前回の記事で、カテーテル治療は万能ではないと書きましたが、では、どんな人にはこの治療が合うのでしょうか?

 
現在のところ、カテーテル治療で一番メリットがあるのは、急性心筋梗塞を起こした患者さんの早期治療だと言われています。
(急性心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血流を送っている冠動脈という血管が突然詰まって起こる病気のことを指します。)
 
可能であれば症状発症から12時間以内3時間以内ならさらに良い)、そして病院到着から血流再開までが90分以内だと、その後の経過が良くなる*と言われています。
 
最近(6-7年前より)はSYNTAXスコアといって、冠動脈病変の複雑さ・重症度を点数化して評価するようになってきました。点数が低い場合はカテーテル治療が有効と言われています。
 
それでは、逆にカテーテル治療が向かない人はどんな人でしょう?
一般的に下記に該当する人は手術(冠動脈バイパス術)のほうがメリットが高いと言われています。
 
・心臓の血管があちこち悪くなっている人(3枝病変)
 
 心臓に栄養を送る血管を冠動脈と呼びますが、左に2本(左前下行枝、左回旋枝)、右に1本(右冠動脈)の合計3本あります。カテーテル治療では、造影剤という腎臓に負担をかける薬を使うことや、放射線の被曝量を考慮して、一度に全ての病変を治療することができません。そのため、何回かに分けて治療する必要が出てくるため、一度に全ての病変が治療できる冠動脈バイパス術のほうが治療成績が良いとされています。
 
・左主幹部病変といって、左の冠動脈の根元が細くなっている人
 
 カテーテル治療をしている間は、狭くなったところを風船で膨らませるため治療の間は血流を一時的に遮断した状態となります。そのため、2つの左の冠動脈(左前下行枝、左回旋枝)が合わさった左主幹部といわれるところを治療するときは、治療に伴う血流遮断によって命に関わる不整脈を誘発してしまう危険があります。
 
・若くして狭心症を起こしている人
 
 若くして狭心症を起こしている人は、普通の人と比べると治療後も狭心症や心筋梗塞を繰り返す危険があります。カテーテル治療は細くなった場所を広げる治療となるため、治療した部位が再閉塞してしまうと急性心筋梗塞を起こすことになります。それと比べると冠動脈バイパス術は血流のう回路を作る手術となるため、狭くなったところが閉塞しても、つなげた血管を経由して血流が維持されるため、突然死を予防することができます。つなげる血管にもよりますが、治療後の長期成績も冠動脈バイパス術の方が一般的にはカテーテル治療よりも優れていると言われています。
 
・腎臓の機能が悪い人
 
 カテーテル治療の間は、治療する血管の状態を見るためにレントゲンにうつる造影剤というお薬を血管の中に流しながら血管の撮影を行います。そのお薬は腎臓で分解されるため、腎機能が弱っている人は腎臓の機能をさらに悪化させてしまう危険があります。命に直結することは少ないですが、血液透析をしないといけなくなる期間を早める可能性が高くなります(もちろん、冠動脈バイパス術を受けた場合でも、手術後の経過がよくないと腎機能を悪化させることがあります)。
 
以上のように、それぞれの治療に合う人、合わない人があるので、主治医・担当医の説明をよく聞いて、その人にあった治療を選択するようにして下さい。
 
注意しないといけないのは、同じ病気でも人によって合う治療合わない治療が変わってきます。年齢、持病の状態、動脈硬化の進展具合、病気の重症度など、さまざまな要因を考慮し慎重に治療方法を決定する必要あります。
 
*参考資料