日本より随分早くワクチン接種が出来ていたアメリカ。

でも、やっぱりというか思ったほどワクチン接種率は増えず、私が住んでいる州なんかはワクチン接種が完了している人の割合って人口の40%くらいなんですよね。

 

その状況にデルタ株の流行が伴い、最近は日々の感染者数が1万人を超えることがちらほら出てきて順調(?)に右肩上がりの推移を見せてます。

でも、外出自粛生活を一旦ゆるめてしまったせいで、感染が再流行しているのにみんなは自由きままな感じ。

明らかにマスクをつけて外出する人は減りましたし、いろんなイベントが普通に開催されています。

 

あちゃーって思っていると日本も8月に入って連日、最高記録を更新しているようで、医療の逼迫もレッドゾーンに突入している話をちらほら耳にするようになりました。

今までは感染者もそれによる死者も海外に比べると圧倒的に少ないせいか、新型コロナなんてインフルエンザと対して変わらないでしょ?って思っていた人も、何となくやばそうな気配を感じ始めているのではないでしょうか。

 

 

「やっぱ、ワクチンうってないとやばいかも?」

 

 

と思い出す人も増えていると思いますが、同時に思うのが、でも副反応って大丈夫?という不安だと思います。

特に気になるのはワクチン接種後に〇〇人死亡というニュース、記事だと思います。

噂になるのはやっぱり陰謀論的な話ですよね。

 

 

  • 政府はワクチン接種を勧めたいから、ワクチンが原因で死亡したら補償金を支払うと言っているけど、因果関係不明にして絶対お金も払わない!
  • 持病がなかった人がワクチンうって翌日に亡くなっているっておかしくない?

 

どこまで信じるかは人それぞれだと思いますが、大なり小なり気になっている人は多いと思います。

 

 

医師として大切だと思うことは、逆に「どうだったらそれがワクチンが原因で亡くなったと疑うのか?」という点につきると思います。

 

 

ワクチンの分かっている副反応で、命に影響しそうなものというと・・・

  • アナフィラキシー/アナフィラキシーショック
  • 心筋炎・心膜炎
  • 血栓塞栓症(主にアストラゼネカやJ&Jのワクチン)
  • 発熱(高熱がでることあり)
  • 倦怠感に伴う食欲の低下

などでしょうか。

 

このうち、ワクチン接種した直後に起こる可能性が高いのはアナフィラキシーなので、それに伴い死ぬことがあればワクチンが影響したと特定される可能性は限りなく高いと思いますが、ちゃんとした治療のやり方がわかっているので、幸いこれまでにアナフィラキシーで亡くなったかはいなかったと記憶しています。

 

では他の原因はどうでしょう?

 

それ以外の病気って、ワクチン以外で起こることのほうが多いので、それとワクチンが因果関係があるって証明するのはとても難しいというのが現状でしょうか。

例えば血栓塞栓症は、ファイザーやモデルナと呼ばれるmRNAワクチンでは基本的にはほとんど報告がなく、可能性を指摘した症例報告の論文がある程度です。

小まめに採血がされており、血小板の数が普通だったのに、ワクチン接種後に血小板が下がり、その後、血栓症を起こしたとなって初めてワクチンとの因果関係が疑われますが、そこまで経過を細かくフォローすることは現実ではなかなかないと思います。

 

 

じゃ、本当はワクチンで何か起こっているのに、それが永久に解明されることはないのか?というと、実はそうではなく、ちゃんと厚生労働省はワクチン接種後死亡者の原因とその数をモニタリングしており、ワクチンとの因果関係を評価しようと努力はしているようです。

 

 

どのように評価するかというと、そのうちの1つが「ある特定の病気で死んだ人がワクチン接種後に増えているかどうか」という手法です。

 

 

例えば2021年2月17日から7月11日までにワクチン接種後に脳出血を発症し亡くなった方が50人います。

それが、100万人、1日当たりどれくらいの頻度で起こっているかを計算すると、0.03件/100万人・日となり、100万人がワクチン接種すると1日において0.03人が脳出血を起こして亡くなるという計算です。

 

 

そしてその割合を、ワクチンを接種していない人の間で、どれくらいの頻度で起こっているかを計算します。

2019年に1年間で脳出血で死亡した人は34,380人いて、それを総人口と365日で割ると0.75件/100万人・日となります。

つまり、2019年(まだだれもワクチンを接種していない年)は100万人あたり、1日において0.75人が脳出血で亡くなっています。

 

 

もし、ワクチン接種が脳出血の原因として強く関連があるのであれば、この0.75という数値より理論上大きくなるはずなので、現在のところ、ワクチン接種後に脳出血を起こして亡くなった人はいるけど、ワクチンとの因果関係はとても低そうというのが医学的な判断の仕方になります。

 

 

こういった情報はきちんと厚生労働省のHPで公開されていますが、自分で探すのは簡単ではないかもしれないし、分かりにくいですし、テレビでもあまり報道されていないと思います。

 

 

*「死亡例の報告について」という項目の資料1−5−1にあります。

 

 

新型コロナの流行に伴い、ワクチン推奨派、反対派、マスク着用の賛成派・反対派と多くの人々が分断されてしまい、お互いに憎しみあっている風潮を感じます。

問題があるのは「個々の人」ではなく、「飛びかう怪しい情報」であったり、「その情報をどう報道するか」や「その情報をどう政治にいかすか」という構造の問題なんですよね。

 

 

分断からは何も生まれないので、正しい情報をみんなで共有しあい、この苦しい時代をみんなで協力して生き抜けるような社会になって欲しいなと強く思います。