それと・・・・・・ほぼ同じ頃、ノーブル・ミッシェル城の中庭で。
私も王子様たちと同じように、ノンちゃんの言葉に驚いていた。
まみ「え?私が・・・・・・ですか?」
大学の夏休み最後の日。
私は、約1ヶ月ほど前に知り合ったノンちゃんに誘われ、お城に遊びに来ていた。
そこで急遽、執事研修の手伝いを頼み込まれたのだった。
ノーブル「そうじゃ。せっかくの休日にすまないが・・・・・・ぜひお願いできんかの?今日一日だけ、王子たちの代わりに彼らの仮の主に・・・・・・」
まみ「ちょ・・・・・・ちょっと待ってください。そんなこと急に言われても・・・・・・」
ノンちゃんとゼンさんの背後には、6人の執事たち。
彼らは戸惑う私を、まっすぐに見つめている。
(う・・・・・・王子様たちの執事をしている彼らが、この私の執事に・・・・・・?そんなこと、さすがに・・・・・・)
まみ「あの、私が王子様たちの代わりだなんて、さすがに・・・・・・」
ノーブル「うーむ・・・・・・そうか・・・・・・。まみさんにしか頼めないことだと思ったんじゃが・・・・・・」
(私にしか・・・・・・?)
首をかしげる私に、ゼンさんがコソッと耳打ちしてきた。
ゼン「長らく男性だけにお仕えしていたせいか・・・・・・ここにいる全員の方が、女性のエスコートの課題で、つまずいてしまったようで・・・・・・」
まみ「そう、だったんですか・・・・・・」
(そんなふうには見えないけど・・・・・・)
そのとき突然、頭上から笑い声が降ってきた。
??「バッカじゃねえの?」
(え・・・・・・?)
全員で見上げると、その先にいたのは・・・・・・シャツを着崩したかなりルーズな雰囲気の少年だった。
このお城の情景にそぐわない出で立ちの彼は・・・・・・大きな木に登ったままの状態で、ニヤニヤ笑いながらこちらを見ている。
まみ「あの、彼は・・・・・・?」
そう言いながらゼンさんを見ると、いつも穏やかなはずの彼の顔がめずらしくしかめられていた。
ゼン「あの少年は・・・・・・本日よりこちらの城で雇うことになりました、執事見習いのテオでございます」
まみ「執事見習い・・・・・・!?」
(全然、そんなふうには見えないけど・・・・・・)
驚く私をよそにゼンさんは、木の上の彼に声をかける。
ゼン「テオ。キミは執事の見習い研修に行っていたはずでは・・・・・・?」
(テオっていう名前なんだ、あの子・・・・・・?)
テオ「あんな簡単なの、やってられっかよ。コイツら見てる方がおもしれえもん」
屈託のない笑みを浮かべながら、彼は執事たちに視線を送る。
テオ「お前らさあ・・・・・・全員、執事に向いてねえよ」
(な、なんで急にそんなこと言うの?)
ひょうひょうとした少年の語り口に、この場にいた執事たちは固まった。
そんな中、ただひとり、ノンちゃんだけが静かなトーンで彼に問いかける。
ノーブル「なぜ、そう思うんじゃ?テオ・・・・・・?」
テオ「だって・・・・・・例えば、お前とか・・・・・・」
少年は木の上から、クロードさんを指さした。
テオ「愛想がなさすぎ。さっきエスコートされてた女も、完全に顔がこわばってただろ」
言われたことが図星だったのか、クロードさんは何も言わず唇を噛みしめる。
テオ「次にお前」
続いて、指を指されたのはリュークさん。
テオ「・・・・・・単純にオドオドし過ぎ。女も完全になめてたみたいだし?」
小馬鹿にしたような言い方に、リュークさんはムッとしたように彼をにらんだ。
(ちょっと、この子・・・・・・)
テオ「で、あんたは、まあ・・・・・・」
その指先が、今度はアルベルトさんに向かった。
テオ「・・・・・・おっさんのクセに足腰が丈夫そうでいい気がするけど、その隣はダメだな」
アルベルト「おっさん・・・・・・」
固まるアルベルトさんの隣で、ルイスさんは黙ったままじっと少年を見つめ返している。
テオ「もっと身体、鍛えねえと。女を抱きかかえたくらいで、ヨロッとしてたら世話ねえし。・・・・・・それから・・・・・・」
(まだ、あるの・・・・・・?)
