私が医師4年目の駆け出しの心臓血管外科医の頃のお話です。

 

激務が続く大学病院での生活のあいまに、6週間に1回まわってくる1週間の島当直ライフがありました(大学の給料だけでは生活できないため離島にアルバイトにいっていました)。

そんな激務+ときどきのスローライフな日々の記録です(多少、加筆・修正あり)。

 

 

 

2005年9月9日 台風が接近する中での島当直をしていたある日のこと⑨。

 

*其の1はコチラ

*前の記事はコチラ

 

 

 

今日、外来に32歳の男性がきた。
最近右膝が腫れて歩きにくいという。



確かに右膝をみるとぷくぅっと腫れており、触るとぷにゅぷにゅしている。
ん~水が溜まってるな。
注射器に18Gの針(結構大きな針です)をつけてプスッ!
合計14mlのキレイな液が抜けた。



ふとカルテに目をやると今年の1月にも病院にかかっていた。
んっ!?
検査所見に目をやると、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値が9%を超えていた!!
HbA1cとは、血糖値の2-3ヶ月の平均値を表す検査値。
血糖値は、その日、食べたもので値が変動してしまうので思ったほどあてにならない。
どんなに不摂生をしていても、採血する日に絶食していれば低い値が出てしまう。
そこで登場するのがHbA1c!
2-3ヶ月の平均値なんで、糖尿病患者さんの管理によく利用されている。



ちなみに、6.5%を超えると糖尿病の診断がつき、7.5%を超えると3大合併症のリスクがあがる。
3大合併症とは、網膜症・腎症・末梢神経障害の3つ。
目が見えなくなったり、おしっこがでなくなったり、足がしびれたり。
他に、末梢循環不全となって、足がくさったりもする(糖尿病性壊疽)。



話を本題に戻すと、初期の糖尿はあんまし自覚症状がない。
なんとなく、のどが渇いて水分を多くとる。
水をいっぱい飲むからトイレも近くなる。
そして疲れやすくなったりもする。
だいたいそんな感じ。



そのうち徐々に痩せてくる。
お!?なんか痩せてきた♪と喜んでるときにはだいたい重度の糖尿病。
運が悪いと合併症が顔を覗かせている。



痩せる理由は・・・
「著しいインスリン不足のためにぶどう糖が十分利用されず、かわりに脂肪やたんぱく質が分解されてエネルギー源として使われて減り、また大量のぶどう糖が尿に出てしまい、脱水も起きて、体重がどんどん減る。」
といわれてます。



まさに究極のダイエット!!!
彼は半年で4kg痩せました。



恐ろしいことは、この人がまだ32才ってこと。
働き盛りの世代ではないか!!
今後の日本の行く末が少し心配になった瞬間でした。

 

 

 

最近、何もしていないのに急に痩せてきたという知り合いがいたら、必ずのどがかわきやすくなっていないか、トイレにしょっちゅう行っていないか聞いてみて下さい。

糖尿病があって悪化している可能性があるかもしれません。

 

 

 

一昔前になりますが、「熱中症予防にスポーツドリンクを飲むのがいい」というニュースが流れ、夏場に大量にスポーツドリンクを飲みまくる人が増えたことがありました。

その当時は、まだカロリー0とかが流行っていなかったので、スポーツドリンクにはミネラルの他にも糖分もしっかり入ってて。

その生活続けていると次第に痩せ出して、スポーツドリンクすげー!ってなったときがあったんですが、それって糖尿病になって単に重症化しただけだったんですよね。

嘘みたいに聞こえるかもしれませんが、そんな風にしてスポーツドリンクの飲み過ぎによる糖尿病患者さんが増えた時代があったんですよ。

 

 

 

世の中、これを食べればいい!これを飲めばいい!という健康食品なんかがごろごろとあると思いますが、特定のものを食べ続けたり、飲み続けたりすると害になることもあるので十分に注意して下さい。

 

 

 

やはり、「バランスよくいろんなものを摂取する」というのが一番健康的だと思います。