自分は困ったことにできるかどうかわからない場合はやる、恰好よくなるけど異常に手間がかかる場合はやる、という性格です。
おかげさまでそれほどもうからなくても技術だけは着実についております。
今回ご紹介するのもそんなやっぱりやめておけばよかった・・・、的な作業です。
ストリームヘッドライトインナーをリアルカーボン貼り。
どう考えても無理ですね。貼れるわけがない。
しかし本当に貼れないのか?と、思ったが最後です。がんばりましょう。
とは言ったものの、どう考えても一枚でピタッと貼れるわけがありません。
そもそもカーボンは無理をするとすぐに目に反映されてしまい、綺麗に貼れても全然恰好よくありません。
せっかく貼るなら綺麗でなければどんなに苦労をしても無駄なのです。
そこでチャレンジしたのが貼り合わせ。
一見簡単そうですが、カーボンは網目状に繊維を織ったものなので、カットするとどんどんばらけてしまうのです。
さらに貼り合わせ部の目が荒れるといかにも貼り合わせです!という感じでそれも恰好よくありません。
自分が考えたのは分割貼りの片側を樹脂で封印して完成させ、それを合わせ目のところで削り落とし、その上からもう片側を貼るというものです。
片側を貼るとカーボンの段差ができます。もう片側をその段差がかぶるくらいまで貼り、樹脂で封じ込めた後に研げばぴったり合わせ目になる、ということです。
う~む、文章にすると訳が分かりませんね。是非フィーリングでご理解ください。
しかしカーボンは樹脂の積層に時間がかかります。
一枚板でも大変なのですが、曲線に対してまず仕上げ、そこからもう一度分割片側を仕上げなければならないので、単純に2倍の手間がかかります。
写真では手前と奥にすでにカーボンが貼られ、樹脂が積層され、研がれた面があります。
対して中央はパテ整形の跡があると思いますが、プレスライン部で境目を作っています。
ここに微妙に段差をつけ、中央部を貼った後にこの段差を研いで貼り合わせを作るのです。
このようにカーボンを貼っていきます。
簡単そうに見えるのですが、カーボンはたやすく目がずれ、なおかつ貼り直しがほとんどきかない相当シビアなものです。
また、仮に失敗した場合、カーボンは無駄。さらに裏に塗っているラミネートプライマーをペーパーで除去して最初からやり直さなければならないのです。
自分も何度やりなおしたかわかりません・・・。
でもおかげでなかなか目がきれいですね。
こちらはプリウスサイドバンパー。
凹みの中をリアルカーボン化。
入り組んでいるのでペーパーがけが異常に大変。
一回目のクリアまでなんとかこぎつけました。
LEDとカーボンは本当に実際に見ないとすごさが伝わらない・・・。
ノーマルはこのように見えます。上のほうはまったく見えませんね・・・。
やはり実物を見てみないといろいろと判断できないものです。
実際にどう見えるかで考えることもあります。一度現物が見れてよかったです。
そして仕上げの樹脂塗り。
こうすると目が綺麗に出てきますね。
これは面だしで研いだものにとりあえずシリコンオフをかけただけです。
ここからもう一度樹脂を塗り、微妙な凹凸を取ってからクリアを吹きます。
分割貼りの場合、一度貼り終えて研いだら面をそろえるためにもう一度樹脂を塗るようにしています。
残念ながらリング状の部分までカーボンが定着しませんでした。
まあ、そりゃ無理ですね。
無理やり貼ろうとすると表の目が崩れてしまい、何のために張っているのかわからなくなります。
なので無理せず分割貼りです。
レザーの一枚貼りを多少無茶して貼って偉そうにしていても、実際にはミシンで分割貼りして何事もなく貼ったほうが仕事として正しい・・・。
カーボンの分割貼りも似たような感じでしょうか。
先ほどのリングの内径にカーボンを貼ったのですが、最後のインパラ樹脂をもう全体に一度塗ってしまいました。
そうすると目がまた現れます。
分割貼りがどの程度うまくいったかがここでわかるのですが・・・。
その前にこの目の揃いようはどうでしょう!?
分割貼りしたため、目を崩す必要がないためにラインが非常にきれいです。
そして写真中央が分割貼りの貼り合わせ部分です。
そりゃわかりますよ。でも、カーボンがばらけたり隙間が空いてカーボンがなくなったりはしていないのです。
ぱっと見たくらいでは分割してあるのはわからないと思います。
ただ、この形は好き好んでやりたい形状ではないですね・・・。
でも、この形状が貼れるとなんかたいがい貼れてしまいそうな気になります。
目がそろった状態で貼るのはエクスタシーですね。
ここも継ぎ目。
ここは形状上目は合いません。
でも目は規則正しく動いているためにそれほど違和感がありません。
無理やり引っ張ったりして合わせると目が非常に汚いのです・・・。
ここからもう一度全部を研ぎ、クリアを入れ、また研ぎ、クリアをもう一度入れ、研ぎ、磨き、終了です。
手間はかかりますがこの質感は本当にたまりません。
そしてインストーラーとしては普通はやらないことをよいクオリティーで仕上げることに快感を感じますね。
結果として今回の無茶はやってよかったということになりました。
しかしカーボン貼りの技術はその道の本当のプロから見ればまだ赤子のようなもの。
さらなるレベルアップを図り、高級外車のカーボンパーツと同じクオリティーで貼れるようになるまで頑張りたいと思います。
それではまた!