桜と共に彼が去り、一週間が過ぎた。
一人佇む休日の我家は驚く程静かだ。
微かに残る彼の匂いも消え行くのか。

彼には教えられて感動した事がある。
ただ必死に生きようとしていた事だ。
死の前日でさえもトイレに向かった。

何とか喉を通る食べ物を探していた。
大好きな家内と娘を待ち続けていた。
死の直前でも四肢に力を入れ立った。

彼はいつも通り生活したかったのだ。
大好きな家族と、大好きな家の中で。
大好きな散歩行き一杯食べたかった。

我々は時に無力感に襲われたりする。
一体自分は何の為に生きているのか。
でも生き抜く姿が他人に力を与える。

そんなことを彼から教えられたのだ。
もう心配して振り返る必要はないよ。
いつかまた巡り会って、思い出そう。