「ブドウ界のエルメス」中国で価格急落 シャインマスカット栽培拡大で玉石混交

 

 

【北京・坂本信博】日本で開発された高級ブドウ「シャインマスカット」の価格が中国で急落している。

高級ブランド品になぞらえて「ブドウ界のエルメス」とも呼ばれ、500グラム300元(約6千円)ほどの高値で販売されてきたが、中国に流出した種苗の栽培が急速に拡大。価格が50分の1ほどの低品質商品も市場に出回り、中国で話題を呼んでいる。

 

 


【写真】スーパーで750グラム39・9元(約800円)で特売されていた中国産のシャインマスカット

 



シャインマスカットは、日本の国立研究開発法人、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発して2006年に品種登録した。16年ごろに海外に無断で持ち出され、中国で栽培面積が急拡大。日本の約1840ヘクタールに対し、中国は約5万3千ヘクタールと約30倍に達している。

中国での名称は「陽光〓瑰」。非常に甘く、種なしで皮ごと食べられるため、中国の富裕層の間で人気を集め、高値で取引されてきた。だが、最近は市場に大量の商品が出回るようになり、価格が急落。北京市内のスーパーでは750グラム39・9元(約800円)で特売され、青果市場やインターネット通販では500グラム5~10元(約100~200円)の安値が付いている。

高根の花だった高級ブドウの価格の急落ぶりを、複数の中国メディアが「祭壇から転落して、安価な品種と並ぶようになった」などと報道。交流サイト(SNS)では「以前よりおいしくなくなった」などと反響があった。北京の業界関係者は「接ぎ木で急速に栽培が広がったが、栽培方法は玉石混交。品質も価格も二極化している」と話す。

江蘇省鎮江市の農園を訪れると、約200ヘクタールの敷地でシャインマスカットや巨峰を栽培していた。男性職員は「16年に日本の山梨県から農業者を1度だけ招いて苗木と技術を伝授してもらった。最近では同じく日本が原産で、さらに価格が高いクイーンニーナの栽培にも挑戦している」と悪びれずに話した。

日本の農林水産省は今年5月、シャインマスカットの中国流出で年間100億円以上の損失が出ているとの試算を発表。品種開発者の代わりに専門家が知的財産権を管理・保護する機関の設立を検討している。

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