びスプリント開始!

見ている側からすると人数が多すぎて危ないと思うくらいヒヤヒヤしたスプリントでした。

 

すぐに最後のセレモニーがスタジアム中央の広場で始まり、観客たちも選手の近くへ移動していく。

自分たちはまだまだ帰ってくる選手たちを近くで見ようと、人がはけてきたスタンドのすぐ近くに寄っていきます。

 

いや~終わったねと、余韻に浸りながら、スタジアムに捨てられていたボーネンのお面を拾ったりしながら車のほうに戻っていきました。

 

ヴェロドロームの横には小さな売店みたいなのがあって、ジャージなんかも売ってました。

 

そういうのも見ながら名残惜しそうに道を歩いていると、止まっているバスの近くで人々が騒いでいます。


急いで行ってみると、そこでボーネンがインタビューを受けていました。

さらにその周りをファンが囲い、ベルギー人らしき何人かが「トムありがとう~」みたいな歌を歌ったり、横断幕のようなものを広げたりして、最後までお祭り騒ぎでした。

 

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トム・ボーネンはとにかく今回のレースの主人公だったなぁという印象が強いです。

彼がいかにベルギー人の自転車ファンに愛されていたかもよくわかりました。


レース前には、「引退レースだから、周りが空気を読んでボーネンを勝たせてあげるのかな」というようになんとなく考えていましたが、想像以上にガチンコレース。

勝てませんでしたが、それでもボーネンの存在感が溢れるようなレースだったので、彼の偉大さを感じたりしました。

 

 

ただ、何かを忘れているなと。

ピーター・サガン!

彼は中盤活躍したものの、パンクに苦しみ、思ったような結果にはなりませんでした。

その前のレースでも観客の服に引っかかって落車したり、運がないような印象。

抱いていた期待を超えるような、サガンのパフォーマンスや存在感を見たかったのですが、少し残念でした。

 

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特に、機材トラブルのパンクによって戦線離脱したのは象徴的な意味を持つものになりました。


「ロードレースは機材ではなく肉体が大事で、サガンはそれを乗り越える」という期待を見事に機材によって打ち砕かれてしまった。

 

ルーベを後にする前にもう少し欲張って散策しようと思ったので、チームバスが並ぶあたりを歩き回りました。

するとサガンのチームのトラックを発見。

そこでは石畳の砂ぼこりで汚れた自転車を洗ったり片づけたりと、最後まで慌ただしい作業中の光景を見ることができました。

サガンのバイクを撮影してみたり。

 

もう少し奥のほうに行くと、選手が乗るチームバスが!

そっちのほうに行くと、ちょうど着替えて別の車に乗り込んで帰ろうとしているサガンが出てきました。

そこに集まるファンたちでちょっとした騒ぎに。


映画俳優に群がる人々のようにワイワイ盛り上がるファンとは対照的に、サガンは少し暗い表情な感じ。

それでもときどき茶目っ気を利かせたり、サインに対応したりしているようでした。

 

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結果的に思ったことは、ロードレースは機材か肉体、どちらかが大事なのではないということ。


さらに、レースの地域一帯をたくさんの車で駆け回るチームのスタッフたち、

レースを追いかけて映像をとるバイクやヘリコプター、

さらにそれを追いかける観客、

レースを見るのを毎年待っているファンの地元住民、

ゴールに設置された大型スクリーンや、テレビやストリーミング、ラジオ、テキストライブで観戦する観客たち。


選手たちにとどまらず、関係者、そして観客たちをまるごと巻き込んでレースが成り立っているのであると。

 

今回のパリルーベは、なるべくして、トム・ボーネンがスターとして輝いているのです。

ピーター・サガンは今回のレースでは主役ではなかったのでしょう。

 

「もっとも公正な判断をするのは毎年見ている多くの観客たちである」とローランおじいちゃんはロードレース文化における大事な存在、「観客」を一種の自転車のプロとして評価しているのでした。


フランスのレースだけれどベルギー人を熱狂させ、さらにテレビやストリーミングで日本でも多くのファンが熱くなったこのパリ~ルーベ2017。


スタートからゴールまで追いかけて見えてきたのは本場のロードレースの丸ごと全部、人々の熱狂、そして自転車の大きな歴史と文化でした。


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