まだ母さんが入院して間もない頃…
僕はお見舞いを済ませて、家路につこうとしていた。
外は夕焼けで赤く染まっていた。
歩いていると、1つの人影を見つけた。
ベンチに腰掛けじっと夕日を見つめる、おさげ髪の女の子がいた。
パジャマに薄地のカーディガンを羽織っているところをみると、ここの患者さんなんだろうな。
僕はどことなく寂しげな表情をしている彼女がとても気になり、近くまで行くと
「夕日、きれいだね。」
と声を掛けた。
彼女はびっくりして、僕の方を見た。
彼女は、大きくて澄んだ目をしていた。
「君…入院してるの?」
「ええ…」
「そっか…僕は母親のお見舞いに来たんだ。
病室の中じゃ退屈だろうから、たまには外に出ないとね。」
彼女は黙って、夕日へと目を向けた。
僕は慌てて
「あ…ごめんね、急に声なんか掛けちゃって…。
僕は結城真治。
君は?」
彼女はうつむくと、小さな声で
「…桜井 由衣…」
と答えた。
「由衣ちゃんか…いつから入院してるの?」
「入院してから、だいぶ経つわ。
もう治らないのかも…」
僕が彼女に会うのは本当に初めてだったが、なんとかしなくてはいけないと思った。
初めて誰かを、守りたいと思った。
「横…いいかな?」
彼女は黙って頷いた。
僕は彼女の横に座った。
「僕の母さん…長期入院になりそうなんだ。
命に別状はないんだけどね。
時々は、お見舞いに行くことになる。
その時は…君にも会いに行っていいかな?」
彼女は首をかしげて、僕の方を見た。
「僕が、由衣ちゃんの病気が早く治るように応援するよ。
そして治ったら…夕日を見に行こう。
うちの近くにある土手から見る夕日は、とてもきれいなんだ。
川がキラキラして…是非、君にも見せてあげたい。」
「本当?」
「うん、約束するよ。」
彼女は目を輝かせて、喜んでくれた。
僕らは暗くなるまで、いろんな事を話した。
僕はなるべく過去や今の事より、彼女の病気が治った後の事を聞くようにした。
そして'将来何になりたいか'という話にまでなって、彼女の答えは'普通のお嫁さん'だった。
子供の名前まで決めていたのには、びっくりしたな。
暗くなると同時に、僕らは別れた。
僕と彼女が話したのは、その1度きりだけだった。
『実は母の入院してる病院に、長い間入院してる女の子がいるんだ。
年は玲花と同じだったかな。
彼女とは1度だけ話をしたけど、次に訪れた時には意識不明になってしまっていて、それからずっと目覚めないんだ…
まぁ…話をしたのは1度だけだし、彼女が覚えているかもわからない。
僕の片思いだよ。』
玲花は、こんな僕をどう思うかな。
由衣ちゃんに会ったのも話をしたのも、たった1度きり。
それでも僕にとっては、誰よりも大切な人。
僕にとって、遠くて近い存在である玲花よりも…
Android携帯からの投稿
僕はお見舞いを済ませて、家路につこうとしていた。
外は夕焼けで赤く染まっていた。
歩いていると、1つの人影を見つけた。
ベンチに腰掛けじっと夕日を見つめる、おさげ髪の女の子がいた。
パジャマに薄地のカーディガンを羽織っているところをみると、ここの患者さんなんだろうな。
僕はどことなく寂しげな表情をしている彼女がとても気になり、近くまで行くと
「夕日、きれいだね。」
と声を掛けた。
彼女はびっくりして、僕の方を見た。
彼女は、大きくて澄んだ目をしていた。
「君…入院してるの?」
「ええ…」
「そっか…僕は母親のお見舞いに来たんだ。
病室の中じゃ退屈だろうから、たまには外に出ないとね。」
彼女は黙って、夕日へと目を向けた。
僕は慌てて
「あ…ごめんね、急に声なんか掛けちゃって…。
僕は結城真治。
君は?」
彼女はうつむくと、小さな声で
「…桜井 由衣…」
と答えた。
「由衣ちゃんか…いつから入院してるの?」
「入院してから、だいぶ経つわ。
もう治らないのかも…」
僕が彼女に会うのは本当に初めてだったが、なんとかしなくてはいけないと思った。
初めて誰かを、守りたいと思った。
「横…いいかな?」
彼女は黙って頷いた。
僕は彼女の横に座った。
「僕の母さん…長期入院になりそうなんだ。
命に別状はないんだけどね。
時々は、お見舞いに行くことになる。
その時は…君にも会いに行っていいかな?」
彼女は首をかしげて、僕の方を見た。
「僕が、由衣ちゃんの病気が早く治るように応援するよ。
そして治ったら…夕日を見に行こう。
うちの近くにある土手から見る夕日は、とてもきれいなんだ。
川がキラキラして…是非、君にも見せてあげたい。」
「本当?」
「うん、約束するよ。」
彼女は目を輝かせて、喜んでくれた。
僕らは暗くなるまで、いろんな事を話した。
僕はなるべく過去や今の事より、彼女の病気が治った後の事を聞くようにした。
そして'将来何になりたいか'という話にまでなって、彼女の答えは'普通のお嫁さん'だった。
子供の名前まで決めていたのには、びっくりしたな。
暗くなると同時に、僕らは別れた。
僕と彼女が話したのは、その1度きりだけだった。
『実は母の入院してる病院に、長い間入院してる女の子がいるんだ。
年は玲花と同じだったかな。
彼女とは1度だけ話をしたけど、次に訪れた時には意識不明になってしまっていて、それからずっと目覚めないんだ…
まぁ…話をしたのは1度だけだし、彼女が覚えているかもわからない。
僕の片思いだよ。』
玲花は、こんな僕をどう思うかな。
由衣ちゃんに会ったのも話をしたのも、たった1度きり。
それでも僕にとっては、誰よりも大切な人。
僕にとって、遠くて近い存在である玲花よりも…
Android携帯からの投稿