こんにちは!




けんちゃんというのは
18才で交通事故で亡くなった
近所の男の子です。




けんちゃんは免許取り立てでしたが
けんちゃんの車を運転していたのは
あまり親しくない友人でした。
けんちゃんは助手席に座っていて
若い男の子ばかり4人乗っていました。





4車線の直線道路で
急にハンドルを右に切り
電柱に激突してしまったのです。





ドライバーは咄嗟に
保身に走ったのでしょう。
電柱に激突したのは助手席で
潰れた状態でした。
あまりにも酷い状態なので
とても母親には見せられないと
周囲の人が策を練ったくらいです。





私もけんちゃんの母親と
顔を合わせることが辛くて
会わないように逃げ回っていました。
でも狭い町内でいつまでも
会わないでいられることは不可能です。
事故から一月くらい経った頃
路地でばったり会ってしまいました。





(この度は御愁傷様です。)とか

(お悔やみ申し上げます。)とか

言うべき言葉が頭の中をぐるぐる回り

実際にはごしょごしょと

わけわかんないことを呟いていただけです。





想像していたよりも
ずっとずっとやつれていて小さくなって
その姿を見ただけで胸が詰まって
号泣したい気分です。
けんちゃんの母親がなんて言っていたかも
耳に入って来ませんでした。





うちの次男がけんちゃんと同級で
親しかったので母親同士も
親しくお付きあいしていました。
1年も経っていなかったと
思いますがけんちゃんの母親が
娘に懇願したそうです。




「恐山に行きたい!」




どうしても行きたいと泣きました。



私「恐山?

なんでまた急に思ったんだろう?

と情報源の私の母親に聞きました。






なんでも夢の中で
けんちゃんの母親は真っ暗なところに
ぽつんと立っていたそうです。
すると暗闇の向こうから
白い幕のようなものが近付いて来ました。
すその方がヒラヒラしていました。
目を凝らして良く見ると
白い幕のようなものを
両手を広げて持っているのは
会いたい会いたい息子です。




「けんちゃん!

けんちゃん!」




母親は駆け寄りたいのに動けません。
だんだん近付いて来る
けんちゃんは真っ白のシーツを
両手で広げるように持っています。
さっき見えていた白い幕のようなものは
これだったのかと母親は気付きました。



「けんちゃん!あんた!

何か欲しいものはない?」





母親はここぞとばかりに話しかけます。
なんでもなんでもしてあげたい!
なんでもなんでもあげたい!
「けんちゃん!なんでも言って!」
けんちゃんはなにも答えず
表情は固まったままですが
持っているシーツを両側から
絞っていきます。




ぎゅ、ぎゅっと音がします。

ぎゅっぎゅっぎゅっ

だんだん絞ったタオルのように
細くなっていきます。

「けんちゃん、どうしたの?」

けんちゃんの表情が変わらないので
ますます母親は必死になります。
右手と左手で絞ったシーツの
端と端を持って
けんちゃんがじりじりと近付いて来ます。
そして母親の前に立ちました。



絞ったシーツを

そっと

母親の首に掛けました。

そして






「おまえも

死ねー!!」




と叫んで

両手を交差させ

シーツで母親の首を

締めたんだそうです。









母親は首を絞められた苦しさで
飛び起きました。
(はぁはぁ……けんちゃん…)
大切なけんちゃんが
私を呼んでいるのかと
愚かな母親は思いました。
それならけんちゃんのところに
行きたいと悲しい母親は願いました。
そしてけんちゃんが
何を言いたいのか
イタコに聞きたいと言い出したのです。



けんちゃんは3人兄弟の
末っ子なので相当わがままでした。
あの世に母親を呼びつけることくらい
やりそうな気もします。





今の私なら何かわかると思いますが
なにしろ20才の
ブイブイ言わせてた頃ですから
(死語ですね~)
こんなことに構ってる

ヒマなどありません。





結局翌年ですかね?
母親は念願の恐山に行って
イタコにけんちゃんの気持ちを
聞いてもらったのですが
思いが強かったぶん
期待外れだったらしく
気の毒なほど肩を落として
帰って来ました。





この話も「夢の話」と思って
油断して聞いていたので
異常に怖かったです。
ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィでした。






怖いよ けんちゃん!






恐山のイタコ
(写真はお借りしました。)







「千祓の祈願 百十一回」
とほかみ  えみため
はらいたまえ  きよめたまえ
輝く明日をあなたにも私にも
いただけますように祈願いたします。