◆スカーレット【第55話あらすじ】◆『好きという気持ち』 美子(戸田恵梨香)は初めてデザインした火鉢の試作品を八郎(松下洸平)に見せようと商品開発室を訪れる。すると八郎の作陶を目撃して驚く。八郎は社長の許しを得て、勤務時間の前後に陶芸の練習を重ねていた。目の当たりにした陶芸に心をひかれる喜美子。そして八郎の陶芸への思いを聞くと、喜美子の脳裏にある思い出が浮かぶ。その頃、川原家に信作(林遣都)が来て、「お見合い大作戦」なるイベントで喜美子の見合い相手を… (Yahoo!テレビ]より引用) |
昭和34年(1959年)―ー深野組が解散された夏。 信楽を去り、丸熊陶業の絵付け係は喜美子一人のまま、寂しい秋を迎えました。
そんな秋、喜美子デザインの絵付け火鉢試作品ができあがったのです。
実りの秋に、完成品を見せたい人もできました。
それは、心ゆれるあの夏に出会い、火まつりで共に松明を担いだ、十代田八郎でした。
喜美子は集中している八郎を、じっと見つめています。どれだけ見ていたのでしょうか。
八郎がふと振り向いて、ようやく気がつくのです。
「ああ! いつからそこに!」
声かけたら邪魔かな思うて。見守っていたと喜美子は言います。
全く気づかない自分はアホちゃうかと突っ込みつつ、手を拭く八郎。喜美子はうれしそうに、絵付け火鉢を見せてきます。
八郎はしみじみと言う。
「深野先生が見たらなんて言い張ったやろ」
「それはきっと……」
「ええよお!」
二人はそう言い合い、笑います。
八郎は言葉を続けます。
「どんな人が買うてくれるんやろ。うれしいですね? 愛おしいですね?」
ここも八郎らしさかな。照子は売れるんちゃう?と経営者視点になる。八郎は受け止める相手のことを想像しています。
喜美子は説明を続けます。
あのいろいろあったマスコットガールミッコー記事のおかげで、注文がある。えらい数ではなく、1人でなんとかなる程度ではありますが。
ミッコーの火鉢を買う人は、好奇心や宣伝に乗せられた人も多いことでしょう。ただ、その中には、女性を応援したい人もいるかもしれない。単純にデザインに惹かれた人もいるでしょう‥多分ね😉
ここで八郎は切り出します。
話したいけど土固くなる……って。
喜美子は仕事かと気遣いますが、そうではないようです。
八郎は、作業しながら話したいと説明しながら、ろくろの前に座りました。
どうやら当時はまだ珍しい電気釜が入ったそうです。若社長に、自分の作品を作らせて欲しいと頼んだそうです。
仕事さえしっかりやってくれたらええ。
始業前と終業後、朝夕一時間なら自由に使えるそうです。
敏春が有能かつ素晴らしい経営者で、こんなん感動するしかないやろ!
ドケチ社長なら、電気代の無駄だ、自分で買え、と叱り飛ばしてもおかしくない。
「ありがたいことです。これでやっと、ここにきてからやっと。自分の作品作りができるようになりました」
八郎はそう言います。喜美子は興味津々。
「ほんでこれは? 何を作ってはるんです?」
大鉢だそうです。注文を受けて誰かに作ったのかと聞かれると、八郎は笑い飛ばします。
「あはは、それやったらうれしいなあ。欲しいわ言われて、その人のために作って僕の作った器で美味しそうに食べてもらえたら……」
八郎は陶芸家ではないから、頼まれて作ってはいないと言います。喜美子は驚きます。
学校で基本は学んだけれど、すぐに陶芸家になれるわけではない。
作品を認めてもらって、独り立ちして食べていけるようになるまで、何年かかるかわからへん。
ろくろを使えるようになるのにも、2年3年はかかる。
喜美子はそう聞かされ、食べていけるようになることを目指していると納得します。
祖父の家にあった深野先生の絵。
ああいうふうに、誰かにとって、大事な大事な宝物になるような作品を作る。
それが夢その1だと、八郎は語るのです。
その1ということはまだあるのかと喜美子に聞かれて、その2、その3もあると八郎は照れ臭そうに言います喜美子は欲張りやなあ、と八郎をからかいつつ、その中身を聞きたがる。
「よう言わん!」
「なんで?」
「言わん、言わん!」
八郎は照れています。子どもっぽいところがあるし、かつ会話のキャッチボールは苦手。喜美子のようにグイグイ来る相手だと心地良さそうです。
美子はしみじみと、こうやって間近でじっくり見たことがないと言います。
雄太郎さんの芸名に「信楽太郎」を勧めるのに、言われてみればそうでした。
思えば慶乃川さん以来だと振り返る喜美子。作品に容赦ないダメ出しをして、草間宗一郎に叱られた時ですわ。慶乃川から陶芸家は金にならんと聞いたという喜美子です。
