◆スカーレット【第29話あらすじ】◆『ときめきは甘く苦く

美子(戸田恵梨香)は世界的な芸術家・ジョージ富士川(西川貴教)のサイン会を訪れる。来年から美術学校で学ぶ夢を伝えると、激励されて感激。さらに名前を呼ばれて振り向くと、かつて信楽の実家に居候していた草間(佐藤隆太)の姿。喜美子は草間との再会を喜び、互いの近況報告をする。草間からは終戦後、生き別れた妻の所在がわかったと明かされるも思わぬ事実が判明。一方、新聞記者のちや子(水野美紀)の職場では事件が…

Yahoo!テレビ]より引用)

昭和30年(1955年)—―パリ帰りの芸術家。ジョージ富士川のサイン会です。

作品集を手にして、喜美子もサインの順番を並んでおりました。

名前を聞かれた喜美子は、中淀の美術研究所絵画科に通うことも伝えます。

「ああ、そこ、僕が特別講師頼まれたとこや!」

基本を学ぶことは大事なこと。土台がしっかりしてはじめて自由に描ける。

そう語るジョージ(※ええ方)です。

と、ここで広東語を話す男性が、香港での個展開催を依頼して来ます。

「ちょっと! 割り込むのはやめてください!」

喜美子がカッと怒りを見せると、広東語を話せる男性がたしなめます。

「割り込むのはやめましょう」

するとこの男性が、喜美子のことに気づきます。

「喜美子……川原喜美子さん。きみちゃん!」

「草間さんや!」

草間宗一郎さん!私も気になって仕方なかった――草間さんがついに来ました!😁

基礎的なことがしっかりしている場面だと思う。満洲にいた宗一郎は、どうして広東語が話せるのか? 彼は学歴を買われて満州にいた。中国語が数種類使える設定なの…と思う。

  • サイン会である

  • 喜美子は黙っていない性格

  • 広東語を話す男が割り込む

という三条件揃わないと、こうはいきません。大阪は広いからね。

奇跡的な偶然であり、かつ自然な再会。本当になにげないような場面でも、土台を重ねないと歪んでしまうところです。明確なモデルをそのままなぞってはいない、そのぶん自由度は高い本作ですが、だから「楽なのか?」というとそれは違う。

 

二人はさえずりへ。

宗一郎は、雄太郎にさえずりコーヒーを頼みます。

どんなコーヒーですかね。普通のもんだとは思いますが。

そしてこう来た。

「草間流柔道さん、さえずりコーヒーひとつ!」

名前が草間流柔道になってる。

そこを突っ込みたい余裕はもはやない😓

「草間流柔道来たてほんま? おたくが草間流柔道さん?」

さだまで入ってきて、そう呼ぶからもう訂正の余裕なし。

困惑しつつ、草間宗一郎はこう名乗るのでした。

「草間流柔道です」

「荒木さださんです」

「喜美子が小さい時お世話になったそうで。何かい言うと草間流柔道!」

さだはすっかり、喜美子にとっては大阪の母状態です。

そして雄太郎と二人でこう来た。

「どんな人かと思ってたけど……思うてたよりシュッとしてる! シュッとしてる!」

でた、関西弁の万能褒め言葉。

 「シュッとしてる」です。

今日はゆっくりしてって、晩ご飯も食べておいでと喜美子に言います。

戸惑う喜美子に対してこうです。

「会いたかったんちゃうのん! よかったなあ」

「よかった、よかった!」

雄太郎も喜んでいます。ちや子は仕事が忙しくて来られないって。ここでさだも仕事を思い出します。

「草間流柔道さん、ごゆっくり〜。マスター、ごめんな〜」

ここでマスターもうなずきます。公式サイトでも名前がなく、ただのマスター。それでも存在感がある。貴重な存在ですルンルン

嵐のようなさだが去り、喜美子は切り出します。

どこまで話しましたっけ?

