巷間、単身カラオケボックスに乗り込む文化がある。
目的嗜好も志向もそれぞれとは思う。都市部の住宅事情により、自宅で歌など歌えない、という人が九割以上の世の中である。
ゆえに、発声法を学んでもなかなか、遠慮なく声を出して試行錯誤がしにくい、という声が一般的。
しかしもしも練習したいなら、年々安くなったカラオケボックスは、有効だろう。歌う場所がないという人にはすすめてきたものだ。
未体験の人はだいたい、どきどきでためらいがちである。一人で行って一人で歌っている姿、事情を見られたり想像されたりするのがこわいもの。
しかし、一度行ったらあまり人目は気にならず、案外楽しく過ごせるものと、あんなに渋々だったことも忘れて語られる。十人中十人の確率。
今月ついにそれに挑んだ方があり、やはり、良かったらしい。
「自分はこれくらい歌えるんだ」
「案外歌えるじゃないか自分」
といった体感は、大事なことだと思う。
そして、ひとりならこれだけ出来るならば、他人が同席しただけでどれだけ我を忘れてしまう性質であるか、が自覚できよう。これはもう、発声法以前の問題であるということも。
小さな自信を積み上げて欲しい。そう願う身としては、ひとりでカラオケ行って、「案外歌えるじゃん自分」と思える体験は、有効なんだなあと思った。
事実その方は、歌いだしの思い切りのよさが前回比ずっと良くなっていて、それが発声に及ぼす影響は多大。一気に光明がさしてきた。
こちらから強いたりも焦らせたりもしないが、苦手だと思う人ほど、歌ってもいないのだ。そんな自分には、気づいてもらった方がいい。