八郎は苦笑しております。
喜美子は自分の生い立ちを語ります。中卒で大阪で働いてから、絵付けを始めた。始めてからは絵付けに必死で、他のことは目にはいらなった。
陶芸をやったことはない。一度も、土を練ったこともない。
「ほやから見てたい。ずっと見てたい」
「そんなん改めて言われたら恥ずかしいな。見られてることを急に気にしてしまうさかい。いやほんまに」
八郎は鈍感なのでこういう反応ですけれども、
【絵付け以外目に入らなかったきみちゃんが、陶芸に関心を?】
ですからね。もしかして、ひょっとすると、恋ですやん💖
ここで喜美子はちょっとズレていて、テンプレからはみ出すので薄目の変顔をします。
「こんな目ェして見ときましょか?」
「それやらしんちゃう!」
「ほな閉じましょか、見えへんやん!」
「何言うてんねん!」
「戸の向こうに隠れて……見えへんやん!」
「何やってんねん!」
立ち上がって戸の向こうに行ってしまったり。
後ろに回ってこうだ。
「こういう感じで、おるかおらんかわからん感じで見てます!」
「気のせいちゃう、おるやん!」
「恥ずかしい言うたから」
「ほな、ここにいてもええですか」
「しゃあないな、座って見とき」
ちょっとした掛け合いの後、喜美子はやっと座るのですが。
「ふふふふふ……」
八郎は思い出し笑いをしてしまう。
喜美子は、何? 怖いと言い出します。
「さっきの……もうええです」
「ええことないよ、なんです?」
八郎は笑い出す。さっきの喜美子の顔が面白くて笑っちゃうらしい。
薄目だった喜美子の顔真似をします。
「こんな顔してた!」
「してへんよ! 真面目にやりぃ! しっかり見させてもらうよぉ!」
「見てください」
八郎は、思い出し笑いをして一人で笑っちゃって、なんかおかしな奴、気持ち悪いと突っ込まれるタイプとみました。感情が隠せないんだね。😊
そのころ、川原家では。
「お見合い大作戦?」
なんかジョーがボケたことを言い出しました。
そしてそこには、信作もおります。
喜美子が帰って来ていると思ったそうです。
百合子もマツも、遅いことには気づく。けれども、色気も何もない喜美子のことですから、まさか恋の予感が始まっているとは思わない……これはあかん予感がする💧
信作は、伊賀の親戚や役場にもお見合いで声を掛けていたとか。
そして話がでかくなって、こうなった。
集団見合い!
百合子が盛り上げます。ともちゃんが言うてた、大勢がいっぺんにお見合いするやつや!
信作は、ドヤ顔で当時の信楽出会いの最前線イベントチラシを見せます。
「名付けてお見合い大・作・戦! じゃじゃーん! 喜美子にも参加してもらいます!」
林遣都さんの振り切り、昭和くささ、ダサさが噛み合ったものすごい瞬間。この演技そのものがもはや卑怯なレベルです😭
「ええでしょ!」
「ええなあこれ!」
ジョーは、今回も濁声で同意します。
この声も配役の理由かもしれへんね。濁声やアルトはマイナスではなく、むしろプラス。この声でないと、この二人はあかんと思う。
このジョーの濁声とドヤ顔があると、嫌な予感がする。なんかズレとんねん!
ズレが大惨事の予感や……。
そのズレとは、喜美子と世間のものであり、八郎とジョーのものであり。
ジョーと八郎って、真逆だと思うんですよ。
儲けにならない好きなこと、誰かの心に響くたった1つのものを作る――そんな八郎は、儲けだけでない職人肌。信楽焼の杯で飲みたい酒や。
ジョーは金にならんもんはいらん。好きなことを仕事にできるわけあるかい! 酒缶のままで飲めばええ。ここまで父親像と真逆の相手を選ぶヒロインって、久々ではありませんか。
アホな「お見合い大作戦!」の後、開発室へ場面が戻ります。
喜美子は聞いてみる。
聞いてもええ?
どうして選んだのか?陶芸を選んだ理由を聞くのです。
八郎の実家には絵があった。絵描くの好きで、絵描きになろうとしたこともある。
なので中学と高校で美術部に入ったものの、そこで気づいたのです。
僕くらいの絵は誰でも描ける。
喜美子に下手やったのかと突っ込まれ、うなずくしかありません。ここでムッとしないところが、彼の性格なのでしょう。
絵を描くことよりも、好きなことを見つけた。
美術部の先生がやっていて、おもしろそうだった陶芸。
運命的な出会いでも、決定的な瞬間があったわけでもない。
気付いたら自然に好きになってな。
つまらん話や。そう八郎は謙遜します。
「つまらん話やない、ええ話や……」
喜美子と微笑み合い、陶芸をする八郎。バイオリンの音のBGMを聞きつつ・・・次回に続く。