昔々、ある処に竹取の翁という者がいました。

翁は近所に植生している竹を取る傍ら、ゲーム配信をして日々収益を得ていました。

ですが、翁の配信環境はお世辞にも良いとは言えず、配信中にゲーム画面が固まってしまうこともしばしば。

配信業3年目の翁は通信機器に問題があると考え、最新のWi-Fiを購入しましたが、依然ゲームはカクカクのまま。

それもそのはず。何しろ翁が使用しているのはwindows5、配信出来ていることが奇跡のような状態だったのです。



数日後、内緒でWi-Fiを買ったことがお婆さんにバレ、windowsを没収されてしまった翁は、ほとぼりが冷めるまで本業の竹取りに注力することにしました。

すると、竹やぶの中に異様に太く、頑丈な、そして色鮮やかに光る一本の竹を見つけます。

それはさながら陽を浴びたエチオピアンオパール、或いは北欧に揺らめくオーロラのように。

年老いたとはいえ翁もやはり男児。好奇心には勝てるはずもなく、翁は手製の電ノコを振るいます。

苦闘の末、翁は竹を伐ることに成功しました。

すると、中から出てきたのはゲーミングPC。光の正体はグラフィックボードだったのです。


 

帰宅後、翁は早速新しいPCで配信を開始。タイトルは「竹やぶでPC拾いました。どうぞ良しなに。」

嘘のようなタイトルに惹かれ、普段よりも多くの人が翁の配信に訪れています。

その証拠にいつも翁の配信に現れ、チャット欄を荒らしていくアンチのコメントが今日は多くの「初見です」コメントによって流されていきます。

 

しかし、喜ぶのも束の間。

 

これまではカクカクの画面というヴェールで隠されていた翁のプレイスキルが配信を見ている全ての視聴者の画面に赤裸々に映し出されます。

何を隠そう、翁はゲームがそれほど上手いわけではありません。相対評価だと下の中といったことろです。

加えて、翁がプレイしていたゲームのジャンルはFPS。彼のイマイチなプレイを見兼ねた視聴者により、チャット欄はどんどんヒートアップ。先程までの安穏な配信は見る影もありません。

ですが、彼らの声が翁に届くことは決してありません。

翁は配信業を開始して間もない頃、誤って視聴者のコメントを非表示にする設定をしており、以降、彼は視聴者からのレスポンスが全く無い状態で配信を行ってきたのです。

 

 

1日当たりの平均配信時間が20分程の翁ですが、新しいPCを手に入れて興が乗った様子。配信が4時間を超えた頃、翁の中で高まりつつあったある疑念が確信に至りました。

自身のゲームセンスの低さ、その自覚です。

4時間のプレイを経て翁が得たのは、ゲームの基本ルールと100回に上る敗北の経験。

極めて温厚な性格で人生で怒ったことが殆ど無い翁ですが、流石にこの状況には口元が歪みます。

 


 穏やか系配信者の路線をズラしたくない翁は、気分転換と配信の画を変える目的で、それまでの近距離武器から一転、遠距離武器にチャレンジすることにしました。

策を弄さず、正々堂々戦うことを望む翁からすると、遠距離武器は自身のスタンスと相容れないものでした。

ところがどうしたことか。意外にも手に馴染むではありませんか。それどころか、これまでの苦戦が嘘かのように敵をキルできるようになりました。

敵の射程外から一方的に攻撃を浴びせられるこの状況において、翁はこれまでの平凡な人生では決して感じることの出来なかったある感情を得ていました。


彼は「愉悦」を味わっていたのです。


虐げられる者から蹂躙する者へ。

御年80歳にして、スナイパーとして覚醒。

穏やか路線を突き進むには既に彼は堕ちすぎていました。




逃げ惑う敵に向けて躊躇無く銃口を向ける姿から、いつしか彼はこう呼ばれていました。

「ロングレンジの翁」と。