狭心症や心筋梗塞に対する、心カテーテル治療と冠動脈バイパス。
どちらも外科医がすると思ってませんか?
日本の場合、基本的にはカテーテル治療は循環器内科医、冠動脈バイパス術を心臓外科医が担当します。
それではどうやって治療方針が決定されるのでしょう。
胸が痛くなり心臓病疑いで病院を受診したとき、最初に対応してくれる診療科が循環器内科になります。心臓や血管の病気のスペシャリストです。
採血、心電図検査、心エコー検査などを行い、狭心症や心筋梗塞が疑われる場合、必要に応じて冠動脈CT検査や心カテーテル検査を行い、実際にどこの血管がどれくらい細くなっているのかをチェックします。その結果をもとにして、カテーテル治療が合うのか、冠動脈バイパス術が合うのかを検討するのも循環器内科の先生たちが最初に対応します。
その結果、カテーテル治療が難しく、手術の方がいいと判断されると外科に紹介として回ってきます。
外科側は全身状態を評価し、手術に耐えれる体力があると判定すると、それをもとに手術方法を検討し手術日程を調整し手術を行います。
そう。
心臓血管外科医はいきなり手術をしません。
循環器内科の先生からの紹介がない限り、我々のところに患者さんがたどり着くこともないのです。
そこで大事になるのが、循環器内科医と心臓血管外科医の関係性。
大きな病院になってくるとハートチームといって、内科・外科など複数科が集まり合同で患者さんの診察にあたっている所も増えてきました。
長く心臓を専門として働いていると、中には犬猿の仲という病院もあるとの話をときどき耳にします。
内科は自分たちのカテーテル治療がすぐれており、外科にまかせると手術が下手で患者さんの状態が悪くなって内科に帰ってくると文句をいい、外科は内科が患者さんをだらだらと治療し手がつけられなくなってから外科に紹介してくると文句をいう。
患者さんにとっては笑い話では済まされない一大事ですよね?
一体、どっちを信頼すればいいのか。
ただ、上記内容には大切なポイントが含まれています。それはお互いの強みを共有することです。カテーテル治療も冠動脈バイパス術も高い技術力が要求されます。もちろん、腕のいい医者が治療した方が結果も良くなります。内科、外科の間でお互いの強みがきちんと共有できていれば、それぞれの患者さんにおいて、どちらの治療がベストなのかを相談して決めることが可能なのです。
最近はハイブリッド治療といって冠動脈バイパス術とカテーテル治療を組み合わせる治療も登場してきました。
内科と外科が手を取り合って、「最高の治療」を提供できるハートチームが全国に広がっていくといいですね。
*幸い私が勤務していた病院は、内科・外科の連携がよく在職中は気持ちよく仕事をさせてもらうことができました。その当時の循環器内科の先生たちにこの場をお借りしてお礼を申し上げます。