常連 I様よりカーボン施工をご依頼いただきました。
黒のRB3、内装は黒レザー、茶スェードのお客様です。
前々から思ってはいたことですが、茶スェードと茶木目は色が似ていることがより違和感を生んでおり、どうにかならないかということで、艶のある黒で普通じゃない感が欲しかったためリアルカーボン化にあいなりました。
内容としてはスタンダードなカーボン施工です。
ですが、カーボンはスタンダードですら難しいのです・・・。
お預かりした木目パネル、計6点です。
このくらいの内容ですと9万円前後になります。
高いですよね?高いと思います。
しかし作業の難易度、工程、そして最終的な質感はこの金額を超えるものだと思っております。
それでは初公開、カーボン施工詳細説明です。
ただ、今回に関してはほんのちょっと企業秘密というか、さすがにブログでばらすと今までの苦労が・・・、ということなので伏せるところは伏せています。ご了承くださいね。
木目パネルをまず足付けします。
このようなクリアーで仕上げられたパネルは足付けしないと簡単にはがれます。
プラスチック部品であっても足付けしないとはがれます。
つまり足付けは絶対に必要なのです。
木目パネルだと180番くらいでの足付けにしてみます。
艶が一切なくなるまでしっかりと足付けしなくてはいけません。
なぜなら艶のあるところを残し、作業完了後にその部分が剥離すると、そこから剥離が進んで全体に広がってしまいます。
なので、部分的な剥離も起こさぬよう、いつもよりさらに足付けが重要なのです。
足付けしたパーツを黒に塗装します。
黒のカーボンを貼る場合はかならず黒に塗装します。
これは、カーボン繊維のアミになっている部分は隙間が開いて下地がかならず見えます。
黒いパーツであっても足付けで白っぽくなったところが線維を貼った後に見えてしまうことがあります。
かならず一度黒で塗装するのです。
ここが一番のポイントかもしれません。
表面にラミネートプライマーという樹脂を塗ります。
この樹脂は非常に粘性が強く、半乾燥中はべたべたした状態になります。
このときにカーボン繊維を貼りつければ剥離はかぎりなく少なくなります。
ただ、乾燥時間などは気温にも左右され、早すぎても遅すぎてもその効果が薄くなってしまいます。
この辺は何度もやった経験でこのくらいかな?という判断をするしかありません。
このあたりは口では言い表せない、細かいポイントが無数にあるのです。
これがリアルカーボンの本体、カーボン繊維です。
CFRP。つまりはカーボンのFRPです。
同じ強度なら鉄の10分の1と言われるほど強く、軽い素材ですが、残念ながらNACKSではその素材の美しさだけが必要となります。
大きく分けてカーボンには垂直に線維が交差する平織りと斜めに線維が交差する綾織りがあります。
どちらも一長一短あり、使い方と好みで選びます。
今回は綾織りです。
ちょうどよくラミネートプライマーが半硬化したので線維を貼ります。
ここで線維の向きやパーツの形状などによっていろいろなことを考えて線維を貼っていきます。
レザーやスェードと違い、伸びるわけではなく、またプライマーのために貼ってはがしてということが出来ません。
さらに部分的に伸ばして部分的に伸ばさない、ということもNGです。
線維の目が崩れると台無しだからです。
簡単に貼ってありますが、見た目ほど簡単ではありません。
すべて貼り終えたら余白をよく切れるハサミでカットします。
通常カーボンをカットする際はマスキングを貼ってその上からカットします。
これはカーボンの目がほつれたりしてずれることを防ぐのですが、ここではラミネートプライマーで線維がそれほど動かないため、そのままカットしてしまいます。
ここも非常に問題のポイントです。
貼りつけた繊維はラミネートプライマーで貼りついていますが、場合によっては触ったことに気がつかずそのままにしてしまうこともあるでしょう。
しかし剥がれたまま硬化してしまうと修正が効かないのでやりなおしになります。
プライマー塗布から貼りつけ、そして硬化まではこのはがれに非常に注意が必要です。
ちなみに余白をカットしたのは線維の重さではがれることがないようにするためです。
このように垂直に曲がっている部分は特にはがれやすいために注意が必要です。
今回は全くはがれませんでした。
さすがに無駄に失敗を重ねてきたわけではありません。
綾織り、結構格好いいですね。
すべて貼り終えたら一度完全に硬化させます。
だいたい貼りついたから樹脂を塗ろう・・・、などということを何度か繰り返しましたが・・・。
半硬化中に樹脂を塗ると、ラミネートプライマーが溶けて剥がれてしまうのです。
なので、ラミネートプライマーが完全に硬化してから樹脂を入れるのが現状の理想です。
このようなこともあり、カーボン施工は予想以上に時間がかかります。
なにせ先日作成した乾燥室はもはやカーボンのために作ったと言っても過言ではありません。
室内は48度までは温度が上がるようになりました。
これは別の車のパーツですが、樹脂塗って乾かすのは3回目です。
もう一回くらい塗れば完璧です。
つまり塗って乾かしてを4回は繰り返すということです。
樹脂の塗膜が厚くないと砥いでいたりするとカーボン自体を削ってしまい質感に難があるからです。
これは一度めの樹脂を塗ったパーツ。
まだ表面がカーボンの形でぼこぼこなのがお分かりでしょう。
これを完全にフラットにするには2回~3回は樹脂を塗って乾かしを繰り返さないといけません。
このように作業は大変というか面倒くさい作業なのですが、質感が素晴らしくて大変なのを忘れてしまいます。
続きはまたご紹介しましょう。
それではまた!