とある休日の朝のこと。
(プリンセス修行も今日はお休みだし、何をしようかな・・・・・・?)
久々に手に入れた余暇をどう過ごそうかと考えながら、私は軽い足取りで街を歩いていた。
手持ちの袋の中には、今、買ったばかりの焼きたてパン。
香ばしい匂いに胸を踊らせながら、赤く色づいた街路樹を眺める。
(わ・・・・・・キレイ)
日々の忙しさで気づけずにいたが・・・・・・肌に感じる空気はいつの間にか、すっかり秋らしくなっていた。
(秋と言えばなんだろう?芸術の秋、食欲の秋・・・・・・スポーツの秋っていうのもいいよね?)
とりとめもなく考えていると。
背後から、控えめに鳴らされた車のクラクションが聞こえてくる。
(え・・・・・・?)
振り向くとその車の運転席には・・・・・・こちらに向かって、たおやかな笑みを浮かべる彼がいた。
まみ「後ろ姿だけで、よく私のことがわかりましたね・・・・・・ゼンさん」
ゼン「ええ。まみ様のような素敵な女性なら、後ろからでもすぐにわかりますよ」
まみ「ふふっ・・・・・・もう、そんなお世辞を・・・・・・」
車を運転していた男性は、ノーブル・ミッシェル城の城主、ノーブル様の執事であるゼンさんだった。
彼のご厚意で、自宅まで送ってもらうことになったのだが・・・・・・。
隣には、新人の執事見習い、テオ少年の姿もあった。
テオ「なーにが『通りがかりなので送ります』だよ。思いっきり反対方向じゃねえか、ワザとらしい」
(ワザとらしいって・・・・・・でもそっか・・・・・・言われてみれば、ノーブル城はあっちの方向だから・・・・・・)
戸惑う私の視線を感じたのか、ゼンさんは強めの口調で言い返す。
ゼン「レディをエスコートするのは、男として当たり前だろう?」
彼はそう言ったあと、にこやかな笑顔を私に向けた。
ゼン「・・・・・・まみ様、大変失礼いたしました。ご無礼をお詫びいたします」
まみ「いえ、そんな・・・・・・」
テオ「けっ。何気取ってんだよ、図星だろ。顔赤いぜ?」
(図星って・・・・・・え?)
よくよく見ると、確かにゼンさんの頬は、ほんのり赤く染まっている。
(・・・・・・ゼンさん・・・・・・?)
その顔をニヤニヤ笑って見ているテオ少年に対し、彼はいつになく厳しい口調で答えた。
ゼン「・・・・・・テオ。その態度を改めないのであれば、宿題を倍に増やしますよ」
有無を言わせぬ声色に、大きく見開かれる彼の瞳。
テオ「なっ・・・・・・わかったよ!ったく・・・・・・」
あわててカバンから本を取り出し、その中身に視線をそそぐテオ少年に、私はホッと口元をゆるめる。
(あ・・・・・・でも・・・・・・)
まみ「あの・・・・・・ゼンさん。遠回りでしたら、私はここで大丈夫ですので・・・・・・」
バックミラーに映る顔をうかがうと、彼はフッと優しい笑みを浮かべた。
ゼン「お気になさらないでください。・・・・・・こうしてお車にお乗せさせていただいた以上、まみ様をおひとりで歩かせるわけにはまいりませんから」
テオ「・・・・・・このまま乗ってけばいいだろ。ゼンがこう言ってるんだから」
ぶっきらぼうなテオ少年の言葉に、私とゼンさんは微笑みを交わす。
まみ「・・・・・・よろしいですか?」
ゼン「もちろんでございます。・・・・・・少し、大通りをまわってまいりますね。道がスムーズなようですから」
まみ「はい、お願いします」
彼のご厚意に甘えようとした・・・・・・そのとき。
(あれ・・・・・・さっき歩いていた通りには、なかったよね?)
ふと目をやった景色の中に、街中を埋めつくすように貼られた、たくさんのポスターが見える。
(『6ヶ国主催・スポーツグランプリ』・・・・・・?)
デカデカと記載されたタイトルが気になり、私は信号待ちのタイミングを見計らって、ゼンさんに声をかけた。
まみ「あのポスター・・・・・・何か大きな催しもののようですけど・・・・・・ご存知ですか?」
ゼン「ああ、あれは・・・・・・その名の通り、6ヶ国それぞれで主催するスポーツの祭典のことですよ」
まみ「スポーツの祭典・・・・・・?」
ゼン「はい。毎年秋に行われる・・・・・・別名『王子・グランプリ』などとも言われる催しで・・・・・・王子様方が直接ご参加なされることも結構ございますよ」
まみ「そんなものがあるんですか・・・・・・」
初めて知った事実に驚きながらも、私は恋人である彼の顔を思い浮かべていた。
(そんな話・・・・・・以前、顔を合わせたときにはしてなかったけど・・・・・・参加したりするのかな?)
モヤモヤと考えていたとき、ゼンさんがポツリと声を漏らす。
ゼン「申し訳ございません、つい・・・・・・。まみ様は、あのお方から直接お聞きになりたかったかもしれませんね」
(え・・・・・・?)
少し戸惑いながらも、私は目の前の穏やかな笑みを見つめ返した。
ゼン「まみ様のフィアンセである、あの方から・・・・・・」
妙に切ない声色が耳に残り、私の胸に動揺が走る。
まみ「いえ、そんな別に・・・・・・」
言い知れぬ空気を、テオ少年の声が打ち破った。
テオ「あーあ・・・・・・。俺も外に出て、思いっきり遊びてえなあ・・・・・・」
彼は焦がれるようなつぶやきとともに、窓の外に見えるポスターに目をやっている。
(確かに・・・・・・ずっと執事の勉強ばっかりじゃ疲れちゃうよね・・・・・・)
私もつられて見ているうちに、じわじわとその式典に対して興味が沸いてきた。
(彼の国では、いったいどんなことをするんだろう・・・・・・?)
そんなことを考える間に、突然、鳴り出した携帯の着信音。
(あ・・・・・・)
そっと表示された名前を見ると、その相手は・・・・・・愛しい私の王子様だった。
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