ここ数日は状態が安定していた。
他のスタッフとも相談した結果、しばらく頑張って治療することで意見が一致した。
保険を度外視して、アルブミン製剤を連日使用し、輸血をして貧血を補整。
そんな毎日が続いていた。

転帰は突然やってくる。

今日は緊急入院してきた患者さんの応対におわれていた。
他の患者さんを診ている余裕がないくらい。
全身状態を把握し、手術のタイミングを教授と協議。
麻酔科、ICUへ話を持っていく。
患者家族への説明。
そんなこんなであっというまに夜になっていた。

うちはグループ診療をしているため、自分が診れなくても、他のスタッフが病棟の患者さんを診るようになっている。
重症の患者さんが現在3名いるので気にはしてたんだけど・・・。

変化に気づいたのは21:00をまわった頃だった。
いつもより酸素の値が悪いとの看護婦の話を聞き病室へ。
SpO2(酸素の値、普通の人は97-100%ある)が90前後に下がっていた。
しかもFiO2は85%(酸素の濃度、普通の空気は21%)。

何事?

胸部レントゲンをとってみると右肺がつぶれていた。
気胸っていうやつだ。
おそらく人工呼吸の圧に負けて肺が破れたのだろう。
胸の中にたまった空気を抜いてあげないといけないが、あんまり肺がつぶれていないので管をいれるのはかなり危険だと呼吸器内科のコメント。
でも酸素が低いままにしとくのも危険が伴う。

現状を家族に説明した。
このまま様子をみることもできる。
危険を承知で管をいれることもできる。
どちらを希望されますか?

「どちらがいいのか、自分では判断できないのでおまかせします」との返事だった。

たまった胸水を抜くために中心静脈ラインをとるときに使う点滴を胸の中にいれている。
空気が抜けないか、やってみたが抜けるのは胸水だけ。
少しはましかと思い、陰圧をかけれるバックをつけてみる。
もちろん、逆流しないように一方弁つきのもの。

下手に痛い思いをさせて寿命を縮めてしまうより、このまま鎮静しながら様子をみることがいいのかなぁ?

まだ結論がでない。
とりあえずは、今晩はそばについていて様子を診ておこう。
どういう結果であれ見届けなくっちゃ。