私はワクワクした気持ちを抑えながら帰路に着いた。なぜなら先週Amazonで発注したあのウイスキーが届くからだ。私は考案という言葉が大好きだ。私は某有名お菓子メーカーの開発担当者だ。日々、消費者の方々に喜んでもらえるお菓子を考案している。考えるという行為に限りはない。私達の脳内に永遠は確かにあると私は信じている。

「ただいま」

「おかえり。何か届いてたわよ」

私が家に帰ると妻、マサコがそう言ってダンボールを私に手渡した。

「ありがとう」

リビングに行くとまだ生後間もない我が子、ケンジがすやすやと眠っていた。

「ケンジ、ただいま」

ケンジはむにゃむにゃと口を動かした。

私は着替えもせずにカッターを手に取り、マサコから渡されたダンボールをこじ開けた。

「マサコ、出産祝いにこれ買ったんだ」

私はそう言って右手に持っていた山崎のノンビンテージを掲げた。

「あなた、それ今かなり高いんじゃ」

「まぁ、お互い禁酒頑張ったってことで」私はマサコに気を遣って彼女が妊娠してからは彼女と同じように禁酒していた。

「でもアタシ、ハイボールは好きだけど、ストレートとかロックはあんまり…」

「うん、知ってる。だからちょっといい方法を思いついた」


食事の時間になった。今日はビーフシチューだった。ケンジは母乳が苦手らしく飲むのは哺乳瓶ばかりだった。だが、食欲はかなり旺盛で、みるみる成長していった。太ってる私に似たのかも知れない。

ケンジは今日も哺乳瓶を飲み、しばらくするとお腹一杯になったようでそのまま寝てしまった。

「ねぇ、あなたさっきの話はどういうこと?」ビーフシチューを食べながらマサコは言った。

「えっと、まずいつもの角ハイボールを作るだろ?」

「ええ」

そう言って私は氷、炭酸水、そして常備している角瓶を用意し、丁寧に角ハイボールを作った。私達は角ハイボール缶も好きだったが、少し濃い目に作れる角瓶と炭酸水で作る角ハイボールを好んだ。

「そんで」

私はその上から少量山崎を垂らした。

「これで完成」私は満足げに山崎のキャップを閉めた。

「あら、とっても美味しそうだわ」マサコは目を輝かせた。私はそれを見て心底買ってよかったと思った。

「じゃ、ケンジの未来に乾杯」

「乾杯」

ガラスの乾いた音が平和を歌うように響いた。