こんにちは!





占いを始めて間もない頃に
いらっしゃったお客さんです。
彼氏が自殺してしまって
ついていかなくては
いけないんじゃないかと
追い詰められている地味な女性でした。
30代なかばで出来るだけ
早くやり直して欲しいと思いました。






まぁいろいろ時間はかかりましたが
彼氏のためにも彼氏を思い切らなければ
いけないよと新たな道を示しました。
泣いて泣いて大変だったのを
何とか笑顔で送り出すことが出来ました。






彼女にはひとつ宿題を出しました。






彼氏だけの写真を整理することです。
見たくないと言って
しまいこんでしまうのは良くありません。
その場合は誰かに預けた方が良いです。
出来れば処分した方が良いけど
いろいろ気持ちの問題もあるので
納得できるまで誰かに預けるという
方法もあるのです。













写真の整理はしたものの
今度は怖くて仕方ないと言います。
お得意さんの紹介で来た人だったし
ちょっと興味もあったので
「私がお祓いしてあげるから送っていいよ。」
と受け取ることにしました。






もちろん彼女は大喜びで
郵送して来ました。


















まった····







届いた封筒を見て総毛立ちました。
これは思っていたより
ずうっとヤバイ。
神社にお祓いを頼むようにした方が
良かったんじゃないかと後悔しました。






これでもかというほど
お守りを身に付け封を切りました。
写真自体はそれほどヤバくなかったです。
拍子抜けしました。
お守りをいっぱいつけたことも
滑稽で恥ずかしかったです。
こそこそと外します。
ひとりなんですけどね。
それでも恥ずかしいんですよ(T-T)。





一通り写真のチェックをして
さすがに家に置いておくのは嫌だったので
その日の深夜に
家の近くの川に流しに行きました。
けっこうこの時が緊張するんです。
私は本職で霊媒をやっているわけではないので
通りかかった人がみれば
怪しいことをしている怪しい人
ということになってしまいます。






キョロキョロと誰もいないのを
伺っている様も怪しい人です。
なるべくサッサと済ませたいのですが
かなりの写真の束で
1枚ずつ祓っていると時間がかかるのです。
だからといって祓わずに
流す度胸はありません。
受け取ってしまえば私の厄です。






焦ってはいるけど
急げないという困った状況でした。
案の定
見物人がやって来ました。
この辺りは下町で野次馬が多いのです。
背格好からいって
山下さんの旦那さんかなぁ?








ものすごく焦りました。
なんて言い訳しようと
頭の中でグルグル考えました。
(彼氏と別れたので思い出の
写真を捨ててます。)
というしかないなと覚悟しました。






見物人は少しずつ近付いて来て
斜め後で私の手元を覗き込んでます。
もうこれ以上続けるのはムリです。
今気付いたように勢い良く振り返ります。


「こんばんはー!
実は········!!」






誰もいません!





うそっ!





あまりにも驚いたので
一歩後ずさってしまいました。
目の端ではっきり見えていたのです。
どう言い訳しようかと考えるほど
しっかり人が立っていたのです。






やっぱり……





ヤバかったのです。






彼氏は写真に憑いて来て
封を開けた時に降りたのです。
私の後ろに潜みました。
ずっと私を後ろにいたのです。
私はそれに気付かず
お守りを外したので彼氏は
私に憑いたのだと思います。





呆然自失で動けないまま
人が立っていると思っていたところを
見ている私の斜め後に立っています。
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ
さっきと同じ斜め後です。






ヤバイ。
なめていた。
こんなことになるとは
思ってもいませんでした。
死ぬほど後悔しても
逃げられるわけじゃ
ありません。






どうなるのか全くわかりません。
ポンと押されたら川に落ちます。
彼が人を落とす力があるのか
ないのかもわかりません。
幽霊は透けていて通り抜けると
一般には言われていますが
それは証明されたことではないのです。






もし彼が何らかの力を持っていて
私を突き落としたら
何故落ちたか不明のままの変死体になります。
「足を滑らしたんだろう」
「何故夜中に?」
といろいろ言われるでしょうが
夜明けには憶測で落ちた理由を
付けられた死体になるでしょう。






しまったー!
彼氏にすれば自分の写真を
川に捨てている人間は
「敵」になるのでしょうか?
私は生前会ったこともありません。






彼氏は少しずつ少しずつ
近付いて来ているので
私の耳元の後に気配を感じます。
死んでいる掠れた息で

·······ど···う···し···て······

ひぃぃ
恐怖の絶頂です。
叫ぶことも出来ませんよ。







さて
占い師はとんでもなく孤独です。
難題を突きつけられても
誰にも相談できません。
ひとりで考えて
正解を出さなくてはならないのです。
そんな仕事を始めていたので
諦めるのも早かったです。
誰も助けてはくれない。
誰も助けてくれることはできない……





とほかみ~えみため~

祓い~たまえ~清め~たまえ~


とほかみ~えみため~

祓い~たまえ~清め~たまえ~


とほかみ~えみため~

祓い~たまえ~清め~たまえ~!







こういう場合に唱える呪文?は
祓祝詞か般若心経しか私は知りません。
それが私を助けてくれるかどうかも
正直言ってわかりません。
頭も全部揺れているので
深く考えられ無くて…
えっ震えているの…私?
今まだ生きている?





真っ白になった私は
いつからか太祝詞を唱えていました。
唱えながら機械的に
すべての写真を流し終えました。
彼氏は消えていました。
こういったことを幻覚とか幻聴とか
考えている人たちに体験して欲しいです。
体験している人が少ないから
理解してくれる人がほとんどいない。
だからコソコソとやるしかないのです。
コソコソと人助けをするしかないのです。





このお客さんはその後友達だった人と
付き合い始め新しい恋を育てています。
私のように普通に生きていたいと
思っていたらひっそりとさりげなく
「やってやろうか~?」
みたいにお祓いしていくしかないのです。
いまだに「霊媒師」と名乗りを
あげる覚悟はありません。





私のその後?
そりゃあしばらくの間
背後の注意を怠りませんでしたね。
ビクビクしていました。





悪い?














「千祓の祈願 百五十三回」

とほかみ  えみため
はらいたまえ  きよめたまえ


世の中には理解できないこと
証明されていないことがいっぱいあります。
神さまの存在もそうです。
証明されるとしてもずっと先の未来です。
私にもあなたにも間に合いません。
信じることが力になります。
私たちが良くなりますように
どうかよろしくお願い致します!