サウンド・オブ・ミュージック | On the Crossroad

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ミュージカル サウンド・オブ・ミュージック
(大阪 大阪四季劇場 2012/04/14)

劇団四季
江畑晶慧(マリア)
村 俊英(トラップ大佐)
佐和由梨(修道院長) ほか

有名すぎて見る気がおきない映画ってありますよね。
私にとっては「風と共に去りぬ」「屋根の上のバイオリン弾き」「サウンド・オブ・ミュージック」などがそうでした。PTAや教師や政治家までもが褒める映画なんてどうせロクなもんじゃねーだろ、とタカをくくっていて、ずっと敬遠し続けてきたのですが、後になって実際に見てみると、いずれも凄い映画であることが分かりました。
「屋根の上のバイオリン弾き」はロシア系ユダヤ人のポグロム(集団的迫害・虐殺)を扱った重い作品でしたし、「風と共に去りぬ」なんて、とんでもない自己チュー女がやりたい放題に暴れまくる、かなり痛快な映画だったのです。
で、「サウンド・オブ・ミュージック」ですが。

私が子供の頃、日曜日の昼過ぎにてんやわんやが司会を務める「家族そろって歌合戦」という、象印マホービン提供の番組がありました。タイトル通り、どこかの家族がそろって出てきて歌を競うという、まあ何が楽しいのかよくわからない番組でしたが、なぜかウチではいつも見ていたような気がします。
その番組で「サウンド・オブ・ミュージック」の挿入歌「ドレミの歌」などがよく歌われていたのですが、素人のこまっしゃくれたガキども・・・もとい、お子さんたちが、大人受けを狙った身振り手振りで、見え見えの媚びを売りながらこの歌を歌うものですから、実に不愉快でたまらず、そのため映画にまで悪い先入見を抱いてしまったのでした。
また、音楽の教科書にも「エーデルワイス」が載っていて、教科書に載るような曲は今も昔もくだらない曲と相場が決まっていますので、さらに映画に対する印象は悪くなるばかりでした。

しかし、大人になって実際にこの映画を観てみると、オーストリアを併合したナチス・ドイツに対するレジスタンスというヘヴィなテーマを持つ作品だったんですね。
修道女マリアが住み込みの家庭教師としてトラップ家にやってきます。天真爛漫な性格と音楽に対する深い愛情によって彼女はトラップ家の子供たちに強く慕われるようになり、やがて妻を亡くし頑なに心を閉ざしていたトラップ大佐からも愛され結ばれます。しかし時代はナチス・ドイツがオーストリアを併合した頃で、周囲の人びとは次々にナチス・シンパになっていきます。オーストリアを愛する大佐はナチスへの協力を拒み、妻と子供たちをつれてアルプスを越え、スイスへと亡命を図ります。
さすがに幼い少女も含むたくさんの子供たちを伴ってのアルプス越えなどちょっと話を盛りすぎだろうと思っていたら大間違い、実話がベースになっているというので驚きます。
「サウンド・オブ・ミュージックのテーマ」「ドレミの歌」「ひとりぼっちの羊飼い」「私の好きなもの(この曲はコルトレーンの演奏で知りました)」など、いつのまにか聴き知っていた名曲の数々が出てきますし、「エーデルワイス」などはセンチメンタルな他愛のないラブ・ソングどころではなく、失われゆく祖国(オーストリア)を悼む強烈な愛国歌だったのです。
もうひとつのテーマである家族の愛情の描かれ方も感動的ですし、マリアを演じるジュリー・アンドリュースの清楚な美しさも魅力的です。やはり文句なしの傑作だったんですね。

元々この作品はブロードウェイ・ミュージカルを映画化したものですが、現在大阪四季劇場で上演されているミュージカルは元のミュージカルを大御所アンドリュー・ロイド=ウェーバーが2006年にリメイクした作品がベースとなっています。オリジナルのミュージカルを観たことがないので、どこがどう変わっているのかよく分かりませんが、映画版と大きな違いはないようでした。
ジュリー・アンドリュースのイメージが強いマリア役ですが、江畑晶慧さんは元気溌剌な女の子といった感じで、また違ったマリアの魅力を引き出しています。修道院長役の佐和由梨さんの歌唱力は群を抜いています。目の前の舞台上で生身の人間によってこの作品が演じられるのを観ると、恥ずかしながら涙が出てしまいました。