こんにちは!




私の子供の頃は
今時のように簡単に
ビデオ撮影をしたり鑑賞したり
出来ませんでした。





機械系の話は苦手なので
詳しい説明は出来ないのですが
撮るのも見るのも大変だったのです。
私達は「八ミリ」と呼んでました。
まだ珍しいものだったので
鑑賞する時は友人知人隣近所にも
声をかけて大勢で見ていました。












映像が映し出される幕を壁に吊るし
映し出す映写機があって
カタカタと音をたててフィルムを
回し取っていきます。
部屋を暗くして見ます。
小さな映画館のようですかね?
説明がド下手ですいません。












私が5~6才の頃のその夜の
鑑賞会は両親が所属していた
山岳会の人たちが集まっていました。
お兄ちゃんがいっぱい来て
遊んでくれるので
私は楽しくてはしゃいでました。





(昔のカンジキ?父の形見です。)





部屋の灯りが消されて
映写機がカタカタと回り始めました。
私はお兄さんの膝に寄りかかり
ワクワクして見ていました。
季節は覚えていませんが
フィルムの中は雪山でした。
どこもかしこも雪で
そのうえ吹雪いていました。











その景色の中で
全く動かないお兄さんを
お腹のところで半分に折っています。
前屈のような姿勢です。
そのおじさんをロープで縛って
背負子っていうんですかね?
それに乗せてまた縛ってます。





カタカタ  カタカタ





背負子はこんな感じです。
画像はお借りしました。





音声が入っていないフィルムなので
見ているおじさんが説明していました。
「滑落して死んでしまったんだ。」
その場に置いてきてしまうと
雪に埋もれてしまい春の雪解けまで
見付けられなくなってしまうので
無理しても連れて帰ってくるのだそうです。
何年も助け合ってきた仲間です。






カタカタ  カタカタ






映像は吹雪いている中を
一列になってロープで繋がって?
ノロノロと歩いている場面です。
5人だったか10人だったか
全然覚えていません。
真ん中辺の人が
縛ったお兄さんを背負っていて
その後ろの人が大きな荷物を
背負って歩いています。






☆☆☆














ああして進んでいると

吹雪でかき消されてしまって

仲間のたてる音は一切聞こえない。

ひとりで歩いている気になる。





すると

背中から聞こえてくるんだ。







····ああしっぱいしたなぁ·····






いや幻聴なんだ。

わかっているんだ。






·····あそこですべるとはね·····






先輩にも言われていたんだ。

決して返事をしてはいけないと。






·····おれはしんだのか······






返事をしてしまうと引っ張られる。

死体を背負ったまま

仲間を繋ぐ?ロープを放し

コースを外れて行方不明になる。

春になってふたりの遺体が見付かる。






·····あしがいたいなぁ·····






引っ張られたヤツは喋れないさ。

連れて逝かれてしまっている。






·····おれもうちにかえらないと······






背負ったヤツの前や後を

行ってた(?)者が

語り継いでいるんだ。

決して返事をしてはいけないと。







······おふくろがまっているんだ······







全部が白い雪山

何も見えない吹雪

ひとりきり

背中にぴったりと仏さん

仲間だった仏さん

何度も山に登ったなぁ……

登って下って何度も呑んだなぁ……

だんだんと

いろんなことがわからなくなる

何が本当のことなのか







·······おろしてくれ·······







「おい!

本当に生きているのか!

大丈夫なのか!」






後ろを行く男は吹雪の隙間から

切れ切れの声を聞く。

背負ったヤツが何か言っている。

おかしい。

どうしたんだ。







「生きている!

彼は生きているんだ!

よかったよ!

早く降ろしてあげよう!」







とうわごとのように言って

命綱のロープを外して吹雪の中へ

行ってしまう。






吹雪の中だと1メートル離れても

わからなくなってしまうそうです。







「連れて行かれちまった!」






ということになるそうです。
これも何か別の言い方をしていました。
覚えていません。






さて
私は2~3才の頃のことを
よく覚えていて克明に話して
気持ち悪いと言われた子供でしたが
さすがにおじさんの話を
ここまで覚えているわけはありません。
☆☆☆までは完全な実話です。
遺体のことを仏さんじゃなくて
違う言い方をしていましたが
思い出せませんでした。
☆☆☆以降は実話に基づいた
半創作話と思って下さい。







自分としてはカタカタという
フィルムの音とともに
おじさんの声も雪吹の音も
今でも克明に思い出せるのですが
耳元でビュウービュウーと……?







あれ








フイルムは音声なしだったような······










びゅうーびゅうー











オフクロがまってる···








おろしてくれ























同じく父の山の片見
なんて言う物か知りませんが
靴につける金具のヤツとピッケル?
形がおしゃれなので父にねだって
もらってインテリアにしていました。







「千祓の祈願 百三十七回」

とほかみ  えみため
はらいたまえ  きよめたまえ

光輝く神よ。
どうか潜む悪を引きずり出して
消滅させたまえ!