チャッピーたちは運動場で体育の授業を受けている。太陽に向かって大きく飛ぶんだと先生。3年5組の窓からひとり、少年が覗いていた。あだ名はもやし。本当の名前は一郎という。体の弱い一郎は、体育の授業をいつも見学している。彼はみんなから気味悪がられていた。クマトラーから、大事そうに持っている箱の中を見せろと言われる一郎。箱の中には骨、虫の死骸、トカゲなどが入っている。悲鳴をあげるクラスメイトたち。

下校中、クマトラーたちにからかわれている一郎をチャッピーは助けた。一郎は魔法使いになりたい。そのため今夜、魔力を身につける実験をすると得意気に語る。その言葉に危機感を感じたチャッピー。チャッピーは一郎を家まで送るとそこには一郎の母が待っていた。いつまで遊んでいるの、勉強をしなさいと一郎を叱る。一郎の母は子供に外で遊ばせない、いわゆる教育ママだった。

太陽の光も浴びさせないで、子供を閉じ込めて勉強をさせるなんてとんでもない。あれじゃ、ああなるのも仕方がないとチャッピー。チャッピーは魔法の本を読む。一郎の実験は悪魔を呼び寄せる危険な魔法だった。

チャッピーはパパにどうしたらいいかと相談する。「魔力を身につけようとした人間は悪魔に取りつかれてしまう。取りつかれた人間は悪魔に魂を抜き取られてしまうのだ。魔力だっておまえより強い。ただひとつ、弱点があるとするなら、太陽の光を当てること。溶けて永久にお陀仏だ。」と、パパ。

一郎の家では予告通り、実験を行う一郎の姿が。チャッピーは庭に忍び込み、終始を伺う。薬品を飲んだ一郎。顔は青ざめ、その影は悪魔さながらとなった。驚くチャッピー。

翌日から、一郎は学校に来なくなった。病気だという理由で欠席したらしい。みち子は、チャッピーにいっしょにお見舞いに着いてきてと頼んだ。嫌々ながら、当番に当たってしまったそうだ。ひとりだと気味が悪いというみち子。ジュンにひき止められるが、みっちゃんひとり、行かせるわけにいかないとチャッピーもついていく。

チャッピーとみち子が一郎宅に行くと、ベッドに一郎がいた。なにか酷くやせこけているようだ。その手の爪が異様に長いことに気づくチャッピー。一郎は手を隠す。一郎のママが来た。食欲はあるが、好き嫌いが激しく、我が儘になったという。二人はお見舞いを済ませ帰ることに。ところが、みち子が部屋に忘れ物をしたので取りに戻ってしまう。みち子が部屋に入ると、黒い影が伸びた。一郎の目は爛々と輝き、顔は悪魔になっていたのだ。


玄関で叫び声を聞いたチャッピー。チャッピーがもう一度、部屋に駆け込むとみち子がいない。一郎はみち子は先に帰ったという。そっちのドアから帰ったのだという。廊下には私がいたからわかるはず、と、チャッピーは一郎を問い詰める。一郎にこっちを向けと。一郎はなぜか顔を見せない。騒ぎを聞きつけ一郎の母が来た。一郎は具合が悪いのよと叱られるチャッピー。チャッピーが荒井クリーニングに行くと、まだみち子は帰っていない。ますます不審に思うチャッピー。そこへ、少年の影と黒猫の大群が。黒猫の大群は酔っ払いに絡み付き、ズタボロにしてしまう。チャッピーは少年と黒猫の後を追う。入ったのは一郎の家だった。やはり一郎は悪魔に取りつかれていると確信するチャッピー。みち子を助けるため物置に侵入する。物置には悪魔の絵が置かれていた。その袂にはみち子が。驚くチャッピー。周りを黒猫の大群が囲んでいた。チャッピーは黒猫を払いのけ、絵の中に入っていく。チャッピーの前に、悪魔の城がそびえ立つ。チャッピーは魔法で城に潜入すると、悪魔が玉座に座っており、その周りを手下の黒猫が取り囲んでいる。一郎は悪魔に完全に取りつかれてしまったのか?

チャッピーが城内を探すとみち子が鎖に囚われていた。拘束を外すチャッピー。みち子とチャッピーが逃げようとするが、またしても黒猫に囲まれる。二人はトラップに落ちた。そこは骨だらけ。おびえるみち子とチャッピーの前に、あの黒い影が迫る。みち子は気絶。チャッピーは魔法を浴びせる。「やるじゃないか小娘め」と、悪魔がその実体を露にした。その姿には、どこにも一郎の面影がない。チャッピーが必死で魔法をかける。だが、悪魔にはチャッピーの魔法がまったく効かない。「お前ごとき小娘の魔力が儂に敵うものか」と悪魔はチャッピーをジリジリと追い詰める。悪魔が攻撃しようとした瞬間、激しい光が射した。悪魔はもがき苦しみ消滅してしまった。ジュンとドンちゃんがチャッピーを迎えに来た。窓を開けたところ、偶然にも太陽光が当たったのだ。

一郎の顔色が、どんどん元通りになっていく。前よりもスッキリ目が覚めたという一郎。一郎の母親も回復を喜んだ。

3年5組の授業に一郎が戻ってきた。
体育の授業を元気に受ける一郎。

みんなも部屋に引きこもっていてはダメだ。太陽を浴びて思いっきり外で遊ぶんだと先生はいう。チャッピーもその言葉に納得するのだった。



チャッピー大ピンチ

ほのぼのストーリーが続いたところ、協力な敵が出現するのは9話以来か。いじめられっ子の一郎が魔太郎っぽい。魔力を欲し悪魔に取りつかれてしまうのは、人間が誰しも持つ、弱さがあるからこそだ。それにしても、悪魔の描写がデ●ルマンの妖獣似でリアルに怖い。

1972年9月11日放送

脚本 小川敬一
作画監督 永樹凡人
演出 田中清