「光る君へ」という大河ドラマが始まった。

女性が主人公の大河ということで、前に書いた「草燃える」に続き、思い出深い大河ドラマ「おんな太閤記」を今日はご紹介したい。

原作は、永井路子氏の「王者の妻」（あ、「草燃える」も原作は永井氏だった）。脚本は橋田寿賀子氏。

両氏ともに鬼籍に入られている。

私は、永井氏は生前からファンだったが、橋田寿賀子さんの凄さを知ったのは、恥ずかしながら、彼女が亡くなられてからである。

橋田さんというと、「渡る世間は鬼ばかり」に代表されるような、姑嫁戦争が中心のホームドラマ、というイメージばかりがどうしても先行してしまっていた。それに加えて、「橋田ファミリー」なんていう言葉もあり、女帝っていう雰囲気もつきまとっていて、その力量には圧倒されているくせに、なんとなく「好き」と言うのが逆に憚られるような、複雑な思いがあったのかもしれない。

亡くなられてから、数々のエピソードを知るにつけ、

ああ、私はぜんっぜん分かってなかった！！

と、申し訳なく思うくらい、橋田氏の功績については、「おんな太閤記」を見た当時はもちろん、その後も長く過小評価してきたことを、まず告白しておこう。

「おんな太閤記」の主人公は、豊臣秀吉の妻の、寧々である。

40年も前（！！）に放送されていたこのドラマを、最近になって思い出すことが多くなったのは、つい最近までやってた「どうする家康」を見ていたからかもしれない。

「どうする家康」で和久井映見さんが演じた寧々は、「おんな太閤記」で主演した佐久間良子さんの寧々に、実によく似ていた。

全体に、「どうする家康」で描かれていた人物像、かなり「おんな太閤記」を彷彿とさせるような設定になっていたような気がする。

といっても、秀吉はちょっと違ったかな。西田敏行さんの秀吉は、ムロツヨシのあの得体の知れない恐ろしい化け物、ってよりは、もっと人間臭すぎる、良くも悪くもどうしようもなく人間でしかない男であった。そして、主人公は妻の寧々である。そういう「天下人に昇り詰めたけどしょせんは人間」というものと、生涯寄り添い、その変化につき合い、時には絶望しながらも、最後は豊臣家というものを自ら断ち切る。そんな寧々の生き様を描くのが「おんな太閤記」である。

橋田寿賀子氏のドラマは、台詞が長いので有名だったそうである。

これも、亡くなってから知ったのだが、橋田氏は

「主婦は、家事をしながらテレビを見るのよ。だから、仕草や表情ではダメ。キッチンに立っていても、テレビから台詞が聞こえたら、お話しの展開が分かるでしょう？だから私は、画面を見ていなくても台詞だけで分かる、そういうドラマを作るの」

と仰ったという。

お前さま、お分かりにならぬのか、この者たちは、尾張の貧しかったころからどれだけお前さまに尽くしてきたことか。言葉が過ぎたとはいえ、お前さまを思うあまりの注進ではありませぬか。それを切り捨て、近江の衆ばかりを信用して彼らの言うことを切り捨てるというのなら、私もお前さまにはもうとてもついていかれぬ、それでもよろしいのなら今すぐお暇を下され、寧々はお義母さまと中村へ帰ります………

↑は今てきとーに書いただけの全く架空の台詞なんだが、まあ、こんな感じ（ホントか？）。

思えば、私の母は、洗い物でもしながら、背中で寧々の台詞を聞いていたのかもしれない。

「おんな太閤記」。数々の名作がひしめく大河ドラマの中でも、かなりお薦めの作品である。

おんな太閤記～大河ドラマと私Ⅱ～