夏の終わり、涼風に乗ってひぐらしの鳴き声が聞こえ始める頃。
ノーブル・ミッシェル城の議会質には、定例会議を終えた王子たちがいた。
キース「ああ、わかった。こっちは適当にして帰る。・・・・・・あ?ったく、グダグダとうるさいヤツだな、切るぞ!」
イラ立たし気に携帯を切り、キースは大きくため息をつく。
キース「リュークのヤツ・・・・・・執事の分際で、人の行動に口出ししやがって!」
それを見かねたように、エドワードが穏やかな声で話しかけた。
エドワード「まあまあ、キース王子。・・・・・・執事はいつも、私たちのためにと尽くしてくれているんですから・・・・・・」
たしなめるような言葉を聞いて、ピクッと肩を動かしたのはジョシュアだった。
ジョシュア「だが、それがアイツらの仕事だろう?主の要望に対し、それを忠実にこなすのが務めではないのか?」
エドワード「まあ・・・・・・それは、そうかもしれませんが・・・・・・」
エドワードの隣で、ロベルトがポツリとつぶやく。
ロベルト「忠実にこなされすぎても困りものなんだけどね・・・・・・」
深刻ぶった声色に、グレンがいたずらっぽい笑みを浮かべた。
グレン「そういえば・・・・・・アルベルトさんって、いつもロベルト王子のあとを追いかけまわしてますよね」
その言葉にロベルトが首をすくめていると、ウィルがフッと微笑む。
ウィル「何か・・・・・・逃げないといけない理由でもあるの?」
ロベルト「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・・・・その、追われるとつい逃れたくなるっていうか・・・・・・いわゆる人間の性ってヤツ?」
グレン「なんですか、それは」
グレンがあきれたような声をあげる。
グレン「その、ひとつのところにじっとしていられないという性分は、執事云々というより、王子としての資質が問われそうな気がしますけども・・・・・・」
ロベルト「・・・・・・ひどっ、グレたんってば・・・・・・!」
そんなやりとりを前に、エドワードが間に入った。
エドワード「しかし、なんだかんだ言っても・・・・・・私たち王子が安心して公務に当たれるのは、執事たちのおかげではありませんか?」
彼のにこやかな笑顔に、場の空気が急になごんでいく。
エドワード「私もルイスがいてくれるおかげで、すごく助かっていますし・・・・・・。みなさんも、そうお思いになりませんか?」
その問いかけに、王子たちはそれぞれ顔を見合わせて黙り込んだ。
・・・・・・やがて、携帯を胸にしまったキースが、ポツリとつぶやく。
キース「まあ・・・・・・よくやってる方なのかもしれんがな、アイツも。・・・・・・新人という意味では」
彼の言葉に触発されてか、それぞれ口を開いていった。
ウィル「ウチの執事のクロードは・・・・・・年々、世話女房のようになっている」
ロベルト「世話女房って?あのクロードさんが?」
ウィルはうなずきながら、眉間に深いシワを刻んだ。
ウィル「ああ・・・・・・この間、たまたま夜中に見かけてな」
彼の小さい声に、みんなが耳をそばだてる。
ウィル「俺のネクタイにアイロンをかけていた。・・・・・・微笑みながら」
その姿を想像した王子たちは、複雑そうな表情を浮かべた。
ロベルト「ジョ・・・・・・ジョシュアくんのところのジャンさんは、どんな感じ?」
ロベルトの問いかけに、ジョシュアは渋い顔をする。
ジョシュア「ジャンはダメだな。てんでなっていない。・・・・・・この間も、遠方の国のある文献で見かけた『キビダンゴ』という料理を用意させたのだが・・・・・・」
ロベルト「ある文献って・・・・・・?」
ウィル「桃から生まれた男の話・・・・・・?」
コソコソと話すふたりを前に、ジョシュアが目を細めた。
ジョシュア「ああ、よく知っているな。・・・・・・なんでもあの『キビダンゴ』という料理は、食べさせた相手を一瞬で従わせることができるらしく・・・・・・」
グレン「イヤ、それは・・・・・・モゴモゴ・・・・・・」
否定しようとするグレンの口を、ロベルトが塞ぐ。
ジョシュア「・・・・・・なんだ?」
ロベルト「いーえ、どうぞ続けて?」
ニッコリと微笑むロベルトに、ジョシュアは少し不思議そうな表情をしつつも話を続けた。
ジョシュア「・・・・・・で、その『キビダンゴ』をある会合のために100人分、用意しておけと言ったのだが・・・・・・ジャンのやつ、用意するのに予定より2分もオーバーした」
ため息をつくジョシュアを前に、キースがあきれたように言う。
キース「てゆーか・・・・・・そんな聞いたこともない食べ物を100人分も用意したのがすごいな」
すると、ジョシュアはムッと顔をしかめた。
ジョシュア「別に俺は、ワガママを言ったわけではない!ただ・・・・・・外交を有利に進めるために・・・・・・!」
ロベルト「まあまあ、ジョシュアくん、そんな風にカリカリしないで。・・・・・・確かにそういう料理があれば、俺もアルに食べさせたくなるから、気持ちはわかるよ」
エドワード「そうですね、私もそう思うかもしれません」
ふたりの言葉に、ジョシュアは仕方ないといった様子で息をつく。
そんな最中・・・・・・エドワードはそれとなくグレンに顔を向けた。
エドワード「グレン王子の執事、ユウさんはどんな方なんですか?」
グレンはかすかに目を見開き・・・・・・口を開く。
グレン「ユウ・・・・・・ですか?そうですね。彼は優秀な執事ですが・・・・・・」
言いかけたきり固まるグレン。
そんな彼の言葉を待ちきれず、キースがうながした。
キース「優秀で・・・・・・なんなんだよ?」
それでも彼は口をつぐんだままだったが・・・・・・。
ほかの王子たちの視線を浴びながら、彼はゆっくりと口を開いた。
グレン「・・・・・・ところで、今、この城で執事たちの研修が行われていますよね・・・・・・」
キース「え?ああ・・・・・・」
グレンは軽やかに話をすりかえ、意味深なまなざしで王子たちを見る。
グレン「実はさっき、席を外した際にゼンから聞いたのですが・・・・・・」
つられるように息をひそめる彼らを前に、グレンはニッと口角を上げた。
グレン「・・・・・・これから行われる実習訓練に、あの彼女がゲストとして参加するかもしれないそうです」
エドワード「彼女、というのは・・・・・・もしかして?」
もったいつけるように間を置いて、グレンは口を開く。
グレン「はい。・・・・・・以前、エドワード王子とともに、この城のパーティーに来ていた・・・・・・あの女性ですよ」
その言葉にグレン以外の王子たちが同時に口を開いた。
全員「・・・・・・彼女が!?」
(続きます)
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