彼の視線は残りのふたり、ジャンさんとユウさんにそそがれた。
テオ「そっちのふたり・・・・・・。ふたりはまあ、そこそこやってた気がするけど・・・・・・えっと、ユウ・・・・・・だっけ?お前の方は単純に暗いよな」
(・・・・・・そんな・・・・・・!)
私の幼なじみでもあるユウお兄ちゃんのことまでそんな風に言われ、私は思わず口を挟みそうになる。
だが・・・・・・そのときふと気づく。
これだけ言われても、彼らはなぜか何も言い返さない。
(どうして何も言わないんだろう・・・・・・もしかして・・・・・・それぞれ当たってるとか・・・・・・?)
そう思いながら木の上にいる彼を見上げると、そこにはドキッとするほどまっすぐな瞳があった。
漆黒色の、意思の強そうな鋭いまなざし。
その奥には、何か深いものが隠されている気がした。
(言葉遣いには問題があるけど・・・・・・この子、ちゃんと人のことを見抜く力があるのかな・・・・・・)
そんな彼は執事たち全員に向けて、こう言い放つ。
テオ「そもそも・・・・・・男とか女とか・・・・・・仕える相手によって、執事が態度を変えるって、そんなのおかしいだろ」
(それは・・・・・・確かに・・・・・・)
シンと静まり返ったあとに・・・・・・ノンちゃんの笑い声が辺り一面に響いた。
ノーブル「ふぉっふぉっふぉ。いやー、結構、結構」
(え・・・・・・?)
手をパンパンと叩いたあとで、ノンちゃんはスッと鋭い視線をゼンさんに向ける。
ゼン「はい、かしこまりました」
暗黙の命令を受けたゼンさんは、目の前の木によじ登り、少年の腕をつかんだ。
(あ・・・・・・)
テオ「やめろっ!離せよ・・・・・・!」
捕獲される少年を、ノンちゃんはいつになく厳しいまなざしで見ている。
ノーブル「見習いの身でありながら、先輩執事に対してなんという口の利き方じゃ」
手足をバタつかせながら、少年はゼンさんの小脇に抱えられて降りてきた。
テオ「うっせえ!じじい!」
(ノ、ノーブル様にじじいって・・・・・・!)
私と同じく執事たちも動揺した様子で、見上げている。
そのとき、私は一瞬、少年と目が合った。
(あ・・・・・・)
テオ「見てんじゃねえよ!」
大声をあげる彼の背中を、ゼンさんがパシッと叩く。
ゼン「レディーに対してなんという口の利き方・・・・・・慎みなさい!」
凛としたそのひと言で、少年は勢いを失ったようにグッと顔を下に向ける。
ノーブル「皆の者、悪かったのう。ウチの執事見習いが失礼なことを・・・・・・」
ノンちゃんは少年の頭に手を置き、無理矢理頭を下げさせた。
ノーブル「とある事情で預かっとるんじゃが・・・・・・基本的な言葉遣いからして、なっておらん状態でな・・・・・・申し訳ない、この老いぼれに免じて許してくれ」
その言葉に、すっかり恐縮する執事たち。
(とある事情・・・・・・ってなんだろう・・・・・・。でも、彼の様子を見ていると、何かありそうだなって気はするんだけど・・・・・・)
ふと執事たちに目を向けると、やりこめられた悔しさも手伝ってか、彼らの瞳にはやる気が満ちあふれているように見えた。
執事たちはチラリと顔を見合わせたあと・・・・・・その中のひとり、ルイスさんが進み出る。
ルイス「まみ様・・・・・・」
まみ「・・・・・・はい」
ルイス「・・・・・・ぜひ、私どもの研修にご協力していただけないでしょうか?」
まみ「え?でも・・・・・・」
ためらう私に向かって6人全員がスッと頭を下げた。
執事たち「ぜひ、お願いします!」
(う・・・・・・)
私は頭を下げる彼らの姿を前に、徐々に気持ちをやわらげていく。
(・・・・・・まあ、さっきのあんなやり取りを目にしたら、さすがに断りにくいし・・・・・・それに、少しでも私でお役に立てるなら・・・・・・)
まみ「かしこまりました。1日だけなら・・・・・・」
そう答えると、執事たちはそれぞれ頭を上げ、ホッとした表情を見せる。
執事たち「・・・・・・ありがとうございます」
ノンちゃんもうれしそうな表情でうなずいた。
ノーブル「ありがとう、まみさん。そう言ってくれると信じていたよ。では・・・・・・早速、誰とペアになるかを考えんとな。・・・・・・誰か、希望はあるかね?」
(希望・・・・・・)
そう言われて、私が一番最初に視線を送った執事は・・・・・・。
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