荒木荘で働き出して父が来たところ。三年帰らないで、ずっと働き続けていること。仕事も慣れたこと。

喜美子がそう振り返ると、宗一郎は優しく微笑みます。

「聞かなくても十分、今の感じでわかったよ。よくしてもらったんだね。がんばったんだね、よかった」

そう言われて認め、照れる喜美子です。

ジョーから一方的に信楽を去るように決めつけられ、不安げな顔で大阪に来てから、ここまで来ました。

うん、短いようで長い、濃厚な一ヶ月だった。

喜美子は、草間さんはどんな感じかと聞きます。

「ええ感じ? あんまりええ感じでない? ぼちぼちな感じ? 最悪な感じ?」

相手が返事を返す前に、こう来る。関西人以外は困惑するかもしれませんが、悪意でもないのでそこはそういうものかと。

答えを待たずに、ここで喜美子は離れ離れになった奥さんのことを聞きます。

写真を見せてもらったと思い出す喜美子。

ここで雄太郎がさえずりコーヒーと、さくらんぼをサービスしたジュースを運んできます。

喜美子はマスターにお礼を言います。

「ありがとうございます!」

喜美子は元気で、お礼をきっちり言うところがいいのかも・・・ね(∀`*)テヘッ。

宗一郎はここで、その妻との写真を差し出します。

「これやこれこれ! きれいな人やん」

宗一郎はここで、前に見せた時は「まあまあやな」と言った、と言い出すのです。喜美子は戸惑います。

「ええ……そんなこと……言うたか。今見たらきれいな人や」

気まずい喜美子。宗一郎はにっこりと優しく笑います。

「お世辞言うこと、覚えたんだね」

「やめてください。ほんまにきれいな人です。優しそうやん」

喜美子はそう言い切ります。お世辞ではない。成長でしょうね。

美的感覚が磨かれたと言えますし、これも恋を味わったからかもしれない。

その恋のお相手だった圭介は溝端淳平さんですから、言うまでもなく美形ではある。

けれども、そのおはぎを食べる顔や、笑顔の持つ、内側から輝き出す魅力を喜美子は知った。

恋があれがもっと美しく見えるものがあることを、喜美子は学んだのだとおもう。

宗一郎はこう語り出します。

最近思い出す。

■焼き飯の作り方■※参考

お店をやろうと妻は言っていた。お客さんが6〜7人でいっぱいになるような、小さなお店。とりあえず飯屋。

当時は一緒になったものの、二人で過ごす時間はなかった。

満州から帰国したら、お店でもやる。それで一緒にいられる。

ここで宗一郎は、焼飯(やきめし)も作れないと自嘲するのです。

喜美子はここで、焼飯もできへんのかと笑います。

焼飯は炒飯のことですね。

宗一郎は微笑みながら、こう返します。

「作れないよ、今も昔も」

「あかんやん、奥さんの夢叶えてあげられへんやん」

「うん、そう。叶えてやれなかった。その夢を、向こうは叶えてた。この近くの商店街の外れで店をやってる」

「生きてたん? 奥さん生きてたん? よかった。生きてたんや。よかったですね!」

喜美子は喜びます。よかったねえ。

でも、宗一郎は寂しそうな笑みではある。

「別の人と……」

「別の人?」

「お店を、僕じゃない別の人とやってる。満州から引き上げてくるのが遅かったのかな。僕が、もう僕が死んでしまったと思ったのかな。別の男の人と、その、暮らしてたっていう。そういう事実を誰もみんな、僕には言えなかったんだろうな。ずっと何年も知らないで僕は……」

喜美子は何も言えない。ピアノが印象的なBGMが静かにながれ、カメラワークがグルリと二人を撮影する。演じる側だけではなくて、撮影する側が、全力で劇的な絵を撮ろうとしている。

そういう緋色の熱気が伝わくる・・・なんちて😖

「……知らないで探して、いつか笑い話にできると思って、そしたらきみちゃんにも連絡しようかと思ってた。馬鹿みたいな結末で、がっかりさせたね。ごめんね」

そう力なく微笑むしかない。宗一郎なのでした。

 

その頃、ちや子もとんでもない状況にぶつかります。

いつものように、急いでデイリー大阪編集局に戻ると、ヒラさんの机の上が片づけられていた。

ちや子は同僚に迫ります。

「ちょっとタク坊、どういうこと? なんでヒラさんの机が片してある? 人が話してんや、こっち見ぃ!」

彼女の戸惑いを取り合わない相手に、声を張り上げるちや子です。

本作の女性は、きっちり怒る度胸があります。

「ヒラさん、新産業新聞に引き抜かれたで」

呆然とするちや子。

「あァ、お前聞いてなかったんか」

「みんな知ってたん? ……知らんのうちだけ?」

「ちや子さんと違うてこっちは生活かかっているんで」

ちや子は反論します。

「こっちだって生活かかっとるわ!」

そんなちや子に投げつけられる言葉は残酷で……。

「女と男は違うわ。お前結婚せえ。俺やないで。ヒラさんが言うてた」

「結局、家庭に入るまでの腰掛けや、女はどうがんばってもな」

一瞬立ち尽くし、外へ猛然と駆け出すちや子。

それから賑やかな雑踏を歩きます。

本作は、雑然とした大阪の街並みが秀逸で。

信楽もええけど、歩く人は皆活気に溢れている。

本作は、大阪の熱気と、登場人物の悲しみを対比させていると思えます。

初めて昭和の街並みを見る視聴者を踏まえて、丁寧な再現をしたい。そんな意図を感じる雑踏なのです。

ちや子は師走の大阪を歩きながら、荒木荘での会話を思い出します。

『身の振り方を考えたほうがいいーー。』

そう語ったヒラさん。彼は愛弟子の情熱ゆえに、かえって本当のことを言い出せなかったのかもしれません。

 

喜美子と宗一郎は、さえずりを出ます。

 晩ご飯をどうするのかと喜美子が言うと、宗一郎はこう返します。

「きみちゃんの好きなもの」

ここで喜美子は気づきます。

「草間さん、背ェ縮んだ? なんや小さい」

草間はきみちゃんの背が伸びたと返します。

それはそうではある。けれども、それだけやろか?

“あの強くてたくましい草間さんはどこかに消えてしまったんちゃうか、と思いました。”

ナレーションがそう補います。

「そうか……」

「どこ行こうか?」

あのころ、草間さんの顔の向こうに星が光って見えとったわ。

喜美子はそう思いつつ、こう切り出します。

「行きたいところがあります。ええですか」

「うん、いいよ」

「ほな行きましょう」

BGMが盛り上げる中・・・次回に続く。