駅前ビラ配りと前後して、ポスター貼りもやりました。
業界では「ステカン」と呼んでいました。捨て看板のことです。興行のポスターを電柱に貼っていくのです。
アルバイトには数十枚のポスターとガムテープが渡されるわけですが、何より重要な注意事項があります。
それは 警察を見たら逃げろ という指示です。
もうおわかりでしょう。これは立派な
違法行為であります。
したがいまして
バイトの時間は当然夜中。夜10時より前にはやりません。
ステカンのバイトは何度かやりましたが、当時は割りとおおらかで、人の家の壁に貼ったりしない限り警察の呼び出しを受けることはありませんでした。ポスターを見れば
誰が貼らせたのか一目瞭然なのですが。
大体は二人一組で手分けしながらメインストリートの両側を同時に貼り進む、というパターンですが、岐阜に住んでいるのは私だけだったため、これまた独りでやれという指示。
まず土曜の夜10時すぎに岐阜市の西方にある大垣から。大垣というのは「奥の細道」の終点として知られるところ。運送業界大手の西濃運輸の本社があります。
大垣を終えて、12時ごろから岐阜。心細い思いをしながらせっせと貼っていると、
「兄ちゃん、3ナンバーのリンカーン見んかった?」
とカタギではなさそーなオジサンから声をかけられ、
3ナンバー以外のリンカーンってあるんかいなと思いつつ
「いえ、あっ、あの、見ませんでしたけど」
とビビリまくり。
電柱にイボイボのシートが巻きつけてあるのはポスターやビラを貼らせないためのものです。これが採用されるようになったこともあって、電柱にポスターが貼られている光景をすっかり見なくなりました。今でも違法看板を見ると、あのアルバイトのことを思い出します。