「福島を切り捨ててはならない 」 | いわき市民のブログ I am An Iwaki Citizen.

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「真実を知らない者は愚か者でしかない。
だが、真実を知っているにもかかわらず、それを嘘という奴、
そういう奴は犯罪者だ」

ベルトルト・ビレヒト: ガリレイの生涯、第13幕

第8回定期総会講演 「福島を切り捨ててはならない 」    山田 真(小児科医)
http://qc.sanpal.co.jp/info/1520/


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福島の子どもたちの現状

福島の現状は、被害を訴えているにもかかわらず、見捨てられようとしていることが明らかになってきた、ということだ。私は昨年6月にはじめて福島に行き、その後10回くらい行った。福島の子どもたちの健康相談会をやっているが、実際には子どもたちのからだに大きな変化は今のところは起きていない。だが今起きていないというのが実は怖いことで、10年、20年たって起きても何の補償も出ない可能性がある。広島よりもひどい状態が起きるのではないか、相談会でも親御さんはそれを心配している。多いときは10人くらいの医者が集まって相談会を担当するが、1人1時間くらいひたすら聞く。そして、私たち医者ができることは多くない。大丈夫だと言うわけにもいかないし、こんなふうに危険だとも言えない。一緒に続けて闘おう、子ども達をきちっと見続けようとしか言えない。最初のころは「避難しようかどうか」という相談が主だった。そして、避難できる人たちは福島を離れた。自主避難する人を非難する人がいるが、それはおかしい。避難する人たちは基本的に正しい。

ところでぼくの自宅へ昨日までモンゴルの人たち五人ほど来客があった。モンゴルの人達が日本に観光でやってくるのは危険かと聞かれて私は答えることができなかった。どうしても返事をしろ、東京は安全かと聞かれたら、「小さい子はこないほうがいい」としか言えない。



福島現地で起きている分断

福島では最初のころも分断が起きていた。大きな事故が起きるとさまざまな差別が起きる。福島は3つの地域に分かれている。原発のある浜通り、福島から郡山へ向かう中通り、そして会津という地域。原発があれば豊かになるよと宣伝して、浜通りという貧しい所へ原発を持って行った。

浜通りは回復できない、と国は思っているだろう。会津は福島の中では東京並に線量が低い地域が多いのに福島とひとまとめにされて、農産物も売れず困っている。中通りは深刻な状態にあって、さまざまなところがある。福島市は完全に沈黙させられているが、郡山は闘いが組めている、いわきは復興を目ざしている、というふうにさまざまなのだ。

地域的な分断のほかに、いろいろな対立がある。避難していた人と残った人、家族の中でもお母さんは子どものために避難したいと思う、お父さんは仕事があるから避難できない、おじいちゃん・おばあちゃんは「たいしたことないと言われているから、ここに残っていても大丈夫だ」と言う。家の中でも意見が違い、家族のなかでも厳しい状況がある。私たちは「小さな子どもたちは避難したほうがいい」と言っている。

6月のころは相談会もなごやかな雰囲気だった。7月になって戒厳令になったという気がした。福島では放射能が不安だと言うとバッシングを受ける状態になっていた。とりわけ福島市が強くいろいろな規制をしている。外に出ている子どもに対して、「早く教室へ入ったほうがいい」「長袖のシャツを着ていたほうがいい」くらいの注意をした教師に育委員会から指導が入る。それで、何人かの学校の先生が辞めている。



医師会は放射能を無視

福島市の医師会は全員「放射能は心配ない」と口裏を合わせることになっている。最近は子どもを連れたお母さんが受診して、放射能と一言いうと横を向き診てくれないという状態になっている。山下俊一教授という悪名高いピエロがいるが、実は悪の中枢ではない。前面に出てきて非難されても英雄気取りになっている山下みたいのはどこにでもいる。亡くなった重松逸浩とか長崎大の長滝重信とかもっと悪い人がいる。昨年9月に福島で国際会議が開かれ「もう福島は収束した。将来も健康被害はない」と宣言されてしまったが、主催したのは日本財団だった。福島では健康被害なしとするため山下などが動いている。

福島の個人病院で健康診断をしようとしたら、福島市からストップがかかり、「山下さんと相談してからやれ」と言われた。山下としては自分たち以外の健康診断はやらせない。勝手にやった健康診断で被害はなし、将来も大丈夫と言ってしまう。他のところでやるとそういう結果は出ないわけだから、自分たちの健康診断のおかしさが暴露されてしまうから止めている。それで、福島の医者は動きがとれない。

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