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◆スカーレット【第41話あらすじ】◆『弟子にしてください!』 喜美子(戸田恵梨香)のお見合いが破談。さらに水を酒と偽り飲まされ、父・常治(北村一輝)が激怒。喜美子が火鉢の絵付けを学ぶ了承を得るのに失敗する。翌日、喜美子を後押しできず謝る母マツ(富田靖子)と、居合わせた妹たちに、喜美子は見ない方がいいと忠告されながらのぞき見た絵付け師・深野(イッセー尾形)の創作する様子と、秘められた半生を明かす。貧しい幼少期、従軍した戦争体験。喜美子はある決意を家族に告げる (Yahoo!テレビ]より引用) |
昭和31年(1956年)—絵付け工房に喜美子を入れる――というマツの計画は、ジョーの暴れっぷりや、酒と水アクシデントで台無しに。しかし、そのおかげで喜美子はやりたいことを見いだせたというのです。その中身は?
「決めたて何を決めたん?」
直子も興味津々。
すると喜美子は、深野心仙ことフカ先生のことを語り出します。
その集中している時を、喜美子は見てしまう。
見たらあかん、見んほうがいい。弟子1号と2号がそう言ったのに、気になって止められなかった。
思わず覗いてしまった。唸り声が聞こえて来る。 照子が「産みの苦しみ」と無駄に語彙豊富な表現を使ったあの声です。
聞いている側も興味津々。
「見たん?」
「見たん?」
「……見た」
「どんなん?」
「こんな顔してた」
ここで喜美子は、口を半開きにして見せます。
すごい顔芸や!
「アホやん」
「アホな顔や!」
関西以外から引っ越してきた人が戸惑いかねないアホの使い方ですね。範囲が広いからさ😅。
それを主演女優にさせる、これがNHK大阪制作でしょうね💧
ということだけでなく構成の巧みさに驚かされてしまう。
喜美子が何を見たのか?引っ張って視聴者の興味関心を高める工夫がすごい。喜美子がマツたち相手に焦らすようなことを視聴者に対してもしている。
これはこのあと、相当自信があるものを見せるということでしょう。
「笑うてたん、へらへらへらへら。笑いながらやっててん」
どういうことかわからへん、どっかおかしくなったんちゃうかと思ってしまう喜美子です。
ここで、じっくりとフカ先生を映す。
カメラワーク、筆遣いをアップ、心の昂りと一致するBGM、そしてイッセー尾形さんの演技。何もかもが噛み合っている・・・かもね😆
前任者の絵付け師とも違いが際立つ。弟子の前でデンと腰掛け、厳しい顔で筆を執っていた親方とは真逆ですね。
「フカ先生、大丈夫ですか?」
「あ、見たな? 恥ずかしい、恥ずかしい……」
「なんで笑うてたんですか?」
フカ先生の反応。往年の怪奇映画で、行灯の油を舐めてバレる化け猫のようです。
謎のかわいらしさがある。
『みぃたぁなぁ〜! シャーッ!』的な🤣
フカ先生はその半生を語り始めます。
昔、フカ先生は日本画を描いていました。山や森、空を飛ぶ鳥、滝の流れるところ。日本の美しい風景画です。京阪の豊かな景色を描いていたのでしょう。
若い頃は個展を開き、賞を取ったり、認められてもいたそうです。
百合子もニコニコ、マツも微笑みながら聞いています。
しかし、戦争が始まると従軍画家として中国大陸に渡ることになった。戦争画をそこで初めて描きました。空には鳥ではなく、鉄砲玉が飛ぶ。子供が遊ぶ絵ではなく、兵隊が鬼気迫る顔で敵に立ち向かい、勇ましく戦う絵。幼い頃から、フカ先生は絵が好きでした。貧乏だったから、欲しい物を何でも描いておりました。
お母ちゃんが白いご飯が食べたいといえば、よっしゃ〜と白いふかふふかのご飯を描く。欠けていないきれいな茶碗に山盛りてんこ盛りにか描いた。きっと現実は、ボロボロの茶碗だったのでしょう。お父ちゃんが胸を患うたとき。行きたい場所を聞き、夏の海を描きました。海も山も川も畑も。描き過ぎやと叱られるかとか思ったけど、「ああ、ええよぉ」言うてくれた。
お母ちゃんも、「ええよぉ」言うてくれた。
うれしゅうて、楽しゅうて。笑うて描いとった。
「ええよぉ」
「ええよぉ」
話題となったあの言葉には、そんな思いが詰まっていました。
それが一転してしまうのです。
「笑いながら描いとった絵が、もうあれだ、戦争画や。人間が殺し合うんや。のたうち回ってな。まぁ戦地やから。戦争のため言うてもな、そんなん絵にできひんわなぁ。せやからもう、いつだったか、戦争終わった言われてもな、もうあかんわ、絵なんか描けん。絵なんか一生描けんと思うた。他の仕事一生転々としてな。そんな時、こいつと出会ったんや」
火鉢に絵が描いてある――。
「え、うわー、思うてな。こんな所に絵? 暖取るために絵なんていらんやんなぁ。そやけど絵を描いてあるってどういうこっちゃ!
あ、そういうこっちゃ、そうか〜。これが戦争が終わったちゅうこっちゃ。火鉢の絵を見て実感したんや。まぁ、なんと贅沢な!
