私は基本的に外来で診察する側でいることがほとんどなので、患者さんが外来時にどれくらい緊張しており、聞きたいことの何%くらいが聞けているのかを想像することは難しく感じます。

 

 

 

中には外来で何を話せがいいのか分からないという人もいるでしょうから、反対に外来時に医師は何を患者さんから聞きたいのかをご紹介したいと思います。

 

 

 

初診時(初めての外来受診)

 

初めて来る患者さんを診た時に医師が知りたいことは下記のようなことです。

 

・症状についての詳しい情報

 

どんな症状があるのか、その症状はいつから始まっているのか、症状に変化があるのか(良くなっている、変わらない、悪くなっているなど)、どんな時に症状がでるのか(規則性があるのか、ないのか)、症状がどれくらい続くのか(数分、数時間、1日中などの持続時間)、など症状一つとっても詳しい情報があると診断の助けになります。

 

例えば、胸の痛み一つとっても、

「重苦しいような痛みをあごに感じますが、ゴルフで坂道を登っているときなどに感じるようになりました。休むと10分くらいで症状は落ち着きます。」

と話を聞いただけで、「労作性狭心症」という病気を強く疑うことができます。

 

・他に持病を持っていないか

 

もともとの持病と関係して起こっている可能性もありますし、病気を治療する上での注意点になることもあるので、指摘されたことある病気すべての情報を教えてもらえると助かります。

 

例えば2型糖尿病を長いことわずらっており、最近足がむくむようになって疲れやすくなったと言われると、糖尿病からくる動脈硬化で虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)を起こしていたり、腎機能不全を起こした結果、足がむくんだ可能性が高いと予想します。

 

・定期的に飲んでいるお薬の情報

 

お薬手帳をもっている人は必ず持ってくるようにして下さい。救急外来受診のときは持ってくるのを忘れたということがときどきありますが、普段から飲んでいる薬の情報はとても大切です。

自分の病名をしっかりと覚えていなくても、薬を見ることでどんな病気を持っているのか想像できますし、薬の飲み合わせの問題もあるので、それによって使える薬、使えないお薬が変わってきます。

 

心臓の弁の手術後でワーファリンという血液をサラサラにするお薬を飲んでいる人が、最近、物忘れが酷くなりフラフラ歩くようになり、そして右半身の動きもにぶくなったと言われると、慢性硬膜化血腫という病気を左側に起こしているかもしれないと予想できます。

 

 

 

再診時(いつもかかっている先生にあう場合)

 

ここでは外科手術を受けて退院し、外来フォローとなったときを想定します。

 

・手術後の変化で変わったことはないか

 

手術を受けた病院で外来をしてもらうことの最大のメリットは何か分かりますか?

それは自分を執刀した先生が診察をしてくれるということです(病院によっては違うケースもあるかもしれませんが)。

手術の状態がどうであったかを把握しているため、今後、どういったことが起こる可能性があるのかを一番想像できるのは執刀医です。

不思議なことに執刀した患者さんは、名前がすぐに出てこないことはあっても、顔をみると体の中がどうだったかはよく覚えているものです(術中にトラブルがあった患者さんなどは特に)。

 

そのため術後に体調をくずことがあっても、それが手術に関係あるのか、他に原因があるのかを素早く的確に判断することができます。

 

*手術の内容によっては誰が外来診察しても影響がほとんどないようなものもあります。

 

また、術前なかった症状が術後に現れることも珍しくありません。

そのときは、初診時の欄にも書きましたが、その症状がいつ、どのように起こっているのか、時系列に沿った情報を教えてもらえると、その原因をつきとめる手助けになります。

 

これは抗がん剤などで副作用を心配されている人の原因診断にも役立つと思われます。

どんな症状がいつから、どんなときに起きたのか、またそれはひどくなっているのか、あまり変わらないのか、抗がん剤治療のスケジュールと照らし合わせた情報があると副作用なのかどうかの判定がつけやすくなるでしょう。

 

 

 

外来時にお勧めすること

 

すでにされている方も多くいると思いますが、とにかく気になったことはメモしておくようにしておきましょう。

上記の例でお分かりいただいたかもしれませんが、口頭で聞いた病状経過だけでもいろいろな原因を想像することが可能です。

あなた自身にとってはたわいもない症状と思っていても、それが実は何かの前兆だったという可能性もなくはありません。

そして、聞こう聞こうと思っていても、いざ、外来時になると度忘れすることもあるでしょうし、聞くタイミングを逃すこともあると思います。

 

そんなときに、

「これ、聞きたいことをメモしてきました。」

と外来診察が始めるときにメモを渡せば、聞き逃すこともありませんし、いい主治医であれば丁寧に質問に答えてくれると思います。

 

 

 

この情報をもとに、少しでもみなさんの外来満足度が上がることを期待していますニヤリ