【独自】JAL、最後の国内線777-300離日 ワンワールドJA752Jが米国へ、500席機消える

 

2021年3月に退役した日本航空(JAL/JL、9201)の国内線機材ボーイング777-300型機のうち、最後まで日本に残っていた機体(登録記号JA752J)が8月30日深夜、羽田空港から米国の売却先へ向かった。

羽田空港で売却先への出発を待つJAL最後の777-300となったワンワールド塗装のJA752J=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 

—記事の概要—
最後は那覇線で活躍した2クラス500席
同規模の後継機なし?

 

最後は那覇線で活躍した2クラス500席

JALは24年前の1998年7月28日に、777-300の初号機(JA8941)を受領。国内線幹線用の大型機で、7機を導入した。同年8月8日に就航し、2021年3月末の退役時の座席数は2クラス500席(クラスJ 78席、普通席422席)だった。

羽田空港で売却先への出発を待つJAL最後の777-300となったワンワールド塗装のJA752J=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 

 

羽田発着の幹線である札幌(新千歳)、伊丹、福岡、那覇の各線や、伊丹-那覇線などの高需要路線に投入された。しかし、2015年に退役が始まると、羽田発着は客単価が低く乗客を多く運ぶ必要がある那覇線が主な投入路線となり、同時に伊丹空港の発着枠に制約があることから伊丹-那覇線が活躍の場となっていた。羽田-札幌線などに投入されることもあったが、JALによると週末など混雑時のみの限定的なものだったという。

 

国内最大級の座席数となる2クラス500席の777-300は、2011年2月20日に退役した「ジャンボ」の国内線仕様機747-400D(2クラス546席)と並ぶ500席クラスの機材だったが、現時点で後継機が存在しない。

 

JALでもっとも座席数が多い機材は、エアバスA350-900型機のうち「X12」と呼ばれる3クラス391席仕様(ファーストクラス12席、クラスJ 56席、普通席323席)となる。標準の3クラス369席(ファーストクラス12席、クラスJ 94席、普通席263席)の「X11」と比べて普通席が多く、観光需要が見込める路線や繁忙期などに適している。

羽田空港で売却先への出発を待つJAL最後の777-300となったワンワールド塗装のJA752J=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 

 

7機あった777-300のうち、JA8945は今年5月に国土交通省航空局(JCAB)へ抹消登録が提出され、羽田で機体を解体したことがわかった。JALによると、国内での航空機解体作業を検証する目的もあったという。JA752Jを含む残り6機は海外の売却先へ旅立っており、JA8944はN814KW、JA751JはN819KWと2機が米国で登録され、JA8941から8943はスクラップになっている。

 

JA752Jは、フェリーフライトのJL8132便として、羽田を30日午前1時16分ごろに出発し、同34分ごろC滑走路(RWY16L)から離陸してホノルルへ向かった。今年7月19日に羽田を出発したJA751Jは、羽田からホノルル経由でカリフォルニア州のモハーヴェ(モハベ)空港に到着した。

 

同規模の後継機なし?

 

JALの777-300は、エンジンは米プラット&ホイットニー製「PW4000」を選定。推力9万ポンドのPW4090を2基搭載していた。

羽田空港で売却先への出発を待つJAL最後の777-300となったワンワールド塗装のJA752J=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 

 

しかし、PW4000はJALとユナイテッド航空(UAL/UA)でファンブレードに不具合が起きたことから、JCABが2021年2月21日に運航停止を各社に指示。運航再開の時期が見通せないことから当初計画を前倒しし、同年3月末で当時残っていた2機の777-300と5機の777-200(3クラス375席:ファースト14席、クラスJ 82席、普通席279席)の計7機あったPW4000搭載777をすべて退役させた。

 

その後、2020年12月4日にJALの777-200(JA8978)で起きた左エンジンのファンブレード損傷は、ブレード製造時に付着した小さな粒状の塊が起点となって亀裂が発生した可能性があり、エンジンメーカーが実施する非破壊検査の方法や検査間隔が不十分だったと、国の運輸安全委員会(JTSB)が調査報告書を公表した(関連記事)。

羽田空港で売却先への出発を待つJAL最後の777-300となったワンワールド塗装のJA752J=22年8月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 

PW4000搭載777の運航は今年6月から再開され、同型機を保有する全日本空輸(ANA/NH)は6月23日に777-200、8月27日に777-300を国内線に復帰させた。ANAの777-300は2クラス514席(プレミアムクラス21席、普通席493席)で、10月末までに5機が復帰する見通し。JALもANAも、777-300は国内線機材として7機導入し、エンジンもPW4090で同じだった。

 

JALは2013年のA350導入決定時から、777-300の直接の後継機は設けていない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による生活習慣の変化などもあり、これまでに以上に500席クラス機による大量輸送から、ほどほどの座席数で多頻度運航するスタイルが定着してきており、777-300がJALにとって最後の500席クラスの機材になりそうだ。