こんにちは!
私は中高一貫の女子校でした。
私の小学校からは5人が受験して
全員が合格した程度の学校です。
その5人のうちのアベッチが
小学校で同じクラスだったので
中学に入学してからも
いろいろ気遣ってくれました。
アベッチは大人っぽくて
おしゃれで頭も良かったので
すぐにそういう子達と
グループを組んでつるんでいました。
私は子供じみていて
グズグズモジモジしていましたので
そういう子達とグループになりました。
アベッチのグループは成績が良くて
不良というかっこいいグループでした。
文化祭でバンドを組んで出演した時は
他校からも応援が来て
下級生とかが
キャーキャーという感じでした。
井上陽水の「傘がない」を
この時初めて聞いて大好きになりました。
中学3年の時ですかね。
中高一貫と言えどもやはり
入学試験は一応あります。
それなりに受験勉強などをしていて
どうしてか(今でも不思議)
アベッチにレポートを借りて
写させてもらいました。
ところが私は
10枚くらいのレポートの3枚目の
角をほんの少し折ってしまったのです。
アベッチが神経質なのは感じていたので
悪いことをしてしまったと思い
何度も何度も謝って返しました。
アベッチは
「いいよいいよ。気にしないで!」
と言ってくれました。
が……
その折ってしまった1枚のみでなく
10枚すべてを書き直している
アベッチを見ました。
悪気ではなくどうしても
書き直さなければいられないようでした。
一心不乱に美しい小さい字で
キッチリとまるでタイプライターで
打ったような几帳面さで
書かれていくレポートは異様でした。
私は恐縮したのと恐怖とで
それからアベッチに
何も借りませんでした。
後から聞いたことですが
アベッチは中学生になった頃から
実家を出て
近くのボロアパートでお祖母さんと
ふたり暮らしをしていたそうです。
お父さんの母親であるお祖母さんと
嫁さんであるお母さんがひどく仲が悪く
お祖母さんを追い出すのに
ひとりで放り出すわけにもいかず
アベッチを一緒に出したということです。
アベッチには弟がひとりいました。
商売屋でしたので世間体を
気にしたんだと思いますが
そんなことしますか?
嫁さんであるアベッチのお母さんを
憎み呪っているお祖母さんと
ふたりでご飯を食べふたりで寝る
四畳半1間の息詰まる家で
アベッチは少しずつ変わって
いったんだと思います。
そして高校を卒業する頃
寒い寒い雪の日に
お祖母さんはアパートのすぐ横の
ドブ川に飛び込んでしまいました。
アパートの部屋にいなかったお祖母さんを
探し回っていたアベッチが
雪の降るドブ川に浮いている
お祖母さんを見付けたそうです。
この頃はこの川には
ぷくぷくに膨らんだ猫や犬の死体が
毎日のように浮かんでいて
数年に1回くらいは「土左衛門」という
人間の死体も流れていました。
横浜の中心部の50年近く前のことです。
アベッチはその後
自宅に戻り家族と一緒に
暮らし始めたのですが
高校を卒業して就職して
半年で壊れてしまいました。
神経質でつっぱりの美人という
苛められる(仲間はずれ)要素は
ありましたがそんなことが
原因ではないような気がしました。
一番多感な時期に憎しみに狂った
お祖母さんとふたりきりの生活という
特異な体験がアベッチを
壊したんだと思います。
アベッチは夜になると悲鳴をあげ
お祖母さんが川から
這い上がって来るのだと言って
怯えるのだそうです。
他の誰にも見えなくても
アベッチには見えたのでしょう。
ところが
近隣でザワザワと噂がたち始めました。
川岸から這い上がって来て
そのままアベッチの家を見据えて
這っていくお祖母さんを見たと言って
大変な騒ぎになりました。
続く
「千祓の祈願 二百十四回」
とほかみ えみため
はらいたまえ きよめたまえ
野獣さんの「芯」に力がついて勝てますことを
体も心も勝てますことを祈願致します。
野獣さんは勝つ!!!!!


