オーストラリアを自転車で旅する少し前、

偶然にもオーストラリアを旅して来て帰国したばかりという20代の若者と話す機会があった。

こちらも出発を控えていたので、自然と話が盛り上がった。


旅の話をしているうちに、昔の自分の体験も思い出してきて、つい話してしまった。

悪い癖だ

年を取ると、こうして昔話がつい口をついて出る。


「俺が20代の頃さ、宿の予約もせずにオーストラリアに入っちゃってさ。しかもフィリピン経由でね。英語もほとんど話せなかったし、空港を出て“さて、どうしようか”って思ったよ。」


彼は特に驚くでもなく、ニコニコと聞いていた。

どうやら彼もわりと無茶な旅をしていたらしい。


でも、思いがけないところで目を丸くした。


「それでね、カバンからガイドブック取り出して、地図見ながら安宿を探したんだよ。」


「えっ、ガイドブックですか? スマホないのはヤバいっすね。」


ああ、そうか。そこか。


宿も決めずに現地入りした無計画さじゃなく、

**情報を得る手段が“スマホじゃなかった”**ということに驚いたんだ。


思わず笑ってしまったけど、なるほど、時代は変わったんだなと実感した。


さらに彼は、オーストラリアに着いてから最初の1週間、ずっと野宿だったという。


「えっ、野宿⁉」


今度はこっちが驚いたが、彼はさらっとこう返してきた。


「野宿できるポイント、スマホでわかるんですよ。」


便利な時代になったものだ。




そしてその後、予定通り、オーストラリアへ旅立った。

自転車で、そしてスマホを片手に。


道も、宿も、天気も、食事も、すべてスマホで調べながら進む。

かつての旅とはまったく違ったけれど、

とても快適で、ものすごく便利だった。


もう少しくらい不便でも…なんて思ってみるけど、

いざ体験してしまうと、もう昔には戻れない気もする。


便利に慣れた中年は、もうガイドブックをめくれない――

…いや、たぶん老眼で小さい字が読めないだけなんだけど。

最近なんて、紙の本を読んでて字が小さいと、ついピンチアウトしようとしちゃうしね。