なんと贅沢なことを日本は楽しむようになったんや! 僕は叫んだわ! 火鉢に絵、ええよぉ!」
フカ先生は喋り続けます。
「もうそっからは、絵付けの仕事に猛進や。せやから、今描いててもな、どうしてもな、気持ちがこぼれてくるんや!」
フカ先生、平和を噛みしめつつ、勇ましい「猛進」と口にしてしまうあたり、戦中派や。
「また笑いながら絵を描けることが、どれだけ幸せなことか! この火鉢の向こうのあったまる人のことを考えると、なんと幸せなことか!
絵ェ考えたり描いたりするとな、笑てしまうんや! アッハッハ! もう楽しゅうて嬉しうてな! せやからもうどうしても笑うてしまうんや! アッハッハッハ!」
戦時中、「贅沢は敵だ」という標語があった。
そのころは、絵付け火鉢なんてもってのほか。ありえないものでした。
絵付け火鉢一つでフカ先生が嬉しくなった背景には、そういうことがある。
そんな喜美子の話を聞き、マツはこう言います。
「ええ先生やな」
「うん、ええ先生や」
フカ先生はたまに絵筆を持って踊り出してしまうこともある。
「月を描かんとあかんし〜雲や〜」
戦争が終わった喜びが湧いて来る。
そんなフカ先生なのです。
そこには表現が発散する心の鬱屈という、そういう喜びがあった。
そしてもうひとつ、表現が戦争の後押しをすることへの葛藤もある。
喜美子のやりたいこと
フカ先生は見られたならしゃあないと、喜美子の気持ちを聞いてくれました。
「そもそも絵付けがやりたいんか、絵付け師になりたいんか?」
このあと、フカ先生はお茶をいれようとして、喜美子がこう言います。
「うちが、うちがやります!」
「ああええよぉ。どっちや」
この短い場面で、フカ先生の性格もわかります。
喜美子は彼の中で、お茶汲み要員ではないのです。
「……そういうことの前に、うちにはお金が」
「お金の話なんかしてへん。負けたらあかん。なんかやろ思たときに、お金がないことに気持ちが負けたらあかん。どっちや? 絵付けやりたいんか、絵付け師になりたいんか?」
フカ先生は、貧しい家庭の出身です。幼い頃に父が肺結核になったと思われるわけですから、かなりの苦労をしているのでしょう。
うーむ、難しい!これは喜美子と言う人物を考える上でも、ものすごく難しいと思うんですよね。
喜美子は絵が大好き。マツが絵付けを習わせたいという気持ちはわかる。
けれども、絵そのものが好きなのか、ちょっと不可解なところはある。
「どう違うのん?」
百合子が聞きます。マツはこうだ。
「遊びでやるか仕事にするか?」
そして直子はこうや。
「お金になるかならんか?」
桜庭ななみさんは、直子は父親そっくりだと語っておりましたが、わかる気がする。
喜美子はこう結論づけます。
「覚悟があるかどうかやな」
絵付け師になりたいなら、基本からしっかり叩き込む言われた。
それでどう答えたのか? マツが尋ねます。
「わからへん。そんなんすぐには答えられへん。わからんと帰って来た」
そういう葛藤の中身を描かないから、喜美子が絵付けができないことに落ち込んでいるかと視聴者は騙される。それがもっと高次元の葛藤があったとここでわかります。
「ほしたらお母ちゃんが……」
「お母ちゃん、余計なことを……」
「ちゃうよ」
喜美子はこう言います。
直子はこう来る。
「お父ちゃんあかんいうたで」
喜美子も何かちゃうと感じた。
「ほしたらうちはどうしたいん? 今の気持ちはどうなん? 考えたんよ。絵付けをやりたいん? 絵付け師になりたいん? いやどっちでもないわ。わかった、うちはフカ先生についていきたい!」
バイオリンの音が流れます。サントラが抜群にいいと思う♪
「フカ先生に学びたい。学ばせてもらいたい。他の誰でもなくて、あの嬉しそうに笑いがら、あの楽しそうにやってるフカ先生に! 決めた、うちはフカ先生の弟子になる!」
喜美子はその結論に至ります。
これも、彼女の意地と誇りで決めた道です。
場面変わりまして、赤提灯の「あかまつ」へ。
「おっちゃんの危険信号1位!」
ジョーの話題は、おっちゃんの酔態ランキングです。
「1位は……おしぼりとちくわを間違えて食う!」
爆笑するジョー。
映像は嗅覚には訴えかけないはずですが、もうジョーが映るだけで悪臭を感じる。汗と酒と加齢臭や……。
しかも、隣で飲んでおしぼりをちくわのようにかじっとるのは、フカ先生です。
もうあかん……そうとしか言いようがない。
ここへ大野忠信登場。ちょっと安心かな?
「おぅ、オゥちゃん、来た来た! このおっさんごっつおもろいでほんまに!」
フカ先生は、大野雑貨店の人だと気づきます。
ジョーは大野雑貨店で何か買ったと特に気にしていない模様。ええの?
「おしぼりちゃうか!」
ジョーはバシバシとフカ先生を叩いています。
忠信は焦り始めます。
「こちら丸熊陶業とこの絵付けの先生ですよ!」
はい、ジョーの顔は真っ赤ながらも酔いが飛んだ顔になっております。
演じる側が素面であることが信じられない、圧巻の酔態。
フカ先生の半生語りを台無しにしかねない、ようわからん状態・・・次回に続く。



